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『ヒロアカ』完結 ヴィランたちが残した名言3選……エンデヴァーの罪を糾弾した名ゼリフといえば?

2024年08月11日 08:10  リアルサウンド

リアルサウンド

バンプレスト『僕のヒーローアカデミア THE AMAZING HEROES vol.1 緑谷出久 フィギュア』

  8月5日発売の『週刊少年ジャンプ』36・37合併号(集英社)で、『僕のヒーローアカデミア』が最終回を迎えた。同作は個性豊かな敵(ヴィラン)たちの登場する物語だったが、彼らはいずれもしっかりと血の通ったキャラクターとして描き出されていた。今回はそんなヴィランたちが残した名ゼリフの数々を振り返ることで、その足跡をあらためて辿りなおしてみたい。


■誰よりもヒーローを愛した男の叫び

 まずはヴィランのなかのカリスマ的存在、ステインによる名言から。ステインは“ヒーロー殺し”と呼ばれる凶悪犯罪者でありながら、オールマイトに心酔していたが、第326話「お前は誰だ」にて2人が運命の邂逅を果たす。


  その時オールマイトは自分の銅像を前に、自嘲するような独り言をつぶやいていた。するとそこにステインが現れ、「英雄への冒涜」だと言いながら刀を突き付ける。そしてオールマイトが自分の正体を明かすも聞き入れず、彼のことを「贋物」と呼ぶ。


  オールマイトは自分がヒーローとして走り抜けた結果が、世界の現状に繋がっていると語るのだが、ステインはそれを真っ向から否定。「『結果』だと!? これは“過程”だ!」と叫び、英雄の意志が今もなお次の世代に受け継がれている最中であることを示すのだった。


 「ヒーローとはどうあるべきか」について誰よりも考え抜いたヴィランが、失意のどん底にいたヒーローを激励するという展開。『ヒロアカ』ならではの感動的なシーンではないだろうか。


■トガヒミコとトゥワイスの絆を表現

 ヴィラン連合の面々は世間の人々に疎外された経験から、社会への憎しみを募らせていたが、だからこそその集団のなかには強い絆が生まれていた。とくにトゥワイスは、ヒーローに負けず劣らず仲間想いのヴィランだと言える。


 「全面戦争編」にて描かれたトゥワイスの最期は、とても切ない。彼は組織にスパイとして潜り込んでいたホークスに騙され、ヴィラン連合を窮地に陥らせてしまう。そしてそのことを悔やみつつ、ヒーローに襲われる仲間たちを救うために奔走する。


  間一髪のところでトガヒミコとMr.コンプレスを助けることに成功するが、すでにトゥワイスの“本体”はホークスによって葬られ、個性「二倍」によって増やした分身が残っているだけ。彼は崩れ落ちていく身体で、かつて自分を包んでくれたハンカチをトガに返すのだった。


  トガはそんなトゥワイスを抱きしめながら言う、「たすけてくれてありがとう」と。最期の瞬間、トゥワイスの胸にあったのは後悔ではなく、最高の仲間に恵まれたことを幸せだと感じる気持ちだった。


■エンデヴァーの罪を糾弾する衝撃のセリフ

 『ヒロアカ』において、“過去との向き合い方”はさまざまなキャラクターに共通するテーマとなっている。とくに代表的なのが、轟家に関するエピソードだ。


  轟焦凍の父であるエンデヴァーは、オールマイトへの劣等感から自分の息子をNo.1ヒーローに育て上げることに執着し、虐待に近い行為を日常的に行っていた。その最大の犠牲者が荼毘であり、「全面戦争編」においてエンデヴァーを糾弾する一幕は衝撃を呼んだ。


  第290話「ダビダンス」にて、荼毘は世間に向けた映像のなかで自分の出自について明かし、茫然とするエンデヴァーの前で踊り狂う。その頃のエンデヴァーはすでに自分の過ちを反省し、家族仲を修復しつつNo.1ヒーローとして再出発しようとしていたが、荼毘は非情にも「過去は消えない」という言葉を浴びせかけるのだった……。


  エンデヴァーにとっては、自身の罪から逃れることは永遠にできないという呪いのような言葉だが、逆に荼毘の心の叫びとして受け取ることもできる。つまり荼毘はエンデヴァーによって、それだけ深い心の傷を負っていたのだろう。


  「過去は消えない」という言葉は、作品終盤の大テーマを示していると同時に、なんともやりきれない現実の残酷さを表している名ゼリフだ。『ヒロアカ』はヒーローとヴィランの両方を真摯に描いてきたからこそ、説得力のある言葉が紡がれてきた。完結を機にあらためてヴィランの活躍に目を向けて、その切ない生きざまに想いを馳せてみてはいかがだろうか。