Text by 生田綾
「異彩を、放て。」をミッションに、アート作品のライセンス管理などを担う福祉実験カンパニー・ヘラルボニーが、障害のある作家を対象とした国際アートアワード『HERALBONY Art Prize 2024』を創設した。
8月10日から9月22日まで、グランプリをはじめとする各受賞作家ら総勢58人による全62点の作品が、東京・大手町にある三井住友銀行東館1Fアース・ガーデンにて開催される。入場は無料。
日本をはじめ、世界11か国から集まった圧巻の「異彩アート」が集った展覧会の様子をレポート。
ヘラルボニー提供
ヘラルボニーは障害のある作家を評価し、活躍の場を切り開くことを目的に国際アートアワード『HERALBONY Art Prize』を創設。第1回となる2024年は世界28か国から1,973点もの作品の応募があったという。
グランプリを獲得したのは、日本に住む作家の浅野春香。浅野は20歳で統合失調症を発症し、現在も闘病を続けている。絵を本格的に描き始めたのは29歳のときだったという。
浅野春香『ヒョウカ』(2024)画材:ポスカ、米袋 サイズ:960×1640mm
横幅1メートル以上の本作は、ハサミで広げた米袋に、満点の星空や宇宙、満月などのモチーフが、色彩豊かかつ緻密に描かれている。作品名の『ヒョウカ』は「評価されたい」という感情が元となっているという。
内覧会に登壇した浅野は、「バスに乗っているときにグランプリ受賞の連絡があって、何の感情も湧いてこないくらい嬉しかった」とコメントした。
展覧会では、本アワードでゴールドスポンサーを務める東京建物、サンゲツ、JR東日本、JINS、丸井グループ、JAL、トヨタによる企業賞を受賞した作品も展示。
受賞作は今後、企業のサービスやプロダクトなどのいずれかに採用される予定という。ヘラルボニー代表取締役社長の松田崇弥は、「受賞して終わりではなく、多くの出口が用意されているコンペティションになっています」と語った。
会場には、審査員賞を受賞した4作品も展示されている。
ギャラリー・クリスチャン・バースト創設者のクリスチャン・バースト、アーティストで東京藝術大学長を務める日比野克彦、金沢21世紀美術館チーフ・キュレーター / ヘラルボニーアドバイザーの黒澤浩美、LVMHメティエ ダール ジャパン ディレクターの盛岡笑奈ら4人の審査員が独自の視点で作品を選出したという。
黒澤は、「情報化時代を迎えて、スマホで著名な作家の情報を簡単に知ることできるようになりましたが、それがすべてではありません。いろいろな表現をしている作家を知ってほしいです」とコメントした。
会期期間中はアート鑑賞を楽しめるアートクルーズや鑑賞会イベントも実施するという。また、ヘラルボニーの公式LINE友だち限定の来場特典として、俳優・粘土造形作家の片桐仁が出演するスペシャル音声コンテンツも配信している。
CINRAでは、『HERALBONY Art Prize 2024 Exhibition』の開幕に合わせて、Podcast番組『聞くCINRA』と本展覧会のタイアップを実施。松田崇弥をゲストに迎え、展覧会の見どころや、パリ進出を発表したヘラルボニーが目指すものについてインタビューを行なった。
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