Text by CINRA編集部
タケシタトモヒロの初個展『Across the United States』が9月3日から新宿御苑前のTOTEM POLE PHOTO GALLERYで開催。同名写真集が刊行される。
1991年に長崎で生まれ、埼玉で育った写真家・タケシタトモヒロ。現在は東京を拠点にポートレートを中心としたさまざまなコマーシャルワーク、作品制作を行なっている。
同展は、昨年4月20日から5月31日までの約40日間をかけアメリカを横断して撮影した写真で構成。手のひらの上で瞬時に世界中の情報へアクセスできる現代において、身体性の伴う経験から得られるものを再確認するように辿った旅の軌跡を示し、これからの時代の歩み方をともに考えるための試みとなるという。
会場では、作家がアメリカ各地で蒐集した環境音を使用して巽啓伍(never young beach)が制作した展示音楽を鑑賞できる。同展示音楽は限定本数をカセット化し、会場で販売予定。入場無料。
【タケシタトモヒロによる作品ステートメント(一部抜粋)】
意外にも手触りのある瞬間は、後ろ姿に、影の中に、誰かの落とし物に、ベッドルームに、予期しない小さな隙間にも紛れているように感じられた。尺度すら体に馴染んでいなかった広いアメリカという国が、光と運動の断片を集めることによって少しずつ自分の中に溶け込んでくる。
海を超えた場所、知らない誰かと同じ時間軸を進んでいると実感できる機会は、普段の生活において多くない。交わした言葉の抑揚、流れ続けている生活や文化の質感が、五感を通して自分に有機的に編み込まれ、初めて現実になっていく。
知らないものをそのままにしておくよりも、実際に足を運んで身体的に経験する方がずっと気持ちがいい。当たり前の事だ。当たり前なのにすぐに忘れてしまうから、旅に出て何度も思い出す。