Text by CINRA編集部
アートプロジェクト『ビッグデ絵タ』が特設ページで公開中。また同プロジェクトの展覧会が8月17日まで虎ノ門のSIGNALで開催されている。
『ビッグデ絵タ』では、人には共感されづらくても、当事者にとっては切実な「こわいもの」や「こわいこと」を検索データから大量に抽出し、そのなかから参加アーティストが共感する「こわい」をピックアップ。それぞれが「こわい」をイラストによって表現することで、人間の「弱さ」の多様性を世の中に届けようとするプロジェクトだ。
参加アーティストは、塩谷歩波、大島智子、大橋裕之、カシワイ、たそやマロ、パピヨン本田、増田薫(思い出野郎Aチーム)、まつざきしおり、マツヤマイカ、矢部太郎(カラテカ)の10組。各アーティストたちは「電話がこわい」「映画館がこわい」「エレベーターがこわい」といったテーマをイラスト化している。
また一部アーティストのイラストはオリジナルグッズとして販売。Tシャツやステッカー、キーホルダーなどがラインナップしている。
この記事では参加作家の作品とコメントを前後編に分けて掲載。今回は塩谷歩波、大島智子、大橋裕之、カシワイ、たそやマロを紹介する。
展覧会では塩谷歩波、大島智子、大橋裕之、カシワイ、たそやマロ、パピヨン本田、増田薫(思い出野郎Aチーム)、まつざきしおり、マツヤマイカの参加作品を展示している。入場無料。
なお8月10日には参加作家である塩谷歩波の公開インタビューイベントが開催。優先的に参加できる事前申込を実施中だ。詳細は応募フォームから確認しよう。
塩谷歩波/「映画館」がこわい
【塩谷歩波のコメント】
自分の頭の中で悪い妄想がぐるぐる広がることで、「怖い」感情が起きると思います。
例えば映画館のような暗い場所。お隣や後ろの席の人が、こうだったら、どうしよう…?
そんな妄想が膨らんだ状態を絵にしてみました。
私も幼い頃から怖いものが沢山ありましたが、
その大半が頭の中でのことだと理解できてから少なくなってきました。
怖さを感じている時はとても辛く身の毛がよだつものですが、
少し目線を離した時に(それこそ絵のような俯瞰の視点で)
怖さの見え方が少しでも変えられたらという気持ちをこめて制作しました。
大島智子/「大きいもの」がこわい
【大島智子のコメント】
「大きいもの」がこわいです。実家にあった宇宙の本に、漆黒の宇宙に浮かぶ、地球と宇宙飛行士の写真がありました。子供の頃の私は、地球の大きさと人間の小ささに恐怖を覚えました。それでもなぜか、一人で留守番をしている時に、その写真を見ることがやめられませんでした。
大橋裕之/「エレベーター」がこわい
【大橋裕之のコメント】
何歳になってもエレベーターが苦手です。
1、乗り込んだものの、目当ての店が何階にあるのか忘れて焦る
2、乗ってる時に地震が起きたらと想像してしまう
3、他人が同乗していると、どこを見てていいのかなぜか気になって(周りから見られてるような気がして)扉上部の階数表示を凝視するしかない
5、ボタン近くに乗ってると、開閉ボタン操作を任されたプレッシャーを感じる
6、あれ?このエレベーターって9階には停まらないやつ!?と気づいて焦る
などの理由で階段が好きです。
カシワイ/「電話」がこわい
【カシワイのコメント】
いつ鳴り出すかわからないまま待つ時間、そして鳴り出すと同時に、
それまでの空間に無理やり別の時空を持ち込まれたような感覚になるため、
電話は永遠に苦手です。
たそやマロ/「ピエロ」がこわい
【たそやマロのコメント】
人を笑わせるための、人を楽しませるための存在なのに、どこか恐怖を覚える、そんな存在がピエロだと感じています。
遠くから見ても見やすいように誇張して作られた笑顔の仮面の下には、どんな感情が伏せられていても分からない。
どんな時も笑顔を貫く覚悟を持った生命体のようにすら思えて、どんなことでもできてしまうように見える。
そんな未知の恐怖を掻き立てるピエロを、私は人の姿で描くことができません。
私にとってとても愛らしい存在である犬の特徴を混ぜて恐怖を中和させた状態でしか描くことができないのです。