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【角田裕毅を海外F1ライターが斬る】レッドブル系ドライバーたちの正しい配置の仕方

2024年08月08日 11:50  AUTOSPORT web

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(右から)レッドブルのイベントに出席した角田裕毅(RB)、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)、セルジオ・ペレス(レッドブル)、ダニエル・リカルド(RB)
 F1での4年目を迎えた角田裕毅がどう成長し、あるいはどこに課題があるのかを、F1ライター、エディ・エディントン氏が忌憚なく指摘していく。

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 誰か調べてまとめてくれないだろうか。過去25年のモーターレースを振り返り、1シーズンでもヘルムート・マルコ博士の若手ドライバープログラムのメンバーだったドライバーが何人いたのか、それぞれがどれだけ長続きしたのか、レッドブル在籍中にどういうキャリアを歩んだのか、最終的にグラーツ出身の短気な男に切り捨てられた後、どういう人生を送ったのかを、正確に知りたいのだ。

 ご心配なく。これはただの世間話ではない。レッドブルが所有するふたつのF1チームのドライバー状況について、これから慎重に分析していくつもりだから。

 メインチームのひとりは、世界最高のドライバー、あるいは最高レベルのドライバーのひとりであるマックス・フェルスタッペンだ。しかし彼はレッドブルの育成プログラム出身ではない。首脳陣は、F3で走っていた2014年の半ばに、2015年にF1デビューさせるため、フェルスタッペンをレッドブルのメンバーにした。

 フェルスタッペンのチームメイトは、かつてフェラーリ・ドライバー・アカデミーのメンバーで、F1昇格後はマクラーレン、フォース・インディアおよびその後身チームでキャリアを積んだセルジオ・ペレスだ。2021年に向けてアレクサンダー・アルボンの後任を探していたレッドブルは、最後の手段としてペレスを選んだ。

 セカンドチームのラインアップは、レッドブル育成プログラムの真の成果であるダニエル・リカルドと、もともとはマルコ博士がテクニカルパートナーを喜ばせるために受け入れたホンダ傘下の角田裕毅だ。

 さて、この3カ月間見てきて、かわいそうなペレスがもうF1ドライバーとしては終わったということは、私の目には明らかだ。彼は毎朝起きてサーキットに行くたびに、フェルスタッペンに負けており、ほとんどの場合、0.5秒以上も遅く、さらに悪いことに、プレッシャーがかかっていないフリープラクティスや予選Q1でクラッシュし続けている。

 一方でファエンツァのチームに目を移せば、かつての面影を失ったリカルドがいる。確かにマイアミのスプリントで4位になったり、モントリオールのウエットセッションで予選5位を獲得するなど、全盛期の“リッキー・ボビー”の姿を時折垣間見ることはできる。それでもチームを90パーセント支えているのは若い角田だ。そしてすぐそばでリアム・ローソンがチャンスを待ち続けている。ローソンは2023年にリカルドが負傷した時に代役をしっかり務め、良い成績を挙げた。彼はレギュラードライバーとしてF1で立派にやっていくことができるだろう。だが私の評価では、彼がレッドブルにとって、フェルスタッペンに続く存在になるという確信はないが。

 自分がレッドブル首脳だったら、ベルギーGP後にどういう判断を下しただろう。私なら、これまでの貢献に感謝した上で、ペレスに別れを告げた。99パーセントの人が同じことをしたに違いない。

 2021年アブダビGPではペレスがルイス・ハミルトンをブロックしたことが、フェルスタッペンのタイトル獲得の助けになった。そういったいくつかの出来事に感謝し、大金を持たせて、ペレスにはメキシコに帰ってもらう。私なら、その後に、1秒も迷うことなく、角田を後任として昇格させただろう。そして、リカルドのチームメイトにローソンを据えて、RBで走らせるのだ。

 2024年シーズン後半にそういう配置換えをすることによって、10戦をかけて、角田をフェルスタッペンと比べて評価することができるし、ローソンをリカルドと比較することで、角田と比べることもできる。

 角田がうまくやれたなら、2025年も残留させる。だめならば、ファエンツァのチームに戻せばいい。ローソンがリカルドとの比較で素晴らしい成績を挙げることができれば、彼を2025年にレッドブルに移すこともできる。

 いずれにしても、ダニエルは今季を終えたら、去ることになるだろう。そうするとRBにひとつシートが空くけれど、あのフランス出身の難しい名前の子、ええと、アイザック・ハジャルだっけ、あの速くてアグレッシブなジュニアドライバーをデビューさせればいい。

 つまりドライバーの数は揃っている。彼らを正しい場所に配置すればいいだけの話なのだ。

 だが、クリスチャン・ホーナー代表は、ペレスを残し、角田を完全に無視した。ホーナーはペレスの後任としてはリカルドしか考えておらず、そのリカルドが期待外れだったため、現状維持となったのだ。今回の決定は、レッドブルが角田に対して、彼を将来起用する可能性はないと告げたのと同じ意味を持つ。

 だから裕毅にとって、次の10レースと来シーズンの前半が、キャリアにおいて非常に重要になってくる。まずは最終戦アブダビまでリカルドを完全に打ち負かさなければならないし、2025年にはローソンに対して勝つチャンスを決して与えてはならない。2026年に向けて新しいチームを見つけるために、他のチーム代表や株主に感銘を与えるのだ。それにはチームメイトを圧倒するしかない。

 サマーブレイクに日本で休暇を楽しんだ後、これまで以上に強くなって戻ってこなければならない。角田が他のチームで活躍する姿を見ることができたら、さぞ痛快だろう。その時、ホーナーやマルコがどう思うかと考えると笑えてくる。

 F1がサマーブレイクに入った今、そういう想像で時間を過ごすのは楽しいものだ。皆さんも良い休暇を。

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筆者エディ・エディントンについて

 エディ・エディントン(仮名)は、ドライバーからチームオーナーに転向、その後、ドライバーマネージメント業務(他チームに押し込んでライバルからも手数料を取ることもしばしばあり)、テレビコメンテーター、スポンサーシップ業務、講演活動など、ありとあらゆる仕事に携わった。そのため彼はパドックにいる全員を知っており、パドックで働く人々もエディのことを知っている。

 ただ、互いの認識は大きく異なっている。エディは、過去に会ったことがある誰かが成功を収めれば、それがすれ違った程度の人間であっても、その成功は自分のおかげであると思っている。皆が自分に大きな恩義があるというわけだ。だが人々はそんな風には考えてはいない。彼らのなかでエディは、昔貸した金をいまだに返さない男として記憶されているのだ。

 しかしどういうわけか、エディを心から憎んでいる者はいない。態度が大きく、何か言った次の瞬間には反対のことを言う。とんでもない噂を広めたと思えば、自分が発信源であることを忘れて、すぐさまそれを全否定するような人間なのだが。

 ある意味、彼は現代F1に向けて過去から放たれた爆風であり、1980年代、1990年代に引き戻すような存在だ。借金で借金を返し、契約はそれが書かれた紙ほどの価値もなく、値打ちがあるのはバーニーの握手だけ、そういう時代を生きた男なのである。