2024年08月08日 09:01 ITmedia NEWS
去る8月5日、X(旧Twitter)上で1枚の写真が注目を集めていた。一見、ただの赤い自動販売機。しかしよく見ると、ガジェット好きにはなじみ深い「BUFFALO」のロゴが入っている。しかも商品は同社の無線LANルーターばかりだ。
この写真は、富山市在住のXユーザーさんが投稿したもの。バッファローの公式Xアカウントも反応しているが、びっくりした顔文字だけで詳しい説明はない。
ただ、リプライには多くの目撃談が寄せられていた。それらの情報を総合すると、この自動販売機は富山大学の近くにある不動産屋さんの店頭にあることが分かった。
Googleマップのストリートビューで該当する場所を表示してみると、確かにバッファローのロゴが入った赤い自動販売機が確認できる。
しかしバッファローが無線ルーターの自動販売機を展開しているといった話は聞いたことがない。そもそも一万円近くする無線ルーターが自動販売機で売れるのか、なぜ富山なのか、なぜ不動産屋さんなのか、疑問は尽きない。
●バッファローさんに聞いてみた
まずはバッファローに聞いてみよう。
「社内で確認をとりましたところ、この自販機に対して弊社の関与はなく、販売店様が独自に設置されたものとなります」(バッファロー)
なんとバッファローは関与していないという。それはそれで問題があるようにも思えるが、調査を進めるうち事態は思わぬ方向へ転がり始めた。
●不動産屋さんに聞いてみた
バッファローは販売店の名前までは教えてくれなかった。ならば写真に写っている不動産屋さんに聞くしかない。さっそく電話すると「うちは場所を貸しているだけなので」というシンプルな回答を得た。
それでも販売状況は少し聞くことができた。「買われているところは見たことがないですね。でも大学の近くなので、引越シーズンなどには売れているのかもしれません」
販売店の名前は「テックみなみ」だという。検索するとすぐにWebサイトが見つかった。
●テックみなみさんに聞いてみた
テックみなみは、家電の販売からレンタル、電気工事、住宅リフォームまで幅広く手がける「富山の次世代電気屋さん」だという。そしてWebサイトには例の自販機の写真も掲載していて「日本初、無線LANルーターが自販機で買える!」とアピールしていた。
テックみなみの南重人社長によると、無線ルーターの自販機を設置しようと考えたのは2年ほど前。きっかけは、学生向け集合住宅などに提供しているインターネット常時接続サービス(再販事業)で、お客さんが困っていると知ったことだった。
「スマホなどで接続するのに無線ルーターは欠かせませんが、あの地域は最寄りの電気屋さんまで10kmほど距離があります。新入生は自転車くらいしか持っていませんし、バスで行くにも時間が掛かります。そこで、いつでも買える自動販売機を設置しようと考えました」
しかし、無線ルーターを売れる自動販売機など存在しなかった。
南社長は自動販売機のメーカーに掛け合い、共同開発という形で専用の自販機を製作する。商品のサイズは、縦×横それぞれ40cmほど、厚さ10cm程度まで対応できる仕様。自販機はキャッシュレス決済専用で、購入されるたびに南社長のスマホに通知が届く仕組みになっている。
さらに南社長はバッファロー本社に掛け合い、自動販売機の設置許可をもらった。自動販売機の前面や側面に貼ったロゴ入りフィルムは、バッファロー側が用意してくれたものだという。……バッファローさん、話が違うよ(ぼそ)。
今年3月、完成した自動販売機を以前からお世話になっていた不動産屋さんの店頭に設置した。すると、とくに新入学シーズンは売れ行き好調で「売り切れる機種が続出しました」。設置から5カ月あまりで累計40~50台は売れたという。……不動産屋さん、話が違うよ(ぼそ)。
ともあれ、バッファローの無線ルーターを売る自動販売機は、富山大学の近所に実在した。設置したのは、学生のためを思う、優しくてアクティブな“次世代電気屋さん”だった。