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スケジュール管理もメモもスマホ派なのに、新たにシステム手帳を買ったワケ。Davinci『Roroma Classic』

2024年08月05日 08:30  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
新しい手帳を買った。

正月でも年度初めでもない真夏のこの時期に手帳を新調したのは、自分の誕生日だったから。



思いを新たに…というほど大袈裟なことでもないのだが、やはり手帳というのは、何かの節目で買いたくなるものだ。


○■スケジュール管理もメモも普段はスマホを活用。でも手書きを忘れられない…



だけど僕は普段、スケジュールやメモはすべてスマホを活用している。

スマホは便利だ。予定も覚え書きも、常にポケットに収めてある一台に素早く入力。

そうすればクラウドでつながっているPCやタブレットにも、情報が即座に共有される。



他のアプリとの連動も簡単で、住所を入力しておけば地図アプリをすぐ呼び出せるし、予定の時間が近づけばアラームで通知もしてくれる。

メアドやURLを記入しておけば、メール送信もブラウザ立ち上げも瞬時に行える。



物書きという僕の職業も、デジタルの方が断然有利。

思いついたことを指先一つ、あるいは音声入力でスマホにさっとメモしておけば、それをコピペして原稿の下書きとしてそのまま使えるからだ。



そのほかにもデジタルの恩恵は数知れず、今さらアナログな手帳を使うことにメリットなどまったくない。

とは思っているのだが……。

どうしても、心のどこかにいつも“手書き”願望がある。

お気に入りのペンを手に取り、紙の上に自分の思考やアイデアを記すことには、特別な魅力があるように思えるのである。



これまでも正月や年度初めが近づくと、僕はこれぞと思う手帳を買った。

新しい年に新しい手帳。それは儀式のようなものだ。

だがその手帳は毎年のように、長くても2~3ヶ月で放棄される運命にあった。書き損じたり、後から考えると残しておきたくないと思うことを書いてしまったり、誤ってページを飛ばして記入したりすると、途端にその手帳を使い続けるのが嫌になってしまうのだ。



そんな僕が今回ふと思い立ち、新しく買った手帳。

1890年創業の老舗文具メーカー、レイメイ藤井のDavinciというシリーズからリリースされているシステム手帳『Roroma Classic』だ。

誕生日を記念して自分自身への贈り物なんていうと小っ恥ずかしいが、まあそんな感覚だったことは間違いない。


僕はこれまでの人生で、システム手帳というものを使ったことがない。

だが、書き損じるたびに手帳を放棄してしまうのだから、ページを自在に抜いたり足したりできるシステム手帳こそ自分向き。

本当に今さらながら、やっとそのことに気づいた55歳の夏だった。


○■経年変化が楽しみな黒革のシステム手帳は手のひらサイズ



文房具屋の棚に並ぶ手帳たちの中から、僕はそれを選び取った。

黒い革の表紙にシンプルなデザイン。手に取ると、厚い革の手応えとしっかりした重みが感じられた。

店頭のサンプル品は渋く黒光りしていたが、店員さんに出してもらった新品は、革はやや白っぽく、艶がなかった。

サンプルは多くの人の手に触れ、自然に経年変化をしているようだった。つまり、この白っぽい革の表紙は、使い込むと味わい深い光沢を持つようになるのだ。


商品に同封されていた説明書きによると、この革は姫路のタンナーが日本産のステアハイド(成牛)をフルタンニングで2回なめし、オイルとワックスをたっぷり染み込ませたもの。使い込むうちに磨かれ、徐々に宝石のような艶が出る革なのだそうだ。


Davinci『Roroma Classic』にはいくつかのサイズがあり、僕は最小サイズである“マイクロ5”のシステム手帳にした。

なるべくコンパクトで持ち運びやすいほうが、常に身近に置いておき、ふと気づいたことやアイデアをさっとメモするという僕の用途に適していると思ったからだ。


システム手帳の現行規格のうち、小型のものは76×126mmの「ミニ6穴」(Mini6)というサイズが広く流通している。

僕が買った「マイクロ5穴」(Micro5)は、それよりもさらに小さく、ページサイズは約63×105mm。

カバンの隙間や胸ポケットなどどこにでも入れて携帯でき、片手で持ってメモしやすいということで、近年密かに注目を浴びているサイズらしい。

○■お気に入りの新手帳とセットにするペンを選ぶ喜び



新しいシステム手帳を手に入れた僕は、家に持ち帰ってまず重要な作業を行った。

手帳に文字を書き込むため、常にセットしておくペン選びだ。

手持ちの中から、特に気に入っている5本をピックアップした。



① ZEBRA『SL-F1mini』

手帳用に特化された油性ボールペン。収納時は8.4cmとごく短く、スライド式の本体を引き伸ばすと、10.3cmのちょうどいいサイズになりペン先が出てくる。


② rotring『Rollerball0.7』

ドイツの製図用品メーカー、ロットリングのジェルインクボールペン。スムーズで滑らかな書き心地と、やや太めの文字が魅力。


③LAMY『サファリ‎L17 EF』

ドイツの筆記具メーカー、ラミーのロングセラーモデル。軽量で丈夫な樹脂製ボディとスチール製ペン先を備える、実用的でカジュアルな万年筆。


④三菱鉛筆(uni)『ジェットストリーム3色』

水性のようなさらさらとした書き味を持つ、「低粘度油性」のボールペン。書き心地の良さは折り紙つきで、世界中に愛用者を持つ超人気モデルの3色タイプ。


⑤Montblanc『マイスターシュテュックM』

14kを使ったペン先の滑らかな書き味は極上。万年筆では“中字”とされている「M」のペン先を持つ一本だが、書ける文字はかなり太く感じる。


それぞれ一長一短がある3本のボールペンは実用的だが、やはりボールペンの書き文字はなんとなく味気なくて、いまいち気が乗らなかった。

ここはやっぱり万年筆だろう。

万年筆は書き心地の良さとインクの美しさが魅力で、手帳に書き込む行為が一層特別なものになる。



5本の候補ペンの中で、僕が一番大事にしているのは言わずもがな、モンブランの万年筆だ。

だが「M」のペン先のモンブランで書いた文字は太く、インクがなかなか乾かない。書いてすぐにページを閉じると対向ページがインクで汚れるし、書いた文字も滲んでしまう。

手帳は何かを思いついたとき、さっと開いてパッと書き込み、サクッとしまいたいので、残念ながらモンブランは却下。



LAMYはモダンでスタイリッシュなデザインが特徴だ。

ペン先は「EF」でモンブランより細い文字で書けるため、インクも乾きやすい。

ということで、システム手帳の相棒は、LAMY『サファリ‎L17 EF』に決定。細い文字で書くことで、手帳のページを効率的に使うこともできる。


手帳に文字を書き込むという行為には、やはり不思議な力がある。

ペンを手に取り紙の上に文字を綴ることで、スマホでのメモより自分の思考や感情が整理され、明確になるような気がする。

過去のページを振り返ることで、文字を書いた時点での自分を思い出し、心の変化を実感できるのも、スマホにはない手帳の利点だろう。



新しいシステム手帳を手に入れたことで、僕の毎日は少し変わったような気がする。

日々の出来事や感情を整理し、自分自身と向き合う時間が増えた。手帳を開くたびに、新たな発見や気づきもある。

今の僕にとっては、それが何よりも大切なことだったのかもしれない。


佐藤誠二朗 さとうせいじろう 編集者/ライター、コラムニスト。1969年東京生まれ。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わり、2000~2009年は「smart」編集長。カルチャー、ファッションを中心にしながら、アウトドア、デュアルライフ、時事、エンタメ、旅行、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動中。著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』(集英社 2018)、『日本懐かしスニーカー大全』(辰巳出版 2020)、『オフィシャル・サブカルオヤジ・ハンドブック』(集英社 2021)。ほか編著書多数。新刊『山の家のスローバラード 東京⇆山中湖 行ったり来たりのデュアルライフ』発売。
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