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GT300の9チームに聞く第4戦予選日トピックス。初予選2番手/大幅セット変更/今年一番の可能性/注目の天候etc.

2024年08月04日 00:20  AUTOSPORT web

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2024スーパーGT第4戦富士 muta Racing GR86 GT(堤優威/平良響)
 8月3日に静岡県の富士スピードウェイで開催された2024スーパーGT『FUJI GT 350km RACE』の公式予選。GT300クラスはLEON PYRAMID AMG(蒲生尚弥/篠原拓朗/黒澤治樹)が今季二度目のポールポジションを獲得する結果になったが、それ以外にも“GT300ならでは”のトピックスが多かった予選だった。ここでは、予選終了後に聞くことができた9チームのドライバーの声をお届けする。

■ウラカンGT3エボ2初予選の2番手に「すごく嬉しい」──METALIVE S Lamborghini GT3
 今回からランボルギーニ・ウラカンGT3の“エボ2”を新投入したMETALIVE S Lamborghini GT3。車両がレース直前に到着したこともあり、公式練習がシェイクダウンとなったが、9番手となり、午後の予選では2番手につけた。

「ひさしぶりに予選トップ3にいくことができました。今回初めてエボ2が僕たちに用意してもらえたのですけど、その最初のレースの予選で2番手になれたことは、すごく嬉しいです」と語るのは、ベテランの松浦孝亮だ。

 前戦まで使用していた“先代エボ1”と比較すると「エボ2のほうがダウンフォースを感じる」と松浦。ただ、自然吸気エンジンを搭載することから、ライバルと比べると「暑い時期のパワーをあまり感じない」部分もあるという。

 ウラカンGT3エボ2は、すでにGT300では僚友JLOC Lamborghini GT3が高いポテンシャルを見せている。決勝レースでも注目になりそうなJLOCの2台。「パフォーマンスはロングランを含めて調子が良いので、タイヤをいたわってゴールまでクルマを運びたいです」と松浦は抱負を語った。

■「ひねり出しました(笑)」3番手──グッドスマイル 初音ミク AMG
 今シーズンここまで二度のポイント獲得を果たしているものの、まだ表彰台がないグッドスマイル 初音ミク AMGは、谷口信輝のドライブでQ1の4番手につけると、Q2では片岡龍也がチェッカー間際に1分38秒093を記録。3番手に飛び込んだ。

「公式練習からロングランの調子が良かったのですが、一発はどうかな? と思っていました。もちろん予選では前の方が良いので、イメージとしては3列目以内につければレースで勝負できると思っていたので、3番手は状況としては満足できるグリッドです」というのは片岡。

「持ち込みのバランスとレースで使うタイヤの相性に課題はあったので、公式練習からFCY練習、サーキットサファリまでずっと使って、谷口さんのところでどちらか悩む方を試していまひとつだったので、『じゃあ』と選んだ最後の一択で『なるほど』となりました」

 土曜の一日をかけて掴んだ好感触を得て、片岡が予選Q2で「ひねり出しました(笑)」というのがこのタイム。掴んだ感触は決勝にも活きるものだという。ただ、グッドスマイル 初音ミク AMGにとって決勝日は気温、路面温度が高い方が希望だという。

「決勝は楽しみですが、天気予報が曇りマークばかりなんですよねえ」

■午前からセットアップを大幅変更し4番手──D'station Vantage GT3
 第3戦鈴鹿では嬉しいポール・トゥ・ウインを飾り、チームにとっての初優勝を飾ったD'station Vantage GT3。その勢いを繋げたい今回の第4戦富士だが、公式練習では思わぬ不振に陥ってしまう。ストレートスピードも伸びず、タイムも出ない。公式練習では23番手に沈んだ。

 この状況を打開すべく、豊富な経験をもつ藤井誠暢が中心となり、セットアップを大幅に変更したほか、タイヤの種類も変えた。これが功を奏し、Q1のA組では藤井が1分38秒106を記録する。セットアップ変更も当然だが、前を走っていたStudie BMW M4のスリップストリームを使い、大きくタイムを伸ばした。

「午前は23番手などでどうなることかと思いましたがセットアップを大きく変えたらバシっときましたね。あとは僕もチャーリー(・ファグ)もうまくスリップを使えたのが大きいです」と藤井。

 公式練習での苦境から大きく挽回してみせ、Q2でもチャーリー・ファグがスリップをうまく使い、4番手。2列目につけたのはチームとドライバーの経験が活きたかたちだろう。

■リル・ワドゥが好走。7番手で表彰台を見据える──PONOS FERRARI 296
 第3戦で6位入賞を果たしたPONOS FERRARI 296。第2戦でも予選では上位につけており、今回も7番手と好位置につけた。特に今回のGT300クラスの予選は合算タイムではなかったが、そのなかでQ2で7番手につけたリル・ワドゥの好走が光った。

「それほどビックリする暑さではないかな。今年はフランスもすごく暑いから」と酷暑の予選日のなかでも、ワドゥは予選後笑顔をみせた。

「クルマがすごく良かったし、チームも素晴らしい仕事をしてくれた。すべての良い条件が整ったからこそこのタイムに繋がったと思う」とワドゥ。得意の富士とは言え、上位に食い込むタイムを残す実力は女性ドライバーであることを一瞬忘れてしまいそうな活躍だ。

「毎戦どんどん良くなっているし、表彰台も見えてくるところまで来たと思う。ただ、今回のタイヤをロングで試していないから、決勝はやってみないと分からないところもあるわね」

■トラブルが減り走行距離が増えたことがプラスに──GAINER TANAX Z
 今季からのニューマシンとして毎戦注目を集めているGAINER TANAX Z。“産みの苦しみ”を乗り越えながら毎戦進化を続けているマシンに「ようやくセットアップを進められるようになった」と石川京侍は笑顔をみせる。

「トラブルもだいぶ少なくなってきたので、そのあたりで(走行の)マイレージを稼いでいます。そういった意味では、やはり全体的に良くなっていますね」

 今回の第4戦富士ではペダルのベース部分が動かなくなるというトラブルがあったものの、メカニックの素早い修復により完治。クルマのメカニカルトラブルも予選後まで起きていないという。

 決勝に向けては「もちろんポイントを獲得したいですし、本音を言えば優勝争いをしたいですけど、まずは第一に完走してデータを持ち帰りたいですね」と語った。

■決勝レースで要注目のコンディション。マッハ号の可能性
■山内英輝「もうイケイケゴーゴーしかない」──SUBARU BRZ R&D SPORT
 2024スーパーGT第4戦富士では、開幕戦以来のQ1アタッカーを担当したSUBARU BRZ R&D SPORTの山内英輝。

 今回の予選はコース上のオイル処理の影響もあり、通常のタイム合算方式ではなく“Q2タイムのみ”の結果が予選結果として採択される。これについて山内は「急に変わったので『なんでやねん!』」という感じを受けたというが、13台が出走したQ1B組で1分38秒195のトップタイムを記録した。

「うまく合わせ込むことができて良かった」との言葉どおりの走りを披露した山内だったが、Q2を担当した井口卓人は1分38秒530で9番手となった。

 決勝レースに向けては「追い上げといいますか、もうイケイケゴーゴーしかないです。うまくハマっていけるように、アベレージタイムを上げていけるような走りを見つけて、明日に挑みたいと思います」

■藤波清斗&塩津佑介が感じる「今年一番」の可能性──マッハ車検 エアバスター MC86 マッハ号
 予選結果としては13番手に終わったものの、藤波清斗がステアリングを握ったQ1A組では14台中の2番手につけたマッハ車検 エアバスター MC86 マッハ号。

 藤波は「(調子が)いいことは分かっていましたが、思っていた以上に良かったです。周りも速いですけど、僕のアタックはタイミングと位置取りが良くて、スリップストリームを使うこともできました」と予選を振り返る。

「正直に言って、感覚的にQ1は通るだろうと思ってましたけど、まさか2番手はまでいくとは思わなかったです。決勝は、自分たちはそこまでタイヤの心配はないので、チャンスがあればけっこう前にいける可能性を今年いちばん感じています」

 一方の塩津は「今持っている力は出したかなと思っています。それでも藤波選手のほうが速いので、そこは自分に足りていないと素直に感じています」と語る。予選後にはデータロガーを熱心に研究する姿もみられた。

「でも、レースを重ねるごとに感触が良くなってきていますし、今回は暑いですけど、レース距離は短くなったので、トラブルなくレースを進めることができれば、いいところにいけるんじゃないかと思います」

 ちなみにマザーシャシーでよく耳にする“暑さ”については、ふたりともやはり大きな影響を感じてる様子。ただ塩津にとっては「すごく勉強になるクルマで、レースを重ねるごとに運転がうまくなってることをすごく感じるので、本当に最高の味方」のマシンになっているという。

■僅差でロワーグループに。ここがGT300の難しさ──muta Racing GR86 GT
 ランキング首位につけるmuta Racing GR86 GTは、まさかのQ2アッパー(上位)グループ進出はならず。ロワー(下位)グループのQ2で2番手につけ、総合では18番手となったものの、苦しいグリッドであることは間違いないだろう。決勝に向けて挽回策があるかを渡邊信太郎エンジニアに聞くと「そこなんですよね(笑)」という。

「今回は350kmなので1ピットとなりますが、戦略面では幅が狭い。イコール、予選順位が重要だったんです。そのなかでQ1で失敗してしまったのが大きいですね」

 Q1では平良響がアタックしたが、セクター3でややタイムを落としてしまう。「クルマのバランスとしても、乗りにくいバランスだったようで、そこは彼にも申し訳なかったです」と渡邊エンジニア。そしてこの気温/路面温度の高さのなかでのバランスが影響してしまったのではないかとも推測する。

「逆に言うと、Q1を突破してしまえばトップ10に行けた可能性もありました。そこを失敗してしまうと18番手になってしまうのがGT300の難しさだと思います」

■気温、路面温度が今日は“下振れ”せず──Green Brave GR Supra GT
 muta Racing GR86 GTと同様、19番手と予選下位になってしまったのがランキング3位のGreen Brave GR Supra GT。この富士では何度も表彰台に立っており、今季第2戦の決勝も3位だった。

「限界までトライしたのですが、Q1の2回目のアタックで四輪脱輪をとられてしまって。でもタラレバで『通っていました』というのもカッコ悪いので、まあ今の実力ですね」というのは近藤收功エンジニアだ。muta Racing GR86 GT同様、僅差をモノにできなかったことでQ2はロワーグループとなってしまった。

 決勝に向けては、やはり下位からのスタートということで「かなり厳しいです」とこちらも苦しい状況の様子。その巻き返し策については「スーパー耐久第3戦オートポリスでもやりましたが、可能性はあると思っていただいて良いかと思います。明日やるかどうかは分かりませんけどね」と“いつものあの作戦”を匂わせた。

 そして近藤エンジニアは、タイヤについての気温、路面温度の関係について興味深い分析を明かした。「今日の予選は路温が50度近かったですよね。昨年もそうだったのですが、鈴鹿など夏の本当に暑いときは、他メーカーはタイヤもしっかり発動して、本来のGT3の速さがあったと思うんです」という。

「昨年のSUGO、オートポリスでウチ、もしくはブリヂストン装着車が上に行ったのは、正直気温と路面温度が“下振れ”するなかで、ブリヂストンはしっかりとタイヤを温められ、しっかり使えていたからだと思うんです」

「我々が速かったのではなく、温度が“下振れ”することで他メーカーさんが本来の性能を発揮できなかったのが昨年の結果だったと思います。今日もそれを期待していたのですが、やはり暑くなると、他メーカーさんが元気になりましたよね」

 実際、グッドスマイル 初音ミク AMGの片岡が期待するのは「暑い」コンディション。こう比較すると、近藤エンジニアの分析は合点もいく。暑くなるか、寒くなるか……。決勝日のコンディションは要注目だ。