トップへ

男性の"ハーフパンツ出社"どう思う? アリ派「省エネで地球に優しい」ナシ派「すね毛が気持ち悪い」…法的な見解は

2024年07月31日 16:30  弁護士ドットコム

弁護士ドットコム

記事画像

ハーフパンツ(ショートパンツ)姿の男性従業員を職場で見かけるようになりました。そのような会社が他にもあるかもしれません。気温35度を超える日が続き、涼しい格好をしたくなる気持ちは理解できます。ビジネスシーンにおいて、どこまでの格好が許されるのでしょう。


【関連記事:■セックスレスで風俗へ行った40代男性の後悔…妻からは離婚を宣告され「性欲に勝てなかった」と涙】



今年7月、インターネット関連事業「GMOグループ」代表の熊谷正寿さんはXで「短パン&Tシャツで勤務可能なことを改めて全グループへ告知」と投稿しました。男女問わず、ということです。



最近では中学や高校でも、生徒の制服として「ハーフパンツとポロシャツ」を取り入れ始めています。



国内ではたびたび「省エネルック」が提唱されており、2005年に「クールビズ」が推奨されてからおよそ20年。男性の「ハーフパンツ」は市民権を得たと言えるのでしょうか。



弁護士ドットコムニュースでは、読者の「職場のハーフパンツ」に関する意識を調べました。そのうえで、従業員がハーフパンツ着用を求めた場合、企業側はどのように対応すべきか、専門家に聞きました。



●あなたの職場ではハーフパンツは許されていますか

まず、弁護士ドットコムニュースのLINEアカウントに登録する読者に聞きました。



(1)男性の職場でのハーフパンツ姿への考え「アリ」「ナシ」「どちらでも良い」で回答



(2)その理由



(3)あなたの職場ではハーフパンツは許されていますか



●「アリ」が過半数、「暑さ対策」「男性だけ禁止なら差別」

男性の職場でのハーフパンツについて、「アリ」(17人)と答えた人が「ナシ」(12人)と答えた人より多くなりました。「どちらでも良い」は1人。



「アリ」派の意見から紹介します。最も多かったのは「熱さ対策になる」という声。



「気温が高く毎日人が亡くなっている気候で、服装にこだわるのはナンセンス」(30代女性・工場勤務・岡山県)



「男女関係なく涼しい格好で仕事に来ればよい。見るだけで暑苦しい格好して冷房をガンガン入れるなら、涼しい格好の省エネの格好で来てくれる方が、よっぽど地球にも優しいし環境にも優しい」(60代女性・窓口業務・兵庫県)



「仕事と格好には関係がない」という意見も続きました。



「業務遂行に全く支障も関係ないのに、主観的で非合理的な理由から他人の服装に干渉したり非難するのは、権利侵害だと思う」(20代・ITコンサルタント・東京京都)



男性にのみ着用させないのは差別に当たるという指摘や、「着こなし次第」という声も届いています。



「女性がアリなら、男性もアリ。見た目が理由でNGは、男性差別です」(30代男性・教員・愛知県)



「ハーフパンツが似合う着こなしをしていればOK。まるで家でビールでも飲んでいるような着こなしならNGです」(59歳女性・サービス業・大分県)



●「ナシ」派の理由の一つ「すね毛が気持ち悪い」

「ナシ」派の意見で最も多かったのは、「だらしがない」とか「許せない」など、不快に感じるという理由でした。



「すね毛が気持ち悪い」(50代女性・飲食店経営・北海道)



「そんなだらしのない服装は絶対許せない」(70代男性・無職)



「だらしがなく、目のやり場に困る。女性が職場でミニスカートを履いているのと同じ感覚」(40代女性・研究機関・茨城県)



「こちらが恥ずかしい」(50代女性・行政事務・埼玉県)



「仕事していても遊んでるように見える」(60代女性・ピアノ講師・三重県)



「ビジネスマナーとしてクールビズスタイルは世間一般的に浸透したが、ハーフパンツ姿は世間的にもまだ理解が得られず、相手によっては失礼に感じられてしまう可能性がある」(40代男性・IT・東京都)



職場でハーフパンツは許されているかという質問には、「禁止されている」と「禁止されていない」の回答がいずれも12人で同数でした。



男性の職場でのハーフパンツ姿には「アリ」という考えの人でも、「みっともない」から自分では職場に履かないとする男性(48歳・私学講師・愛知県)もいます。



●ハーフパンツ着用制限は法的にはどのように考えられるのか【具体的なケース】

そもそも、職場での従業員の服装を制限することは許されるのでしょうか。職場のルールに詳しい中村新弁護士に聞きました。



——職場では従業員の服装についてルールを定めることができるのでしょうか。



職場では、服務規律の一環として服装や髪型について一定のルールを定めることができます。ただし、企業の円滑な運営上必要かつ合理的な範囲内においてのみ制約(禁止ルール)が認められます。



たとえば、接客業で顧客に不快感を与えるおそれのある服装や髪型を禁止するルールを就業規則に設けても、それ自体が違法・無効とはされません。



——ハーフパンツの職場での着用の制限はどのような場合に許されるでしょうか。



職場でのハーフパンツ着用がどのような場合に許されるか、を一概に言うのは難しい問題です。



ポイントは、自己決定権や表現の自由の一環として個人に憲法上保障される服装の自由と、使用者側における円滑な業務運営の必要性(私企業であれば営業の自由に含まれるでしょう)との調整をいかに図るかという点にあります。



具体的に検討すると、たとえば、公共交通機関の現場で働く職員は、緊急の場合などに備えて、利用者との見分けがつくことが求められます。そのような業種・職種では、制服着用を就業規則で義務づけることもやむを得ないと思われますし、制服に指定されていないハーフパンツの着用を認めることは難しいでしょう。



また、結婚式場や格式の高いレストランのホールにおいても、現在の社会通念に照らして顧客の意識を慮ると、働く人のハーフパンツ着用を認めることはやはり難しいと思われます。



いわゆる営業職の人についても、業種によっては、ハーフパンツの着用を快く思わない顧客層が多いかもしれません。このような場合に着用を認めることは、円滑な業務運営を妨げる可能性があります。



●「ハーフパンツは男性(女性)だけOK」→区別に合理性を見出せず

——客前に出る機会の少ない一般事務職(デスクワーク)はどうでしょうか。



一般事務職の場合は難しいところです。職場の大多数の従業員がハーフパンツの着用に強く抵抗を示しているのであれば、ハーフパンツの着用を強引に認めると企業秩序の維持に支障をきたす可能性があることは否定できません。



一方、ハーフパンツの着用許可を求める声が多く上がっているのであれば、着用を認める必要性と許容性を反対派の従業員に説明して理解を得ることが望ましいでしょう。



ハーフパンツ着用制限の可否は、個々の業種・職種や企業風土の相違に応じて判断されることになります。むろん、夏の猛暑が毎年続いているという事実を受けて社会通念が変化していけば、職場でハーフパンツの着用が認められる余地も大きくなると予想されます。



なお、男女いずれかのハーフパンツ着用を禁止せざるを得ないという特段の事情がない限り、性別によりハーフパンツ着用の可否を区別することの合理性は見いだしにくいと思います。




【取材協力弁護士】
中村 新(なかむら・あらた)弁護士
2003年、弁護士登録(東京弁護士会)。現在、東京弁護士会労働法制特別委員会委員、2021年9月まで東京労働局あっせん委員。2023年4月より東京労働局労働関係紛争担当参与。労働法規・労務管理に関する使用者側へのアドバイス(労働紛争の事前予防)に注力している。遺産相続・企業の倒産処理(破産管財を含む)などにも力を入れている。
事務所名:銀座南法律事務所
事務所URL:http://nakamura-law.net/