2024年07月30日 10:10 弁護士ドットコム
パリ五輪が開幕し、連日熱い戦いが繰り広げられている。時差をものともせず、テレビ越しにエールを送る日本人たちも多いはずだ。
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しかし、サッカーやなど人気競技は午前3時、4時台からはじまる。早く寝るべきか、それとも早く起きるべきか。どちらにせよ睡眠不足になることは否めない。
朝まで観戦してしまったため「今日は仕事にならない」と有給休暇を使って休もうとする会社員もいるだろう。しかしSNSでは「当日の休暇申請は有給が使えない」という投稿も散見される。法的にはどのように定められているのだろうか。今井俊裕弁護士に聞いた。
——「当日の休暇申請では有給が使えない」というルールの職場もあるようです。これは法的な問題はないのでしょうか。
結論から言えば、当日の有給休暇の申請を会社が認めないことは法的に問題ありません。
有給休暇は勤務日数や勤続年数等の要件を充たせば、たとえ就業規則に明記されておらずとも法律に基づいて自動的に発生します。そして労働者から会社に対し、有給休暇を申請したときは、法律上は原則としてそれを尊重しなければなりません。
しかし同時に法律では、会社の時季変更権も定められています。従業員が希望する日が、その会社の事業の正常な運営を害する場合には、会社は別の日に有給休暇をずらす権利があるとするものです。
会社がこの判断を余裕をもってできるよう、労働者は会社に対し有給休暇の申請をすべき、という理屈になります。そのため就業規則の多くでは、●日前に申請しなければならない、などと規定されています。
——急に休む場合、欠勤使いになってしまうのでしょうか
その日の朝「本日有給休暇を申請します」と言われても、会社としては事業の正常な運営に支障があるか否かの判断をすることも十分にはできないでしょう。
就業規則に「何日前に申請せよ」という規定がなかったとしても、労働者からの当日有給申請に対し、会社が容認する義務はありません。当日の欠勤を無給の扱いにしても法律上は問題ないと言えます。
なお、欠勤の理由によっては、懲戒や賞与などの査定に響く不利な事由となることもあり得ます。「遅くまで五輪を観戦して寝不足なので、当日急に休みたい」「二日酔いになってしまったので休みたい」などと当日になって度々休む人と、「急に体調不良になってしまった」「当日の早朝に事故に遭って大きな負傷してしまった」という人とでは、自ずと会社の処遇も違ってくるでしょう。
以上が法律のルールですが、もちろん会社の方から当日の有給休暇申請も是認する、という態度をとることは何ら問題ありません。ただし、他の労働者からも似たような請求が出た場合、会社が不平等な取り扱いをすることは問題となり得ます。
【取材協力弁護士】
今井 俊裕(いまい・としひろ)弁護士
1999年弁護士登録。労働(使用者側)、会社法、不動産関連事件の取扱い多数。具体的かつ戦略的な方針提示がモットー。行政における、開発審査会の委員、感染症診査協議会の委員を歴任。
事務所名:今井法律事務所
事務所URL:http://www.imai-lawoffice.jp/index.html