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アイドルがツーショット誤爆、「彼氏と一定の距離を置く」罰に従わないとダメ?

2024年07月29日 17:30  弁護士ドットコム

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アイドルグループ「KATACOTO*BANK​(カタコトバンク)」は7月27日、メンバーの一人が彼氏とのツーショット写真を誤って個人のXに投稿したとして、「おやすみ写真の投稿」を毎日義務にすると発表した。


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グループのXに投稿されたお知らせは、「アイドルとして意識を欠いたありえない行為として厳重注意をし、本人と相談の上、下記の処分を決定しました」と説明。



「今後、彼氏とは一定の距離を置く」ことに加えて、「罰として今後1年間、毎晩寝る際には必ず”1人でおやすみ写真”を投稿する」ことを義務として課すと公表した。



アイドル業界では恋愛禁止を求められたり体重を管理されたりするケースがあるが、今回のような「罰」は法的に問題ないのだろうか。芸能問題に詳しい河西邦剛弁護士に聞いた。





●法的な問題は生じにくい

義務付けることについて法律的な問題は生じにくいと言えます。同時に、それに従わないことにも法律的な問題は生じにくいと言えます。



まず、今回のケースで本人が納得しているのであれば、彼氏との距離制限や毎日の投稿は実質的にプロモーションやマーケティングの一貫であり、「罰として」と発表しているものの法的に義務付けているとは言えないからです。



●アイドル業界ではプロモーションにつなげる動きも

ライブアイドル業界は競争が激しいので、ファンにとってネガティブな事象であってもそれをきっかけに注目を浴びるようなプロモーションに変えていくことが運営にとって結果的に成功につながるケースもあります。



ただ、仮に本人と折り合いがつかない場合に、契約を根拠に義務付けることができるかという問題があります。



結論的には、その場合は義務付けることはできません。



たとえば、恋愛禁止のルールがあるグループは少なからずあります。ただ、ルールと法律上の義務は違います。



つまり、法律上の義務と言うのは、法律上の効果を発生させることであり、それに対してアイドル側のルール違反については損害賠償責任を負わせることやマネジメント契約を一方的に解除することは難しいです。



●義務は任意、拒否しても賠償責任なし

実際、過去の裁判例を見ると、アイドルが契約に違反し恋愛していたとしても、芸能事務所の損害賠償請求は認められない傾向にあるので、アイドルの恋愛禁止は、あくまで法律上の義務のないルールに留まるものです。



なので、今回のようにそこから生じる不利益についてもルールに留まるものなので、義務付ける(ような)発表をしたとしても、それは任意であり、拒否したとしても損害賠償の責任などは負わないということです。



しかし、ルールか法律上の義務かの線引きは明確とはいえませんし、そもそも法律上の義務とルールを区別していない運営側が存在するのも事実です。



運営の中には、すべて法律上の義務であるような前提で、契約書や損害賠償をちらつかせながらメンバーに事実上強制してくるケースも散見されます。



脅迫や特に性的な強要があった場合には、すぐに親や警察に相談することが重要です。




【取材協力弁護士】
河西 邦剛(かさい・くにたか)弁護士
「レイ法律事務所」、芸能・エンターテイメント分野の統括パートナー。多数の芸能トラブル案件を扱うとともに著作権、商標権等の知的財産分野に詳しい。日本エンターテイナーライツ協会(ERA)共同代表理事。「清く楽しく美しい推し活~推しから愛される術(東京法令出版)」著者。
事務所名:レイ法律事務所
事務所URL:http://rei-law.com/