F1第14戦ベルギーGPのフォーメーションラップがスタートする40分前の午後2時20分。ピットレーンの出口が開放され、グリッドに着くためのレコノサンスラップに向かうため、ガレージからドライバーたちが出ていく。その段階ですでに各車の担当メカニックたちはグリッド上に機材を持って移動している。
ところが、角田裕毅(RB)が止まるはずの20番目のグリッド上に、RBのメカニックたちの姿がない。もしかしてピットレーンスタートなのかと思っていたところに、RBのスタッフたちがやってきた。
チーフレースエンジニアのジョナサン・エドルズに何かマシンに問題があったのかと尋ねると、エドルズはこう答えた。
「確かに金曜日には問題はあった。でも、金曜日の夜にすべて見直し、土曜日は問題はなかった。だから、我々はピットレーンからではなく、この20番目からスタートする」
スパ-フランコルシャン・サーキットの1コーナーは鋭角でアクシデントが起きやすい。最後尾からスタートする角田が巻き込まれる可能性もあるため、予選後にマシンのセッティングを変えて、ピットレーンスタートを選ぶ選択肢がないわけではない。
ただし、ピットレーンスタートを選択すると、全車がスタートラインを通過した後にピットレーン出口からスタートするため、1コーナーまでにオーバーテイクはできない。ベルギーGPは44周しかないため、スタートまでに1台でも多く抜きたい。マシンに問題が問題ないと信じていたRBのエンジニアたちが最後尾グリッドからのスタートを選択したのは、当然だった。
ところが、その問題がなかったはずの角田のマシンに、問題が発覚する。
「レースを走ってみたら、コーナーでのバランスにバラつきがあり、まだ直っていないことがわかりました」
土曜日にそのことを角田もチームも把握していなかったのは、「土曜日が雨だったので、それがよくわからなかったんだと思います」と角田は振り返る。
ペースが上がらない角田の走りを見て、チームは1ストップを決断。しかし、それはハンガリーGPの「攻めの1ストップ」ではなく、2ストップ勢と同じペースで走ることができないために選択した一か八かの賭けだった。
しかし、「今日は2ストップのほうがよかったと思う」と角田が言うように、ギャンブルは不発に終わる。
レースを終えた直後、角田はエンジニアから「クルマに何らかの問題があった」と告げられ、「詳しくはミーティングで説明する」と言われた。
問題がなんだったのかも気になるが、それ以上に、問題があったことをレースをスタートするまで気が付かなかったことのほうが、今回は問題だったのではないだろうか。そのことを強く感じた夏休み前、最後の一戦だった。