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Taira Promote Racing、SSTクラス初表彰台も悔しさ滲ませる「今の実力を認めてリベンジしたい」と阿部恵斗/鈴鹿8耐

2024年07月29日 07:40  AUTOSPORT web

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阿部恵斗(Taira Promote Racing)/2024鈴鹿8耐
 真夏の風物詩である2024年度の鈴鹿8耐は、昨年よりも上回る観客を動員し、大盛況のなか幕を閉じた。ダンロップタイヤのワンメイクで争われたSSTクラスで、2度目の参戦を果たしたTaira Promote Racingが、初参戦のライダーふたりを擁して完走し、クラス3位で初表彰台を獲得した。

 Taira Promote Racingは、株式会社TPFS(Taira Promote Field Service)を母体に2020年から若手ライダーやスタッフを中心に活動している。全日本ロードレース選手権に参戦する同チームは、鈴鹿8耐においては2023年に初参戦し、今年は2度目の挑戦を果たした。当初は、エースライダーである柴田義将を擁し、阿部恵斗と西村硝の2名を迎え入れた体制で戦うことが予定されていた。

 しかし、ウイーク前の事前走行で柴田が転倒によって怪我を負ったためにドクターストップ。それにより、Taira Promote RacingからST600でしのぎを削る三上真矢が第3ライダーに登録された。急なラインアップの変更にも関わらず、予選で総合21番手、SSTクラス3番手を獲得した。

 ところが、急きょのライダー変更もあって決勝レースにおいては鈴鹿8耐初参戦の阿部と西村のふたり体制で8時間を戦い切るという少々過酷な計画に。事前のテスト走行などでもロングランもあまり実施できていなかった状況で、本番をふたりで戦い切ることは、「休憩時間も短く、なにより辛かったです」と語るほどだった。

 チーム、ライダーの双方にとっても過酷な状況で迎えた決勝レースだったが、最終的にはSSTクラス3位表彰台を手にした。しかし、阿部は「最後のラストラップに抜かれてしまったのが少し悔しいです」といい、西村は「2位を獲れる可能性があったので悔しいです。(タイヤ的に)あと1周足りなかったので……」とそれぞれレース終了後に口にした。

 というのも、Taira Promote Racingは一時クラストップを走る展開が何度かあった。のちにSST優勝経験チームのTONE RT SYNCEDGE 4413 BMWに先行を許すことになったものの、終盤まで2番手を死守しながら好走を披露しており、2位表彰台も目前に見えていたからだ。

 ところが、燃費の面で課題を抱えており、最終ラップにはEWCフル参戦勢のTeam Étoileに、じわじわ詰め寄られた末に最終ラップで2位を明け渡すこととなった。SSTクラス表彰台獲得とはいえ、少し悔しさも残るレースとなってしまった。

「7回ピットでいければ優勝できるだろうという作戦で、最初はお互いペースが良かったですが、少し飛ばしすぎてしまったことで燃費が悪くなってしまいました。なので、無理せず周回を多く走ることを意識していたら、7回ピットも可能だったのではないかと反省点はたくさん出てきます」と阿部。

 さらに、水曜日のテスト走行では転倒があり、怪我を負った状態で臨んだ西村は「スタートで(他車を)結構抜けたことは、決勝で唯一良かったところだと思いますが、ペースはあまり良くありませんでした。燃費走行に撤するぐらいしか上位を狙える方法がなかったので……」と語った。

 もし7回ピットを実現させ、西村の体調も万全であったらSSTクラス優勝も狙えたのかもしれない。しかし、鈴鹿8耐初参戦同士のふたり体制で戦い、互いに切磋琢磨して課題に向き合いながらも表彰台を確実に獲得する素晴らしい走りぶりを見せたことには変わりはない。もちろん悔しさもあるとはいえ、ふたりはやはり嬉しさもしっかりと実感していたようだ。

 阿部は「初めて(鈴鹿8耐に)出て、西村も僕もわからないなかでこうして表彰台を獲れたことは、まずまずの出来だったのかなと思います。今の自分と我々の実力を認めて、今後のスプリントレースや耐久レースなども出る機会があれば、しっかり繋げていきたいです。負けてしまったので、また来年リベンジしたいです」と語った。

 さらに「普段僕は600ccのバイクに乗っていて、EWCでの1000ccのバイクの走らせ方や違い、やはり速いライダーが多くて学ぶことも多かったので、今後に活きるなと思いました。良い経験をさせてくれたTaira Promote Racingの皆さんに本当に感謝でいっぱいです」と続けた。

 また、西村は「初めての鈴鹿8耐で、スタートライダーを務めたことは楽しかったです。予選と決勝では怪我の影響で100パーセントの走りは出来ませんでしたが、恵斗が僕の遅れを取り返してくれたので助かりましたし、頑張って3位にはなれたのでよかったです」と嬉しさを述べた。

 そして「(ヨハン・)ザルコ選手と一緒に走れて嬉しかったですし、学べたことはあります。SSTクラスでは3位になれましたが、やはり総合で上位を走れるようになりたいと思いましたし、EWCシリーズで走りたいですね」と続けた。

 それぞれ今後に向けて見えた課題、反省点などは参戦している以上は各チームには必ず出てくることだ。だが、Taira Promote Racingとしても2度目の鈴鹿8耐で初のクラス表彰台を獲得し、ライダーの阿部と西村にとっても鈴鹿8耐初参戦にして初表彰台と嬉しい記憶に残るレースとなったことだろう。

 そんな彼らは、今後も若手パワーを発揮させ、鈴鹿8耐に限らず全日本ロードや地方戦においてもさらなる活躍を見せてくれるだろう。また、2025年の鈴鹿8耐に向けてもすでにシード権を付与されたチームが発表されており、Taira Promote Racingもその対象チームだ。鈴鹿8耐は終わったばかりだが、今年の悔しさもバネに来年こそはさらなる結果を掴むべく、彼らの挑戦はこれからも続いていくことだろう。