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「もう会わない」約束したのに…しつこい夫の不倫相手にサレ妻が激怒 「1000万円の違約金」請求していい?

2024年07月27日 08:20  弁護士ドットコム

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夫の不倫が発覚して、不倫相手から慰謝料も払ってもらい、もう終わったと思ったらまだ不倫が続いていたというケースが後を断ちません。弁護士ドットコムには、悩める妻たちからの相談が寄せられています。


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ある女性は、夫の不倫相手と「連絡しない」「会わない」ことを明記した「接触禁止条項」を入れた合意書を作成したとのことです。もし、「接触禁止条項」が守られなかった場合は、1回につき違約金30万円を払うという取り決めもしていました。



しかし、その後も不倫は続いており、不倫相手は夫に数十回以上、LINEでメッセージを送っていることがわかったそうです。女性は、不倫相手に「1000万円以上の違約金を請求したい」と考えているとのことです。



違約金について合意していたとはいえ、高額請求は認められるのでしょうか。また、合意書が守られなかったとのことで、女性は今後、どのような「対策」をおこなえるのでしょうか。男女問題に詳しい︎古関俊祐弁護士に聞きました。



●あまりに高額な違約金は減額される可能性

——不倫相手に夫と接触しないよう求める条項を入れた「合意書」において、守られなかった場合の1回につき違約金「30万円」は妥当な金額でしょうか。



不倫相手に接触しないことを約束してもらうと同時に、約束を破った際の違約金の金額を事前に決めておく違約金条項そのものは有効です。



その際の金額についてですが、1回数万円など安すぎて“お金なら払うから接触させろ”と開き直られても意味がありませんので「30万円」という金額設定は一般的な相場に照らしても妥当なものと言えます。



——相談の女性は、数十回にわたり不倫相手が夫にLINEを送ってきたことで、合意書上では確かに1000万円以上の請求は可能なのですが、相手が支払い拒否や減額要求してきた場合はどうなるのでしょうか。



あまりに安い違約金の設定に意味がないとしても、かえって高すぎる違約金の設定には別の問題が生じてきます。



“接触1回につき1000万円”という設定は、社会的にみてあまりに現実的な金額ではなく「公序良俗(民法第90条)」に反するとして裁判所によって減額が認められてしまうでしょう。



また、接触1回あたりの違約金が相場的な30万円程度の金額だとして、数十回接触したからその回数分の金額(例えば1回30万円×40回=1200万円)を請求できるというものでもありません。



この点も公序良俗に反しないかという観点から裁判所に判断されるところ、不倫の慰謝料の相場が100~300万円とされているところに照らすと、違約金条項に違反して不倫を繰り返したという悪質性を加味して総額150~500万円ほどの慰謝料になると考えるべきでしょう。



ただし、相手女性は相談者の夫に対して、自分が支払った慰謝料の一部を協力して支払うよう求める「求償請求」ができます。不貞は一方だけに責任があるものではなく、双方が責任を負う行為であるためです。



また、相談者が離婚しない場合には先ほど述べた慰謝料の金額より少なくなります。



なお、この金額は不倫の慰謝料との比較ですので、夫と再度の不倫をしたわけではなく一方的に連絡をしてきているだけの場合はさらに金額が下がる可能性も考えられます。



そのため、支払いを拒否されたり減額を要求された場合は弁護士による交渉や裁判を起こすことになりますが、1000万円全額の支払いが認められる可能性は低いと考えられます。



●サレ妻ができる「対策」は?

——合意書が守られなかったことで、女性はさらに違約金の金額を増やした合意書を作成するなど、「防止策」は可能でしょうか。



違約金の取決めをしたにもかかわらず接触をしてくる場合に、より高い違約金の取決めをすること自体は相手に金銭的なプレッシャーを与えるという点で意味はあります。ただし、先ほど述べたように、1000万円など法外な金額を設定しても全額支払ってもらえない可能性があることは頭に入れておきましょう。



仮に裁判に発展したとして、少しでも高い金額を認めてもらうためには、再度取り交わす合意書に「一度、違約金の取決めをしたがそれに反して接触を続けた」という事実関係を盛り込んでおくと悪質性の証明になるため効果的かもしれません。



なお、接触しないこと、違約金を支払うことを約束したにもかかわらず繰り返し接触するような相手の場合、どんなに高い金額を設定しても接触を繰り返す相手なのかもしれませんね。



違約金条項による金銭的なプレッシャーだけでなく、SNSを含めた連絡先のブロック(削除)や転職・引越しなど物理的に接触できない環境を作ることや、仮に女性にストーカー的な言動が見られる場合には警察や弁護士への相談をすることなど根本的な対策が必要になると思われます。




【取材協力弁護士】
古関 俊祐(こせき・しゅんすけ)弁護士
江戸川区出身。2009年3月、中央大学法学部卒業。2011年3月、明治大学法科大学院修了。 同年9月、司法試験合格。2012年12月、弁護士登録(東京弁護士会所属)。2017年、新小岩法律事務所開設。

事務所名:弁護士法人新小岩法律事務所
事務所URL:https://shinkoiwa-law.jp