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【漫画】小学生の頃の身長のまま社会人になった女性、直面する壁はーー『133cmの景色』に胸を打たれる

2024年07月26日 08:30  リアルサウンド

リアルサウンド

『133cmの景色』より

 「外見だけで人を判断してはいけない」とは使い古された言葉だが、ルッキズムが正しく批判されるようになってきた現在においても、まだまだ心に留めておかなければならないことかもしれない。漫画『133cmの景色』は、病気によって低身長のまま大人になった主人公が偏見に直面しながらも強く生きていく物語だ。


(参考:漫画『133cmの景色』を読む


 その第0話がXに投稿され大きな反響を得ている。作者はひるのつき子さん(@tsukkooo)。なぜシリアスな「外見」というテーマに着目したのか、本作の制作について話を聞いた。(小池直也)


――7万以上のいいねが集まっていますが、これについて作者ご自身としていかがですか?


ひるのつき子(以下、ひるの):こうして多くの方に読んでいただけて光栄です。見た目に対する決めつけやコンプレックスに関してはいつの時代もあったと思います。ただ現代ではネットが普及して多様性への理解が進む一方、自分と他人とを比較することが容易になりました。それによって自分の在り方を問われて苦しむ人が多いことも共感していただけた要因なのかもしれません。


――本作の着想はどこから?


ひるの:作品が雑誌に載る前にタイトル案をたくさん出したのですが、その中のひとつが「普通が溢れる世界の中で」でした。私自身も以前から「普通」という価値観に違和感があったんです。


 数として見れば多数・少数などに分けられはしますが、「少数派」という事実は多数派社会の輪の外側に追いやられたり、軽んじられたりすることを正当化するものではありません。


 現状「少数派」とされがちな人たちが平等に扱われ尊重される社会を目指したいなと思いながら描いています。今回は「外見」というひとつのテーマがありますが、基本的な姿勢はそこにあります。


――低身長の女性のリアリティを感じる内容でしたが、実際に取材をされたり?


ひるの:取材で伺ったお話、周囲で見聞きした話なども参考にさせていただいています。


――主人公・吉乃華は「理解しない社会が悪い」と諦めたり糾弾するのではなく戦うことを選びます。この姿勢を描いた理由は?


ひるの:彼女のキャラクターを考えて、あのような反応になりました。ですが社会の理解が足りていない現状がある以上、声を上げる権利は誰もが持っていますし、重要なことだと思っています。どちらが正しいという感覚は私にも、おそらく華にもなく、戦う方法が違うだけです。


――作画について。身長差のあるキャラを描くのは難しそうです。また瞳の表現がお好きだそうですが、どのようにこだわったり実際に描いているのでしょうか。


ひるの:瞳の表現で特に好きなのは、ときめいている時のキラキラ。その時々でトーンを使ったりホワイトを多めにしたり楽しんで描いています。身長差についてはカメラを引きにしたりアングルを工夫してコマの中に収めて描きました。特に岩見と華の二人はアオリやフカンが多めです。


――憧れ、影響を受けた作品や作家はいますか?


ひるの:昔からりぼんっ子として育ってきたので多くの少女漫画家さんに憧れてきました。漫画を描く上ではくらもちふさこ先生、谷川史子先生、吉田秋生先生などから影響を受けています。


――今振り返って『133cmの景色』は自身の作家人生にとって、どんな作品ですか?


ひるの:ここまで多くの方に読んでいただけるとは思っていなかったので、自分でも驚いています。お手紙などでご感想をいただくたびに、私の方が救われるような想いです。難しいテーマに取り組んでいるため毎回悩みながら描いているのですが、そのおかげで自分が表現したいことについて改めて向き合うことができました。


(小池直也)