2024年07月25日 15:50 弁護士ドットコム
ファッション誌「Popteen」専属モデルで、人気TikTokerのさくらさんが7月23日、自身のXに、無断で撮影された写真がSNSで拡散されているとして「開示請求・損害賠償請求・刑事告訴に向けて弁護士に相談しています」と投稿した。
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さくらさんは、拡散されている画像は「当時お付き合いさせていただいていたお相手に、私が気づかない間に撮影された写真だと思います」と説明。
「精神的に限界が来る前に誹謗中傷もやめてください」「直ちに、投稿を中止するとともに、既に投稿された画像等を即刻削除してください」とうったえている。
拡散されているものの中には動画もあるといい、さくらさんは「確実に私ではありません」と否定している。
このように流出した画像や動画をXでリポストするなどして拡散させる行為は法的に問題ないのか。また、別人が映っている動画などを本人のものと偽ってネットに投稿することはどんな問題があるのか。
インターネット上の誹謗中傷対策に詳しい清水陽平弁護士に聞いた。
仮に、拡散されている画像が性的なものだとすれば、リベンジポルノ法3条1項、2項が定める「私事性的画像記録提供等罪」にあたる可能性があります。
リベンジポルノ法は、リベンジ(=復讐)目的であることを要件としていないので、流出させた人だけでなく、拡散した人についても同様に成立する可能性があります。
仮に成立すれば、その罰則は3年以下の懲役または50万円以下の罰金とされています。
また、性的姿態撮影等処罰法3条2項が定める「性的影像記録提供・公然陳列罪」が成立する可能性もあります。
この罪も主体について制限があるわけではないので、流出させた人だけでなく、拡散した人にも責任が生じる可能性があります。
この罪の罰則は、5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金とされています。
また、ストーカー規制法は、つきまとい等のうち、名誉を害する事項や性的羞恥心を害する事項を知り得る状態に置くことを繰り返す行為を規制しており、ストーカー規制法違反の罪となる可能性もあります。
この罪は、行為主体に「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的」があることが必要です。
なので、流出させた人が元交際相手だとすれば、その目的がある可能性が高いといえますが、拡散している人にはないと思われるため、成立するとすれば元交際相手ということになります。
この罪の罰則は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金とされています。
ほかにも、性的な画像や動画などを拡散する行為は名誉毀損の問題とされるので、名誉毀損罪になる可能性が高いといえます。罰則は3年以下の懲役もしくは禁固または50万円以下の罰金です。
別人の動画を「さくらさん」だとしてネットに投稿する場合は、本人の動画ではない以上、少なくともさくらさんとの関係において、リベンジポルノ法や性的姿態撮影等処罰法の問題が生じません(場合によりストーカー規制法の問題にはなるかもしれません)。
ただし、本人の動画であると誤解されるかたちで動画が拡散されれば、本人の名誉が害されることになるため、名誉毀損罪が問題になってきます。
そして、これを拡散するような行為に正当な理由は通常考え難いことから、行為を正当化することは困難といえます。
いずれにしても、他人の性的な画像や動画を拡散することはリスクしかない行為といえ、直ちにやめるべきといえます。
【取材協力弁護士】
清水 陽平(しみず・ようへい)弁護士
インターネット上で行われる誹謗中傷の削除、投稿者の特定について注力しており、総務省の「発信者情報開示の在り方に関する研究会」(2020年)、「誹謗中傷等の違法・有害情報への対策に関するワーキンググループ」(2022~2023年) の構成員となった。主要著書として、「サイト別ネット中傷・炎上対応マニュアル第4版(弘文堂)」などがあり、マンガ・ドラマ「しょせん他人事ですから~とある弁護士の本音の仕事~」の法律監修を行っている。
事務所名:法律事務所アルシエン
事務所URL:https://www.alcien.jp