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スズキの新車「フロンクス」はホンダ「WR-V」と真っ向勝負? 試乗で確認

2024年07月25日 11:41  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
スズキがインドで生産する小型SUV「フロンクス」を間もなく発売すると聞いて、真っ先に思い浮かんだのが同じくインド産のホンダ「WR-V」だ。WR-Vの日本販売は絶好調の様子だが、サイズ感で(おそらく価格でも)ライバルとなるフロンクスはホンダの牙城を崩せるのか! プロタイプに試乗して出来栄えを確認してきた。


フロンクスはWR-Vより一回りコンパクト



フロンクスのボディサイズは全長3,995mm、全幅1,765mm、全高1,550mm、ホイールベース2,520mm。WR-Vより30cmほど短く、3cmほど狭く、10cm低い。デザインはルーフが後方に向かってなだらかに下がるクーペSUVのスタイルだ。


キモは全高で、日本の機械式駐車場にぴたりと収まるサイズとなっている。このあたり、けっこう意識して開発したのかもしれない。最小回転半径は4.8mで、こちらも日本の道路事情にジャストフィットだ。


フロンクスは2023年4月にインドで発売し、すでに中南米や中近東、アフリカ諸国などでも販売中。スズキの世界戦略を担うグローバルカーという立ち位置だ。日本仕様には、

先進安全装備や4WDモデルを追加。市場の要求にしっかりと対応しているという。

デザインはアクが強め!



コンパクトSUV市場にライバルは多いが、どうやって存在感を発揮するのか。デザインを担当したスズキ 四輪デザイン部 先行デザイン課の増田茜氏は「同じセグメントのSUVには(WR-Vやヤリスクロス、ライズ/ロッキーなど)ライバルが多いのですが、後発になるフロンクスは力強くそれでいて都会にもなじむクーペスタイルにすることで、それらに埋没しないよう、しっかりと別の個性を出してみました」とおっしゃる。


その通り、エクステリアはフロントのシャープな3連デイタイムライトとその下のボリューミーな膨らみの中に3角形に配置した楕円形のヘッドライト、グリルセンターの大きな「スズキ」エンブレム、サイドのブラックフェンダーの上部に2段の出っ張りを持つ「ダブルフェンダー」、リアの「く」の字型3連ライトなど、けっこうアクの強いデザインを散りばめている。ただし、それらに統一感があるので全体としては破たんがなく、ユニークで個性的なカタチに仕上がっている。


インテリアは異例の豪華さ!



インテリアは、この手の小型SUVとしては異例なほどの豪華版。インパネセンターにはゴツいシルバー加飾のフレームを取り付けて、SUVらしい力強さを表現している。たっぷりとアンコが詰まったシートはレザーとファブリックのコンビネーション。ヘッド、ショルダー部、膝回りをボルドー、背面とお尻の部分はブラックの2トーン仕様とし、ドアの内ばりやダッシュボードも同じ2トーンで仕上げていて統一感がある。

後席の肩周りと足元は余裕の広さ。ルーフがなだらかに下がっているけれども、大男でない限り頭上空間に問題はなさそうだ。170cmの筆者は全く気にならなかった。左右の太いCピラー内に小窓があって、閉塞感がないのがいい。シートを倒せばフラットなラゲッジが出現する。


ちょっとスポーティーな1.5Lマイルドハイブリッドの走り



フロンクスの日本仕様は1.5Lの自然吸気K15C型直列4気筒DOHC16バルブエンジンを積むマイルドハイブリッド車(MHEV)だ。性能はエンジンが最高出力74kw(101PS)/6,000rpm、最大トルク135Nm/4,400rpm、モーターが2.3kW(3.1PS)/60Nm。6速AT(要するにオートマ車)で1,070kg(2WD)のボディを走らせる。WR-Vには設定がない4WDモデルを選べるところは、フロンクスの大きなアドヴァンテージになるはずだ。


まずは2WDモデルを走らせてみると、1トンをわずかにオーバーする車重に100PS前後のパワー感がぴたりとマッチしていて意外にスポーティー。変更できるドライブモードは「スポーツ」だけなのだが、アップダウンと大小のコーナーを組み合わせた試乗コース内でそれを選び、操作がしやすい形状のパドルで車速をコントロールしていくと、ちょっとしたスポーツカー感覚まで味わえる。重心が低く、ワイドなトレッド、専用チューニングの前マクファーソンストラット、後トーションビームサスペンションなどのバランスがしっかりと取れている印象だが、決してガチガチに締め上げているわけではなく、コース内にある段差や橋の継ぎ目などはしれっと通過していく。乗員へのショックを最低限に抑えているのがわかる。


静粛性に関しては、ダッシュパネルやリアドアガラスの板厚、フェンダー内のポリウレタン製隔壁、ボディ骨格内の遮音壁などで対応していて、高周波の「ザーッ」というロードノイズを車内に伝えてこない。エンジン音に関しては、高回転域ではそれなりに聞こえるが、これはインドのユーザーがその「音」の質とレベルに結構こだわっていることに起因するという(WR-Vの時も同じ話を聞いた)。



もう1台の4WDモデルは、プロペラシャフトがつながったリアの駆動系からわずかに音が聞こえてくるけれども、それはあくまで2WDに比べたらというレベル。走行モードは「スポーツ」だけでなく、滑る下り坂で一定の車速を保つ「ヒルディセント」や荒地でスリップを最小限に抑える「グリップコントロール」、雪道での「スノーモード」を備えていて、降雪地やハードな走行シーンで使用するユーザーにきっちりとアピールできている。


2台の出来はなかなかいい。あとは価格だけだ。インド生産、日本販売モデルのブームが到来するのだろうか。


原アキラ はらあきら 1983年、某通信社写真部に入社。カメラマン、デスクを経験後、デジタル部門で自動車を担当。週1本、年間50本の試乗記を約5年間執筆。現在フリーで各メディアに記事を発表中。試乗会、発表会に関わらず、自ら写真を撮影することを信条とする。 この著者の記事一覧はこちら(原アキラ)