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ホンダの旧型「フリード」に乗り倒した私が新型に試乗して感じたこと

2024年07月23日 12:31  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
ホンダの新型「フリード」はひとつ前のモデルに比べて何がよくなったのか。長きにわたり売れ続けた先代モデルのよかった部分はしっかりと引き継いでいるのか。親族が所有する先代フリードを何度も運転してきた私が、新型に試乗してじっくりと比較してみた。


グレード展開はわかりやすくなった



ホンダのフリードは、3列または2列のシートを備えながらコンパクトなサイズを実現したミニバンだ。2008年に初代モデルが登場し、2016年には2代目に進化した。2024年6月に発売となった新型は3代目モデルとなる。


コンパクトなサイズながら3列シートを採用しているミニバンは選択肢が少ない。2代目フリードは使い勝手の良さなどが評価されコンスタントに売れ続けていた。



新型フリードはグレード展開がわかりやすくなった。新旧の違いは以下の通りだ。



■先代(2代目)フリードのグレード展開

・フリード:6人または7人乗り(3列)

・フリード+:5人乗り(2列)

・フリード クロスター:6人乗り(3列)

・フリード+ クロスター:5人乗り(2列)



■新型(3代目)フリードのグレード展開

・フリード エアー:6人または7人乗り(3列)

・フリード クロスター:5人乗り(2列)または6人乗り(3列)



組み合わせはいろいろだが、基本的には3列シートがいいならエアー、2列シートを希望するならクロスターと覚えておけばわかりやすいだろう。クロスターでも、キャプテンシートを採用した6人乗り仕様は3列シートとなる。

全体が直線的なデザインに



デザインはどう変わったのか。



正面から見るとわかりやすいが、新型フリードは先代に比べ直線的なデザインになっている。先代モデルは斜め基調の面構えで、鋭く走るというイメージだった。新型は鋭さが薄まり、よりモダンで近未来的に、そして穏やかになったような印象を受けた。


横から見ても、先代が前から後ろへ流れるような流線的なラインを多用していたのに対し、新型は直線的でスクエアな造形に変わっている。


リアのデザインもかなり変わった。テールランプは小さくなり、彫り込みも少なくあっさりとしている。いい意味で地味な見た目になった感じもするが、個性を主張しすぎないデザインを好むユーザーにとってはうれしい変更点だろう。


エクステリアの最大の特徴は全体的にスクエアで直線的なデザインになったこと。先代モデルのプラットフォームを流用しているため大きさはほとんど変わっていないが、デザインを変えるだけでここまで印象が変わるのかと正直驚いた。好みの問題になるが、シンプルで飽きのこないデザインは好印象だし、個人的に今回のフルモデルチェンジは成功したと感じている。

運転のしやすさは向上した?



次に内装を比べてみよう。

大きく変わったのがメーターパネルの位置だ。先代モデルではハンドルの奥に収納スペースがあり、そのさらに奥にメーターパネルがあった。この配置だとメーターがフロントウィンドウに近くなるので、運転中の視線移動が少なくてすむという利点がある。



新型ではメーターパネルがハンドルのすぐ奥に移動している。位置としては先代よりも手前になったわけだが、ここでも視認性はかなりいい。


乗り比べてみると、新型フリードの方が運転中に周囲を確認しやすかった。これはおそらく、ダッシュボードが直線的なデザインになったことが影響している。乗車してすぐはAピラー(フロントガラスと天井を支えている柱の部分)が太くなり視界が悪くなったのではと感じたのだが、しばらく走るとまったく気にならなくなった。ピラーやナビなども、視界を邪魔しない位置に配置してある。


運転席周りの収納の数は先代と同等。使い勝手が悪くなってしまったところはないと開発陣は説明する。実際、先代モデルにあったハンドル奥の収納スペースは助手席側に移動しているし、深くなり、開けやすくもなっている。ただ、センターコンソールにあった収納式のテーブルは、新型フリードでは廃止されてしまった。



この点については、ホンダの開発メンバーの間でも残すかなくすかで意見が分かれたそうだ。個人的には、便利だったので残してほしかった。


3列目シートの格納が手軽に!



後席の使い勝手はこれまでのよさを継承しつつ、さらに改良が加えられている。



後席用に独立したエアコンが設けられたのは嬉しい変更点だ。ミニバンは室内が広いので、前席のエアコンだけだと室内温度を快適に保つのが難しい。特にここ最近の夏の暑さは、例年にないほど厳しい。後席用のエアコンはもはや必須装備だ。


3列目シートを跳ね上げて格納する際のシートの固定は、これまでよりやりやすくなっている。具体的には、天井付近にあったフックを取り付ける金具の位置が、より手前かつ下(Dピラー付近)に移動したことで、楽にシートを固定できるようになった。地味な変更点だが、先代モデルと比較すると明らかにラクだ。


後席は2列目も3列目も、ヘッドレストなどの厚みを少なくし、圧迫感を低減すると同時に、視界を広くするための工夫を施したという。比較してみてそれを実感できたのは3列目の窓「リヤクォーターガラス」だ。新型フリードでは、デザインが全体的に直線的になったおかげで、リヤクォーターガラスもほぼ真四角になった。光が多く入るようになり、開放感が増した。


結論:新型「フリード」は買いなのか?



新型フリードはデザインがよくなり、車内の質感も向上していた。新旧を比較してみて、これから買うなら新型一択だと実感した。



ただ、あえて先代モデルを選ぶという手もある。もう新車では買えないため中古車になるが、車両本体価格が抑えられるので、初期コストを抑えたい人にとっては最良の選択肢になるからだ。新型のデザインがあまり好きではないという人にも先代モデルはオススメできる。



どちらのモデルを選んだとしても、間違いなくいえるのは、圧倒的な使い勝手のよさと取り回しのしやすさを手に入れられるということ。3列シートを備えたコンパクトなミニバンを求めているユーザーにとっては、間違いなく最有力候補となる1台だ。新型にせよ先代にせよ、フリードを選んでおけば日々の生活が便利になるのは間違いない。



室井大和 むろいやまと 1982年栃木県生まれ。陸上自衛隊退官後に出版社の記者、編集者を務める。クルマ好きが高じて指定自動車教習所指導員として約10年間、クルマとバイクの実技指導を経験。その後、ライターとして独立。自動車メーカーのテキスト監修、バイクメーカーのSNS運用などを手掛ける。 この著者の記事一覧はこちら(室井大和)