Text by CINRA編集部
NHKで現在放送中の連続テレビ小説『虎に翼』。日本初の女性弁護士で、のちに裁判官となった三淵嘉子の半生をモデルに、伊藤沙莉演じる主人公・猪爪寅子と仲間たちが、困難な時代に道を切り開いていく様が描かれている。
SNSを中心に大きな話題を呼んでいる本作について、いまからでも視聴したいという人も多いのではないだろうか。ここでは、裁判官となった寅子が新潟に赴任することになった第16週までの物語をおさらいする。
昭和6年。女学校に通う猪爪寅子(伊藤沙莉)は、母・はる(石田ゆり子)と、父・直言(岡部たかし)によって次々に見合いをさせられるもうまくいかない。兄・直道(上川周作)との結婚を控えて心を躍らせる親友・花江(森田望智)とは対照的に、「女性の一番の幸せは結婚である」という考えにどうしても納得できないでいる。
ある日、弁護士を目指して夜学に通う下宿人・優三(仲野太賀)に弁当を届けに行った先の大学で、寅子は法律に出会う。明律大学の教授・穂高(小林薫)に設立されたばかりの法科女子部への入学を勧められた寅子は、はるに内緒で願書を出し、晴れて合格する。はるは寅子の優秀さを理解しつつも進学に反対するが、最後には寅子の覚悟を問い、六法全書を買い与えてその背中を押す。
明律大学女子部に入学した寅子は、華族令嬢の桜川涼子(桜井ユキ)、弁護士の夫を持つ最年長の大庭梅子(平岩紙)、日本に住む兄を頼って朝鮮からやってきた留学生・崔香淑(ハ・ヨンス)、男装の生徒・山田よね(土居志央梨)らと出会う。人一倍言動の熱いよねと何かと意見が食い違う寅子だが、実際の裁判の傍聴やその内容の検証を通して仲間たちと絆を深めていく。
昭和8年。女性に弁護士資格が認められる法改正が遅れるなか、退学者の続出、入学希望者の減少により、女子部は存続の危機に。2年生になった寅子たちは上級生とともに、女子部の宣伝のために法廷劇を上演することになる。
本番の日、生徒たちが熱演するなか、女子生徒を揶揄する男子生徒が妨害をしたことで劇は上演途中で中止になってしまう。男子生徒に突き飛ばされて怪我をしたよねを住まいへ運んだ寅子たちは、よねの境遇や男装の理由、弁護士という夢にかける思いを知る。その後、寅子の提案により彼女の自宅で法廷劇の再検証を行なう女子部の面々。
また、寅子は女学校卒業後、猪爪家に嫁入りした花江の孤独や苦しみに触れる。
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昭和10年。女子部を卒業した寅子たちは、「本科」と呼ばれる法学部へ。女子も弁護士になるための試験を受けられるようになり、花岡悟(岩田剛典)、轟太一(戸塚純貴)ら男子生徒とともに勉学に励む。寅子や花岡らは親睦を深めるためにハイキングに行くが、そこで夫に妾がいることを知りながら息子たちと暮らしている梅子の境遇が明らかになる。
梅子の夫の肩を持つ花岡と寅子は言い合いになり、はずみで花岡が山道から転落。花岡が入院した病院で、梅子は自身の家庭の事情や女子部に入った理由を話しだす。退院した花岡は、自分の理想との乖離に苦しむ葛藤を吐露し、梅子に謝罪。寅子は花岡の本当の姿を知る。
一方、猪爪家では父・直言が突如、贈収賄容疑で逮捕され、一家に動揺が走る。事件がきっかけで寅子も大学に行けない日々が続くが、恩師の穂高が弁護を引き受けてくれたことで、ふたたび大学に。直言は罪を自白するが、父の無実を信じる寅子は花岡や轟、女子部の面々らの助けを借りて調書の確認を始める。
なかなか成果が上がらないなか、寅子は母・はるが日記をつけていた手帳の存在を思い出す。手帳の記録と調書の内容の食い違いを指摘された直言は、自白は嘘だったと認める。裁判の末、直言は無罪となり、一年半におよぶ寅子たちの戦いは幕を閉じた。
昭和12年。寅子、よね、涼子、梅子、香淑は初めての高等試験に臨むが、優三ともども結果は不合格。翌年の試験に向けてそれぞれが決意新たに勉強に励むなか、香淑の兄が思想犯の疑いをかけられて、特高に目をつけられていること、香淑自身は合格の見込みがないことを知りながら勉強をつづけていたことが明らかに。
さらに涼子の家では父が出ていき、彼女は母を支えるために男爵の子息と結婚することを選ぶ。梅子は試験前日に夫に離婚届を突きつけられたことから、幼い三男を連れて家を出た。志なかばで試験を断念せざるを得なかった仲間たち。その想いを背負った寅子は見事合格。一方よねは口述試験で落第し、「自分を曲げずにいつか合格してみせる」と寅子に告げる。
自分の合格を心から喜べない寅子は、そのもやもやの正体が「怒り」であったと気づき、祝賀会の席で「生い立ちや信念や格好で切り捨てられたりしない。男か女かでふるいにかけられない社会になることを、私は心から願います」「困ってる方を救いつづけます。男女関係なく!」と、決意を表明する。
©️NHK
雲野(塚地武雅)の法律事務所で司法修習生として働き始めた寅子は、裁判官を目指す花岡の司法修習後の試験合格を祝うため、二人きりで食事へ。そこで花岡が故郷の佐賀に赴任することになったと告げられる。
次の年、寅子は雲野の事務所を手伝うことになったよねと再会。そして1年間の修習期間を終え、弁護士資格を取得する。
晴れて弁護士となった寅子だが、女性だということを理由に依頼人からの弁護を断られ続ける。意気消沈する寅子の前に、花岡が現れ、婚約者を紹介される。
寅子は自身の「社会的信頼度を上げる手段」として結婚することを決意。両親に頭を下げ、見合い相手を探してほしいと頼み込む。そこで、弁護士の道を諦めて直言の工場で住み込みで働いていた優三が結婚相手に名乗りをあげる。二人は結婚し、寅子は佐田寅子となる。
依頼も入るようになり、一人前の弁護士として活躍し始めた寅子は、亡き夫の両親と子どもの親権をめぐって争っている女性の依頼を引き受ける。弱い立場にいる彼女を助けようと奮闘した寅子だが、裁判の後、彼女が嘘をついていたことが発覚。自身の未熟さを痛感する結果となる。
そんななか、大学の先輩・久保田(小林涼子)が弁護士をやめて夫の実家に移ること、もう一人の先輩・中山も子育てに専念することを知る。女性弁護士が自分一人になってしまった寅子は、夢半ばで去っていった仲間を思い、いっそう仕事に没頭する。
社会では戦争の影響が人々の生活に影を落とすなか、寅子の兄・直道やかつての同級生・轟のもとにも召集令状が。寅子は子を授かるが、仕事の無理がたたって倒れてしまう。
寅子の妊娠を知った雲野や穂高は弁護士の仕事を休んで子育てに専念することを勧める。限界を感じて事務所を辞めることにした寅子は、よねとも決別してしまう。
やがて娘の優未を出産する。そんな矢先、優三(仲野太賀)のもとに召集令状が届く。優三は「寅ちゃんにできることは、寅ちゃんの好きに生きることです」と伝え、戦地へ出征する。
昭和20年、度重なる空襲から逃れるため、寅子と花江は子どもたちを連れて疎開。そこへ自宅に残っていた父・直言が現れ、兄・直道の戦死を伝える。
やがて終戦を迎え、勉強のため岡山にいた弟・直明(三山凌輝)が戻ってくる。帝大進学を目指していた直明の「家族のために働く」という言葉に納得できない寅子。
優三の安否がわからないまま一年が過ぎていたある日、病に冒されていた直言が倒れ、じつは直言が優三の死の知らせを隠し続けていたことが明らかになる。これまでの後悔と隠していたことをすべて打ち明けた直言は息を引き取る。
寅子は優三の遺品を受け取り、優三の死と一人向き合う。そこで目に飛び込んできたのは、「すべて国民は、法の下に平等」と書かれた日本国憲法第十四条の条文だった。
もう一度法律の世界に飛び込むことを決意した寅子は、弟の直明に自分が稼ぎ手になると伝え、進学を勧める。
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新しい憲法に希望を見出した寅子は、法曹会館の人事課を訪れ、法律の道を志した当時に出会った桂場(松山ケンイチ)と再会。「ライアン」こと久藤頼安(沢村一樹)の後押しで司法省民事局民放調査室で働くことになり、民法親族編・相続編の法改正に取り組む。
家制度や戸主の廃止などを盛り込んだ改正案が「家族観の破壊」につながり、人々が混乱すると語る、法改正審議会委員・神保(木場勝己)の意見に疑問持つ寅子だが、夫を亡くして家で子育てをする花江らの存在が頭をよぎり、強く反対できない。
審議会で神保と穂高が改正案をめぐって意見を戦わせる一方、穂高は自分が寅子を法曹の世界に導いて不幸にしてしまったと詫び、寅子に新しい仕事を紹介しようとする。しかし、寅子は自分は好きでこの場にいるのだとその誘いを断り、花江やはるの意見も聞きながら法改正のため奔走。昭和22年に民法の一部改正案が国会に提出され、後に成立することになる。そんななか、花岡が死んだという知らせが届く。
花岡は、違法であった闇市の食べ物を拒否して栄養失調で亡くなっていた。そんななか、戦地から戻ったかつての寅子の同級生・轟は、よねと再会。ふたりは手を組み、カフェ「燈台」の跡地で事務所を立ち上げることを決意する。
寅子は家事審判所と少年審判所を合併し、家庭裁判所を設立する準備室に異動。破天荒だが情熱を持つ上司・多岐川幸四郎(滝藤賢一)とともに奮闘し、昭和24年、家庭裁判所が設立される。
第12週、戦争孤児の問題に向き合う寅子は、視察に出かけた上野の街で少年たちのリーダー・道男(和田庵)と出会い、よね、轟と再会。決別した寅子に、よねは「お互い死なずに済んでよかった」と伝えるも、「顔を合わすのは今日が最後だ」と告げ、わだかまりはとけない。
猪爪家に居候することになった道男。しかし、花江にとった態度が誤解されてしまい、道男は家を飛び出してしまう。責任を感じた母・はるは体調を崩してしまい、寅子は道男を探し出す。道男を抱きしめ、これまでの苦難を労ったはる。寅子は子どものように泣きじゃくりながら別れを惜しむも、その日の晩にはるは旅立った。
道男は猪爪家と和解し、寅子を応援する寿司職人の笹山(田中要次)のもとで住み込みで働くことになった。
家庭裁判所の特別判事として多忙を極める寅子は、女学院時代の同級生である大庭梅子(平岩紙)と再会する。
梅子の家では夫の死をきっかけに相続問題が勃発し、梅子の3人の息子たちは財産相続をめぐって対立していた。泥沼化し、一切収束が見えない事態に、梅子は遺産も3人の息子の母でいることも放棄することを決意する。晴れやかな顔で「ごきげんよう!」と告げ、梅子は家族の元を立ち去っていった。
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ラジオ出演などをきっかけに有名となった寅子。最高裁判官・星朋彦(平田満)の著書『日常生活と民法』の改稿作業を手伝うことになり、星長官の息子で横浜地裁の判事である航一(岡田将生)と出会う。含みのある物言いをする航一にやりづらさを感じる寅子だが、改訂作業は順調に進み、亡き夫・優三の夢であった「法律の本を出す」という夢を叶えたことを喜ぶ。
寅子の恩師、穂高先生は最高裁判事を退任することになった。寅子は祝賀会の準備と花束贈呈を引き受けるが、祝賀会の場で「結局私は大岩に落ちた雨垂れの一雫に過ぎなかった」という穂高の挨拶を聞いた寅子は怒りのあまり花束贈呈を拒否し、その場を立ち去る。
翌日、寅子の元を穂高が訪れ、「私は古い人間だ。既存の考えから抜け出すことはできなかった」と謝罪する。寅子は複雑な心境を抱きつつも、「先生の教え子であることは心から誇りに思っています」とお互いの思いを伝える。その後、穂高は亡くなった。
多忙を極める寅子は、視察のために行っていたアメリカから帰国する。雑誌の取材を受け、後輩も出てきて順風満帆だが、家庭のことはすべて花江に任せきりだった。不穏な空気が立ち込めるなか、新潟への赴任を言い渡される寅子。花江は家族全員でついていくと伝えるが、寅子は娘である優未のみを連れて行くと述べる。
花江は見るに見かねて、「トラちゃんが見ているのはね、本当の優未じゃないの」と告げる。優秀であることを求める寅子の前で、優未は「お利口さん」でいるよう振る舞っていた。あるときはテストの点数を偽装したこともあったが、寅子は100点を取るよう伝えるのみで、偽装されたことにすら気づけなかった。
花江や直明、甥っ子たちからも不満を告げられ、ショックを受ける寅子。優未に謝罪し、自分は変わることを宣言し、新潟についてきてほしいと告げると、優未は「はい」と即答する。
新潟地家裁三条支部に赴任した寅子は、支部の職員や地元の弁護士・杉田太郎(高橋克実)らから歓迎を受ける。新潟本庁刑事部に勤務する航一とも再会した。
寅子は土地をめぐる民事調停を担当することになった。太郎は、地元の名士である申し立て人に気に入られると生活が楽になると寅子に伝え、寅子は「持ちつ持たれつ」の関係性や、地縁と血縁で成り立つ地域の現実に直面する。
家では、スンとした振る舞いを続ける優未との溝を埋めようと努力する。父・優三の話を聞きたいと言った優未に寅子ははじめはうまく答えることができなかったが、優未の言動に優三の面影を見た寅子は、優三との思い出を打ち明ける。