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サッカー日本代表・佐野海舟さん、不同意性交容疑で逮捕…もし有罪なら「実刑」ある?

2024年07月17日 18:30  弁護士ドットコム

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サッカー日本代表として今年のアジアカップにも出場した佐野海舟さんが2人の知人男性らとともに30代の女性に性的暴行をしたとして、警視庁に不同意性交等罪で逮捕された。


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佐野さんの認否は明らかになっておらず、突然の事態にファンも衝撃を受けている。事件直後に現場近くで身柄を確保されたともされるなかで、今後は起訴されたり、実刑判決を受ける可能性もあり得るのだろうか。弁護士が解説する。



●「驚いている」移籍先マインツも困惑

報道を受け、元所属先のJ1鹿島アントラーズは7月17日、「元所属選手に関する事案であるためクラブとしても大変憂慮しております」と声明を出した。今月4日に移籍が発表されたばかりのドイツ1部リーグ・マインツからも「新加入の佐野海舟が母国で逮捕されたという日本のメディアの報道に驚いた」などの声明が出ている。



FNNプライムオンラインなどによれば、逮捕容疑は7月14日午前4時過ぎ、ホテル(文京区)で、30代の女性に性的暴行を加えた疑い。女性からの110番通報を受けて駆け付けた警察官が、ホテル周辺で佐野さんらを見つけて、その後逮捕したという。



佐野さんらは13日夜から女性の友人女性を含む計5人で港区で食事をしてから「飲み直そう」と湯島のホテルに移動し、友人女性が帰宅した後に性的暴行に及んだとみられるなどとも報じられている。



佐野さんが逮捕された不同意性交等罪とは何か。そして、仮に有罪判決だった場合には実刑の可能性も考えられるのだろうか。元検事の西山晴基弁護士に聞いた。



●女性が同意したか・同意できる状態だったかが調べられる

——不同意性交等罪とはどのような罪でしょうか。



暴行を用いるなどして、同意しない意思を形成・表明することが困難な状態などで、性交や口腔性交などに及ぶ犯罪です。



飲酒などの影響で「同意」しない意思を形成・表明が困難な状態にある人に対して、犯行に及んだ場合も同様です。2023年の刑法改正以前の「準強制性交等罪」とは、「抵抗」が著しく困難な状態にある人に対する行為であることが要件とされていた点で異なります。



——佐野さんらは事件直後に身柄を確保されたと報じられています。どのような捜査が進められるでしょうか。



もし酩酊状態の女性に犯罪行為がなされた事案である場合には、たとえばふらついている様子があるかなど、被害女性の飲酒量や飲酒による酩酊状態について、状況の客観的な裏付け捜査を行っているものと思われます。



具体的には、通報直後の女性の呼気検査や血液検査、飲酒先の領収書の確認、防犯カメラなどが調べられているでしょう。



また、報道によると、今回の犯行は、ホテルから友人女性が帰った後、被害女性が1人になった状況で行われたとも報じられています。警察は、この友人女性にも、帰る直前の被害女性の酩酊状態について詳しく聴取するとともに、被害女性との間の事件前後のメッセージのやり取りもおさえているものと思われます。



他方で、当時の具体的な状況については、逮捕された3人がそれぞれ自分の責任を軽くする目的で異なる供述をする可能性があるため、警察は、3人の供述に食い違いがないかを確認しながら初期供述をおさえていると考えられます。もし、性行為があったこと自体に争いがある場合には、被害女性の体に3人の体液等が付着していないかについて、微物の採取・鑑定も進めていると思われます。



●「法定刑は5年以上の懲役」裁判になれば示談しても刑事処罰は免れない

——佐野さんが起訴されたり実刑判決を言い渡される可能性はあるのでしょうか。



不同意性交等罪は、法定刑が「5年以上」の懲役と重い犯罪になります。そのため、有罪となった場合には実刑になる可能性があります。



本件では、被害女性が同意していたか、同意できる状態にあったかについて、逮捕された佐野さんたちの認識に相違がある可能性もあり、今後、裁判で争われることも考えられます。



しかし、刑事裁判は、一度裁判になってしまうと、無罪にならない限り、その後に示談したとしても刑事処罰を免れることはできません。



不同意性交等罪は非申告罪ですが、起訴前に示談が成立した場合、起訴猶予となる可能性もあります。そのため、佐野さんとしては、刑事処罰のリスクを避けるため、裁判になる前に、早期の示談による解決を目指す可能性もあるのではないかと思われます。




【取材協力弁護士】
西山 晴基(にしやま・はるき)弁護士
東京地検を退官後、レイ法律事務所に入所。検察官として、東京地検・さいたま地検・福岡地検といった大規模検察庁において、殺人・強盗致死・恐喝等の強行犯事件、強制性交等致死、強制わいせつ致傷、児童福祉法違反、公然わいせつ、盗撮、児童買春等の性犯罪事件、詐欺、業務上横領、特別背任等の経済犯罪事件、脱税事件等数多く経験し、捜査機関や刑事裁判官の考え方を熟知。現在は、弁護士として、刑事分野、芸能・エンターテインメント分野の案件を専門に数多くの事件を扱う。
事務所名:レイ法律事務所
事務所URL:http://rei-law.com/