トップへ

"ホス狂"女子大生の父、娘の担当ホストと直接対決「風俗堕ちしてもかまわないのか」

2024年07月15日 08:40  弁護士ドットコム

弁護士ドットコム

記事画像

「遅くにできた待望の子」であった娘がホスト沼にはまり、探偵に調べてもらったところ、さらに「デリヘル」で働いていることもわかった。関西在住の60代父親は、大阪市内で20歳の娘を「風俗堕ち」させた担当ホストとの直接対決にのぞんだ。


【関連記事:"ホス狂"女子大生の父「まさか自分の娘が…」 探偵の調査で「風俗勤務」まで発覚、証拠突き付けて音信不通に】



連絡がほとんど取れず、大学を休学し、住所もわからないことから、娘とつながっているホストに現況確認をするためだ。復学への口添えなども期待したが、ホストから返ってきたのは、「促すことは何も言えない」「プライベートには関与しない」という冷たい言葉だった。(ジャーナリスト・富岡悠希)



●大学に入って半年でデリヘルで働くようになった娘

「親心をうったえ、どこに住んでいるのか、どう過ごしているのかを聞き出せれば」



父親のアツシさん(仮名)は、娘のマユさん(仮名)が19歳からハマった担当ホストのレン(仮名)に会う前こう話した。



マユさんは大学1年だった昨秋、大阪ミナミのホストクラブでレンと出逢い、生活を一変させた。それまでは、飲食店でバイトしながら、授業に出ていた。ところが、学校を休むようになり、いわゆるデリヘルで仕事をするようになった。



アツシさんは、マユさんがレンのため、1回数十万円もかかるシャンパンタワーをしたことを把握している。その代金を支払えるような小遣いは渡しておらず、飲食店のバイト代でも賄えるはずがない。「デリヘル=レンに貢ぐため」の構図は明らかだった。





●担当ホストは「韓流アイドル」を想起させる顔立ち

レンは、勤めているホストクラブの経営責任者の鈴村(仮名)と2人でやってきた。テーブルを挟み、向こう側に黒スーツ姿の鈴村とレンが座る。鈴村は髪の毛の一部を染め、高額そうな腕時計をはめており、いかにも夜職の服装だった。一方、レンは韓流アイドルを想起させる顔立ちの整った優男だった。



アツシさんの質問に対して、鈴村が応じるやり取りが続いた。



「今、どこで何をどうやってるのかもまったくわからず、状況を教えていただきたく、ご面談の時間をいただいた次第です」



アツシさんは「鈴村やレンと出会わなければ、娘が風俗に堕ちることなんてなかった」という腹立たしさを抱えていた。しかし、彼らに頼らなければ、娘・マミさんの居場所や現況がわからない。そのため、かなり下手に出た。



これに対して、鈴村は「成年を超えていらっしゃる方でもあり、お客さま情報を安易に提供するのもどうかなと思う」などとはぐらかす。



「血のつながった親子なので、私は(娘の住所を)公開していただきたい。状況がわかるなら、状況を教えていただきたい」



アツシさんはこう食い下がったが、鈴村は結局、応じなかった。





●「お客さまが来店されて、ただ楽しんでもらう」

アツシさんは、19歳で学生のマユさんが、高額なシャンパンタワーを入れたことへの見解もただした。



鈴村は男がキャバクラに飲みに行くとき、「安月給だから心配されるとか、安月給だから使うのをちょっとっていうので、向こうも止めない」と説明。「それと一緒で、お客さまがしたいことであったり、それを楽しんでいただくために私たちは全力を尽くしている。(シャンパンタワーを)やめる、やめないとかは、お客さま自身のご判断になります」



鈴村は「18歳以上の成年の方のご判断は、自己責任」とも話した。



アツシさんはマユさんを担当しているレンにも考えを問うた。



「自分のところに来てくれて、金を使ってくれる子が、学校を休学して、どんどん裏の世界に入ってボロボロになっていく。そんなのがオッケーなのですか」



「娘は連絡もろくに取れず、病気になっているかもわからない。(風俗に)どんどん堕ちても構わないという考え方か」



マユさんとほぼ同じ歳のレンは、大学をやめてホストをしているという。そして、彼女が復学して就職するのがいいのか、または風俗がいいのかという選択を「促すことは何も言えない」としたあと、次の言葉を続けた。



「お客さまが来店されて、ただ楽しんでもらう。そこに僕はすべてを注いでいるので、プライベートなお仕事であったりとか、そこには一切関与しない」





●担当ホストに貢ぐために風俗勤務をやめない娘

アツシさんと鈴村・レンの立場の隔たりは大きかった。そもそも鈴村は、自分たちの営業スタイルは「キレイ」という認識だ。



対決中も、「悪質ホスト問題が言われている印象で、ホストクラブは悪いものと取られがちだが、私たちができることはキレイに営業するだけ」などと話した。



マユさんが風俗勤務に追い込まれたという考えを持つ父親との立場の差は大きい。結局、要望は受け入れられず終わったが、鈴村・レンは、アツシさんの言葉をマユさんに伝えると約束した。



数日後、アツシさんの妻の元に話を聞いたというマユさんからのメッセージが入った。レンを「いい人で応援したい」と書いてきたおり、彼に貢ぐための風俗勤務をやめるつもりがないことは明らかだった。



筆者はこれまで「ホス狂」を経験した複数人の女性に取材したが、マユさんはまさに渦中の典型だ。ホストクラブ以外の人間関係を否定・遮断し、助け出そうとする側を逆に非難する。風俗を選んだ自分の行動を正当化し、言葉を重ねて担当ホストを守ろうとする。



「狂」状態から脱すると、自分が取った行動の多くがホストクラブ側の誘導によるものだと気づくが、その真っ只中においては難しい。早く抜けられれば負うダメージは少ないが、長くなるほど心身への取り返しのつかない傷がつく。



●「ホストクラブの営業スタイルをこのまま許しておくことはできない」

直接対決では冷静を保ったアツシさんだったが、時間の経過と共に、鈴村やレンは「詐欺師」だとの怒りを持つようになった。



「19歳の学生がシャンパンタワーができるような大金を持っていないことは誰でもわかる。持っているとしたら、親から盗むか、風俗絡みしかない。犯罪絡みのお金の可能性もあるからこそ、ホストはわざと出処を確認しないと言っている」



ホストへの「お金の出処」については、「頂き女子りりちゃん」の担当ホストが昨秋、逮捕された事件が記憶に新しい。りりちゃんが「おぢ」から騙し取ったと知りながら、ホストクラブで多額のお金を使ったという容疑だ。



マユさんが非合法な行為にまで手を染めてしまうと、「りりちゃん」事件と同じくマユさんや担当ホストが逮捕される事態になってもおかしくない。



アツシさんは今、担当ホストとの対面や、娘からのLINEを読み終え、一連のできごとをこう総括する。



「先日、歌舞伎町を訪問した国会公安委員長が風営法の改正に言及したニュースを見ました。私も、こうした法改正が必要だと考えます。犯罪を助長しかねないホストクラブの営業スタイルをこのまま許しておくことはできない。被害者支援団体の活動を支援するなど、私も何かしら動いていきたい」