ふたりでYoutube動画を撮っていたのだが、山本さんが大好きな野球観戦をするため撮影を途中で切り上げたことに西野さんが怒ったことからケンカが勃発したようだ。
最終的には仲直りしたものの、西野さんは第1子を妊娠中であることから、「もっと私とお腹の子に興味をもってほしい」と訴えた。
父親は、なかなか子どもを持つことをリアルに考えられないのだろう。とはいえ、身重の妻が心身ともに大変だということは想像できるはず。想像力と思いやりが、妊娠中の妻を支えるのだ。
妊娠中の妻は、夫の非道な言動はずっと覚えている
一般的に、妊娠中の夫の言動がその後の夫婦関係に及ぼす影響は大きい。「うちなんかひどかった。私はあれを機に、夫のことは信用するまいと決意したくらいですから」
そう言って苦笑するのはアリサさん(36歳)だ。現在、5歳と2歳の子がいるが、基本的に夫は頼らない、頼りにならないと思っているという。
「上の子のとき、本当につわりがひどかったんです。夫はさすがに『オレの飯は?』というタイプではなかったけど、私がトイレで嘔吐していても知らん顔。
ある日、気持ちが悪くて眠ることもできず、そこに夫のいびきがひどかったから、別室で寝たんです。そうしたら朝、『よく寝てたよねー、きみのいびきが廊下まで聞こえた』って。ぶん殴ってやろうかと思いましたよ」
体調が不安定な妻に夫はパニック
安定期に入ったころ、夫はどう対処していいかわからなかったと謝ってきた。それもそうだろうと寛大に許したアリサさんだったが、下の子のときは、「上のときと違う」と夫がパニックになっていた。「上の子のときは安定期に入ってからは、かなり楽だったんですが、下の子はつわりがほとんどなかったのに、安定期に入ってからが体調不安定でした。
どうして?前のときはこうだったじゃん、といちいち夫は言うんですが、そんなの私にだってわからない。
妊娠はみんな同じじゃないし、そのときによって違う。私が全力で受け止めて頑張ってるんだから、あなたはそれを物心両面で応援してくれればいいんだよと言っても、私を安心させてはくれなかったですね」
出産のたびに、この恨みは忘れないからなと思いながら過ごしてきたとアリサさんは言う。
それでも別れたいとまでは思わなかったのは、出産時、夫は2度ともボロボロ泣いていたから。人として悪い人ではないと感じたからだ。
「でも現実に生活をともにしていく相手としては、頼れませんね。最近は近所の先輩ママに頼りきりです。夫としてはちょっとおもしろくないかもしれません」
“頼られる夫”になるのは大変なことなのだ。
妊娠した妻をどうフォローするのか
結婚してから最初に訪れる夫の試練は、妊娠した妻をどうフォローしていくかということなのかもしれない。妻が本能的に自身の心身の危機すら感じているとき、パートナーとして何をするのか、どう声をかけるのか。知らず知らずのうちに妻は、そこを評価せざるを得ないのだから。
「うちもブブーって感じでしたね(笑)。妊娠したよと言ったら、ものすごく喜んだところまではよかったんですが、子どもがやってくるなら家をもっときれいにしなくちゃといきなり模様替えをしよう、と。
あのね、流産しやすいこの時期に、私に何をさせる気なの、とブチ切れました。さすがにその後、友だちや自分のきょうだいたちに話を聞いて、いくらか勉強はしたようですが」
アオイさん(38歳)は、過去を思い出しながらそう言った。現在、8歳のひとり娘がいるが、何度も流産しかかってやっと生まれてきた子なのだという。
その間、夫には何度も失望した。安定期といわれる時期に入っても、アオイさんの場合は安定せず、不安との闘いだった。
「それなのに夫は週に1、2回は飲み会だと出かけていた。しまいには飲み会なのに残業だと偽ったことも耳に入っています。同じ職場なんだから、そんな嘘をついても何の意味もないのに」
周りから「早く帰れ」とまで言われたと、当時、夫は帰宅して苦笑していた。子どもがなかなか安定しないのは伝えていたが、夫はその危機感がなかったのだろう。
彼女は在宅で仕事をし、週に1回は出社もしていた。そのたびに違う部署の夫がどう思われているかも耳に入ってきたのだ。夫はもともと人気者だったが、今では「妻の妊娠中に遊び歩いている」と悪い噂もたっていた。
「やっと落ち着いたのは8カ月くらい。そのころやっと私が元気になったので夫もホッとしたようです。結局、私が元気でいないと彼は安心できないんですね。
元気な私しか愛せない。それがわかったとき、自分のことしか考えてないんだ、本物の愛ではないと思いましたね」
夫が頼りになったことはない
結局、彼女は早めの時期に緊急の帝王切開での出産となった。平日の夜、家で体調がおかしくなったのだが、夫には連絡がつかず、隣の家の夫婦が病院まで送り届けてくれた。「情けないですよねえ。出産するまで、夫がいてよかったと思ったことはほぼありませんから。出産後、娘を猫かわいがりする夫には違和感ばかり覚えてきました」
ただ、どうやら娘のことはきちんと愛しているようだ。そして娘を産んでくれてありがとうと、娘の誕生日のたびに夫はアオイさんに言う。
「それでも私はあの時期のことは一生、忘れません。どういう方法かはわからないけど、いつかわからせてやりたいとも思ってる。私が執念深いのか、夫の無自覚な言動がひどかったのかはわかりませんが……」
“わからせてやる”方法は未定だが、それだけ彼女の恨みは深いということなのだろう。
あのころ、夫がわからないなりに、「僕がどうすればきみは楽になる?」「何をしてほしい?」と聞いてくれれば、今のような恨みを持つことはなかっただろうとアオイさんは言った。
亀山 早苗プロフィール
明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。(文:亀山 早苗(フリーライター))