フェラーリAFコルセのニクラス・ニールセンは、イタリアのメーカーが今週末のWEC第5戦サンパウロ6時間に向け、計画を“前倒し”して行われた『499P』のアップデートが、彼らの弱点を補うのに役立つと確信していると語った。
6月にフランスで開催されたル・マン24時間レースで、大会2連覇を達成したフェラーリは先週初め、昨年のWEC世界耐久選手権デビュー以来初となる一連のアップデート計画を明らかにした。これにはル・マン・ハイパーカー(LMH)規定マシンのブレーキ冷却ダクトの改良や空力特性の最適化などが含まれている。
インテルラゴスでのプラクティス1回目を前に、ル・マン24時間レースのウイナーになったばかりのニールセンは、アップデートが施されたマシンで限定的なテスト走行を行ったと明かし、この変更がポジティブな変化をもたらすと楽観的な見方を示した。
「トラックでのパフォーマンスという点では、(今週末のレースが)他のクルマとの最初の本格的なテストになる」と彼は述べた。
「まだ結論を出すのは早すぎるがが、うまく機能すると確信している」
「単独でテストするのと、他のマシンと一緒にテストするのは違う。しかし、アップデートがうまくいかないという心配はしていない。今シーズンはすべてのトラックでクルマのパフォーマンスが良かったから、ここでもうまくいくと信じているんだ」
ニールセンは、アップデートに伴う走行距離を尋ねられると、次のように答えた。「正直なところ、それほど多くはない。2台のマシンで異なるプログラムをいくつか行った程度だ」
「ドライビングの面では一昼夜ではないが、アップデートで達成したかったことができた。うまくいくと確信している」
前年のル・マンウイナーであるアントニオ・ジョビナッツィによると、アップデートの準備の大部分はバーチャルで行われたという。
アップデートされた499Pをどれくらい走らせたかと尋ねられたジョビナッツィもまた、「あまり走っていない」と答えた。「僕たちはシミュレーターで多くの作業をした。しかし結局のところ、苦労したのはブレーキの温度だけだ」
「実際のクルマを試したところ、すべてが狙いどおりだった」
「でも、主な仕事はシムで試してみることで、僕たちが行ったテストはパッケージが温度に対して機能していることを確認することだった」
■きっかけはWEC富士
ニールセンはさらに、AFコルセが運営するフェラーリ499Pが、昨季2023年の富士でシーズン中最悪のパフォーマンスを見せたことがアップデートを導入する原動力のひとつになったと説明した。
「アップデートによって富士でのパフォーマンスが向上することを期待している」とデンマーク人ドライバーは語った。「正直なところ、昨年の富士でのパフォーマンスにはあまり満足していない」
「僕たちのクルマはハイスピードコーナーではとても優れているが、小さく回るコ―ナーで少し苦労しているんだ。富士のセクター3はとても狭くて、基本的にはそこで苦労していた」
「(今回のアップデートで)いい方向に進むと確信しているよ」
■チャンピオンシップに集中
50号車フェラーリ499Pを駆るニールセン、ミゲル・モリーナ、アントニオ・フオコの3名は、“ダブルポイント”となるル・マンを制したことで、ランキングトップにつける6号車ポルシェ963(ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ)のトリオとの差を9ポイントに縮めた。
モリーナはル・マンでの成功を受け、彼と彼のチームメイトたちがいま、純粋にシリーズタイトルを追うことに集中していると語る。
「ル・マンがシーズンの良いベンチマークになることは最初から分かっていたし、チャンピオンシップの残りの部分を考え始めるところだ」
「ル・マンで良い結果を残せば、タイトル獲得に向けて有利になることは間違いない。いま、僕たちにはチャンピオンシップを争うチャンスがある。これからはチャンピオンシップ獲得に向けて全力で集中していくよ」
ジョビナッツィと51号車のチームメイト、ジェームス・カラドとアレッサンドロ・ピエール・グイディは、ル・マンで3位入賞を果たした後もランキングリーダーから51ポイント離れている。
しかし元F1ドライバーの彼は、この差を縮める希望を捨てておらず、今週末のブラジル・ラウンドでその差を縮めるつもりだという。
「僕たちはまだゲームの中にいると思う」とジョビナッツィ。
「物事がどれだけ早く変化するかを僕たちは知っている。正直なところ、僕たちは速いクルマを持っていながら(ル・マン前の)3レースで勝利も、望むような結果も得られなかった」
「フェラーリは、メーカーとしてル・マンで連覇を果たし、自分たちが良いクルマを持っていることを示した。でも、僕たちは僕たちで51号車のすべてをまとめ上げ、シーズン初優勝を飾りたいと思っているんだ」