2024年07月13日 09:20 弁護士ドットコム
スッピン禁止という会社の指示はセクハラやパワハラになりますかーー。
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弁護士ドットコムにそんな相談が寄せられました。
相談者は女性で、ある大手企業の派遣社員として働いています。営業職のため身だしなみとして化粧をする必要性を自分でも理解しているといいます。
ただ、新型コロナの影響でリモートワークが増えたため、化粧をほとんどしなくなりました。また「男性社員と同じように、髪やスーツのシワには気をつけている」といいます。
そんな中、会社の同僚から「明日からスッピン禁止」と言われたそうです。同じ部署の他の女性は何も言われていないため「顔の良し悪しで化粧について言われる」との疑念から「納得できません」と憤慨しています。
このように会社が社員にスッピンを禁止することは法的に問題ないのでしょうか。寺林智栄弁護士に聞きました。
まず、一般論として、女性だけに化粧をするよう指示することを就業規則に明示するのは男女差別に該当し、そのような規定は信義誠実の原則(民法1条)に違反するものとして無効になると考えられます。
また、本件のように、特定の女性に対してだけ会社や上司がスッピン禁止とし、化粧をするよう強要することはセクシャルハラスメントに該当するといえるでしょう。
セクシャルハラスメントとは、国の定義によれば、(1)他の者を不快にさせる職場における性的な言動(2)職員が他の職員を不快にさせる職場外における性的な言動ーーを指し、性的な言動の中には「性別により役割を分担すべきとする意識に基づく言動」も含まれるとされています。
特定の女性に対してのみ、会社や上司がスッピン禁止として化粧を強要することは、「性別により役割を分担すべきとする意識に基づく言動」、あるいはこれに準ずるものと言うことができます。
したがって、セクシャルハラスメントに該当します。
また、スッピンであることを理由に、望まない部署への異動等の不利益な取り扱いをする、あるいはほのめかすといったことがあれば、パワーハラスメントにも該当します。
営業職などの人に会う職種においては身だしなみを整えることは道義的に必要といえますが、それと化粧をすることはイコールではありません。
化粧をするかどうかは、その人が自身の意思で決めてよい問題であり、他人から強要されるべきものではありません。
現在でも、日本の企業の多くでは「社会人女性は化粧をして当たり前」という風潮が根強くありますが、それは男女差別です。
早くそのような風潮がなくなることが望まれます。
【取材協力弁護士】
寺林 智栄(てらばやし・ともえ)弁護士
2007年弁護士登録。札幌弁護士会所属。法テラス愛知法律事務所、法テラス東京法律事務所、琥珀法律事務所(東京都渋谷区恵比寿)、ともえ法律事務所(東京都中央区日本橋箱崎町)、弁護士法人北千住パブリック法律事務所(東京都足立区千住)を経て、2022年11月より、NTS総合弁護士法人札幌事務所。離婚事件、相続事件などを得意としています。
事務所名:NTS総合弁護士法人札幌事務所
事務所URL:http://nts-law.jp