【夏の怪談特集】「幽霊は何度か見たことがある」と豪語する、ある30代男性は、最も恐怖を感じたエピソードがあると打ち明けた。
男性が新店舗のオープニングスタッフとして配属されたときのこと。従業員は男性含めて二人しかいないため、勤務中は一人で店を回していた。実働15時間で、店じまいする深夜2時には近所も静まり返っていた。
新店舗を切り盛りしていたが、数か月後にほかの店舗へ異動を願い出たのだった。激務が理由ではない。男性は勤務初日から店内の特定の場所から「嫌な視線」を感じていた。気にしないようにしていたが、とうとういまだかつてないほどの恐怖に襲われたのだ。
「店を出ようと店の扉に手をかけたとき、自分の右肩に誰かが手をかけようとする『気』が伝わってきたんです」
こうして男性が逃げるようにして帰ったのは【前編】で伝えた通りだ。翌日、社長に報告するも相手にしてもらえなったが、この出来事から1か月後、再び怪異に襲われた。(文:天音琴葉)
「絶対に顔を上げて女性を見てはダメだ!と何か直感で感じました」
男性は閉店作業中に棚出ししてない商品を見つけ、電気を消したまま陳列していた。非常口の緑の光だけが店内を照らしている状況だった。品出しも残り僅かになり、商品を確認しつつ歩いていたら、いつもの嫌な視線を感じる場所に女性が立っていたのだ。
「非常口の緑の光が差し込み、その女性は濃い緑色で透けておりこちらをじっと見つめています。透け具合は、緑のアクリルの下敷きで見る世界に近い感じです。ただ下を向きながら歩いていたので、視界には腰よりやや上までしか見えず、なのに視線はビシビシ感じ取れ、絶対に顔を上げて女性を見てはダメだ!と何か直感で感じました。距離は1メートルも離れていないと思います」
男性はその存在の顔は見ないようにしたものの、恐怖で身動きが取れず、何秒か何十秒か、どのくらい硬直していたのかわからなかった。ふと瞬きしたら、次の瞬間にその姿は消えていたそう。普段は防犯や施錠して帰っていたが、このときは「ガチで逃げるように帰宅しました。棚出しもその瞬間にやめて逃げました」と振り返る。
昔、店の前で信号待ちをしていた女性がダンプカーに轢かれて……
それから数日後、奇妙な話を聞いた。社長がたまたま店番をしていたとき、ある客が「よくこの店潰れないね」と話しかけてきたという。男性は休みだったため、あとから社長に話を聞いたようだ。社長がその客に理由を尋ねると、次のような答えが帰ってきた。
かつてこの物件には県内で有名な大手の服飾店が入っていた。ある日、目の前にある信号で、信号待ちしていた女性がダンプカーに跳ね飛ばされ、店の中まで吹っ飛び死亡した。服飾店は閉店し、その後はコンビニチェーンや携帯電話会社などが入ったものの、1年以内に潰れた、と客は言ったのだ。
男性は、これが深夜に遭遇した霊の正体だと思ったようだ。社長もこの話を聞いて考えが変わったようで、男性は別店舗に異動することに。店ではお祓いをし、お供え物をして供養した。その甲斐あって今のところ店では何事も起きていないそう。しかし男性はよほど怖い思いをしたようで……
「もし、自分があのとき顔を上げて女性の顔を見ていたら、どんな顔をしていたんだろう?どんな表情でこちらを見つめていたんだろう? と思い出すだけで当時の恐怖が甦ります。 顔がグシャグシャになった女性が助けを求めに手を伸ばしてきてたのでは?と思うと顔を見なかったのは正解だと信じたいです」
当時の男性は実働15時間という激務だったため、疲労から様々な怪奇現象を目にした、という可能性も十分ある。しかし、客から聞いた事故の話を考慮すると、ひょっとするということもあるだろうか。
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