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騒音やゴミ問題で「花火禁止」の公園続出、子どもが楽しめない事態に…一部自治体では「ルール」緩和

2024年07月12日 10:30  弁護士ドットコム

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夏の風物詩といえば花火だが、近所の公園で手持ち花火を楽しもうと思っても、花火自体が禁止されているところが少なくない。全面的に禁止されていないものの、事前に申請が必要とされる自治体もあり、子どもや家族が気軽に楽しめない事態になっている。


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その背景には、各地で騒音やゴミなどのトラブルがある。多くの自治体で公園での花火を禁止したり、夜間の花火を禁止する条例を設けるなど対策をとってきた。



一方で、子どもたちや家族が花火を楽しめるようにしてほしいという住民の声も根強い。そこで、近年では禁止するだけでなく、花火ができるように試験的にルールをつくり、工夫する自治体も増えてきている。



●花火を規制する自治体、「夜間禁止」の条例も

公園や海岸などを抱える自治体では、以前より花火によるトラブルに頭を悩ませてきた。



たとえば、東京都の駒沢オリンピック公園(目黒区・世田谷区)は、2021年夏から園内の花火を禁止している。禁止となる直前、弁護士ドットコムニュース編集部が現地を取材したところ、花火をしながら大音量で音楽をかけたり、奇声を上げたりして大騒ぎするグループがいくつもみられた。



現在、駒沢オリンピック公園の公式サイトには花火の禁止について、こう理由が書かれている。




「昨年に引き続き、騒音やごみの散乱・ルールを守らない花火利用の多発により他の利用者、ご近所へのご迷惑となる行為が懸念されるため、当公園内では花火のご利用はできません。何卒、ご理解・ご協力をお願いします」




また、条例を設けて花火を規制する自治体もある。



神奈川県鎌倉市は2004年から、「鎌倉市深夜花火の防止に関する条例」を施行している。この条例では、公園や海岸、広場、道路などで午後10時から翌日の午前6時まで、花火を禁止している。



鎌倉市は公式サイトで、なぜ深夜に花火を禁止したのか、その理由をこう説明する。




「近年、特に市内の海岸で、大きな音のする打ち上げ花火や、ロケット花火が、深夜から早朝まで行われるようになってしまいました。花火をやっていた人に話を聞いたところ、『海岸なら住居より少し離れているから迷惑にはならないだろう』と思ったとのことでした。しかし、海岸付近に住んでいる人たちは、眠れない、火の粉が落ちてきて危ないといったことで、毎晩のように苦しんでいるのです」




この条例は、自宅の庭などの私有地には適用されないものの、鎌倉市は「条例以前のマナーとして、花火をする際には常に周囲に気を配ることが大切です。自分の家の庭で深夜に花火をやってよいかどうかは、ご自分でよく考えてみてください。一般的には、深夜に音の出る花火は控えるべきです」と指摘している(公式サイトより)。



鎌倉市以外にも、夜間の花火を規制する条例を設ける自治体は複数あり、どの自治体も対応に苦慮している様子がうかがえる。



●一部自治体では「対象公園」「家族単位」「手持ち花火」はOKに

一方で、「子どもと花火をしたいが、どこでできるのか」という声も絶えない。そこで、東京都杉並区では子どもの夏休み期間に合わせ、7月20日から8月31日にかけて、花火について新しいルールを試行することになった。



これまで、杉並区では基本的に公園での花火は禁止されてきた。夏休み期間中のみ、青少年育成目的で学童などの団体が事前に申請すれば花火はできるものの、一般家庭にとっては、使い勝手が悪くなっていた。



公園を管理する杉並区みどり公園課の担当者は、弁護士ドットコムニュースの取材に対し、こう説明する。



「公園の利用については、長年見直しをおこなってこなかったということがあり、今年1月から2月にかけて、お子さんを含めた区民のみなさんにアンケートをおこないました。それに基づき、花火だけでなく、喫煙やボール遊び、犬の連れ込みなどについて、新しいルールの試行を始めようとしています」



アンケートは一般用(回答者288人)と子ども用(回答者672人)に分けて実施された。アンケートの中には、「公園で花火をすることについてどう思うか」という設問があり、「少人数で周囲に配慮すればOKにしてほしい」という回答が最多だった(一般用のみの回答)。



そこで、杉並区では公園の新しいルールの一つとして、指定された39公園であれば、大人を含めた少人数(5人程度)の手持ち花火を許可することとした。杉並区みどり公園課の担当者によると、トラブル防止のために事前に新ルールについて公園の近隣住民には説明をおこなっているという。



杉並区みどり公園課の担当者は、「今年は新しいルールを試行して、もしも何か区民の方からのご要望があれば、改善すべきところは改善することになると思います」と話している。



杉並区以外でも、公園のルールを緩和する自治体が増えてきている。東京都港区では原則的に公園や児童遊園での花火は禁止されているが、区民からの要望もあり、「地域の子どもたちの夏の思い出づくり」を目的に、昨夏からルールを変更した。



港区の公式サイトによると、今年は7月20日から9月1日まで、指定された公園であれば、子どもを含めた少人数での手持ち花火が可能となっている。



東京都千代田区でも公園の花火は禁止されているが、昨年9月、3日間にわたって一部公園の花火利用を試したところ好評だったという。そのため、今年は対象となる公園や期間を拡充して、花火の利用を許可している。



住民の要望に応える形で動き出した自治体。夏の風物詩が、各地で「復活」するかもしれない。