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”返金求めない”念書は「無効」 旧統一教会と信者家族の訴訟 最高裁、教団側勝訴の判決を破棄

2024年07月11日 19:20  弁護士ドットコム

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世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に高額な献金をした女性の娘が教団側に損害賠償を求めた訴訟の上告審で、最高裁第一小法廷(堺徹裁判長)は7月11日、女性が教団に献金の返金を求めないと約束した念書を無効と判断した。念書を有効と判断した1、2審判決を破棄し、審理を東京高裁に差し戻した。


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女性は旧統一教会に1億円以上を献金したが、違法な献金だったとして2017年に教団側に損害賠償を求めて提訴した。しかし、2021年に死亡したため、長女である中野容子さん(仮名、60代)が引き継いで裁判を闘った。



争点の一つとなったのが、中野さんの母が教団側との間で交わしていた「損害賠償請求を一切行わない」とする念書の有効性だった。



2021年の東京地裁、2022年の東京高裁の判決はいずれも「念書は有効」と判断したため、上告していた。





この日の最高裁判決は、念書の有効性について、当事者の属性、相互の関係、作成された経緯・目的、当事者が被る不利益の程度などを総合的に考慮して判断すべきと指摘。



本件の念書は「亡母の意思を確認する様子をビデオ撮影するなどしており、終始、家庭連合の信者らの主導の下に締結されたもの」「1億円を超える多額の献金について、何らの見返りもなく無条件に不法行為に基づく損害賠償請求等に係る訴えを一切提起しないというもの」とした上で、「亡母が締結するかどうかを合理的に判断することが困難な状態にあることを利用して、一方的に大きな不利益を与えるものであったと認められる」として「公序良俗に反し、無効である」と判断した。



もう一つの争点となっていた「勧誘行為の違法性」については、原審が「考慮すべき事情の一部を個別に取り上げて検討することのみをもって違法であるとはいえないと判断している」として、審理が不十分だと指摘した。





判決後に記者会見を開いた代理人の木村壮弁護士は「これまでの裁判所の判断を是正してくれたという意味では非常に良い判決を出してくれた」と話した。



原告の中野さんは「やっと裁判所が認めてくれてうれしい」としつつも、「高齢の母は高裁の審理中に亡くなりました。地裁でもっとまともな判決が出ていれば、母に聞かせることができた。なぜこんなに時間がかかったのか」と複雑な心境を語った。



代理人の村越進弁護士は「念書が無効だと明確になったので、今まで念書を書かされて諦めていた方もぜひ弁護団に相談してほしい」と呼びかけた。