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南アフリカ出身のケルビン・ファン・デル・リンデがドイツ国籍取得。ハイパーカー模索で気になる“アストンとの距離”

2024年07月11日 17:10  AUTOSPORT web

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フォーミュラEベルリン戦にニコ・ミューラーの代役としてABTクプラチームから出場したケルビン・ファン・デル・リンデ
 2015年からワークスドライバーを務めたアウディを2023年をもって離れ、現在はフリーランスのプロレーシングドライバーとしてDTMドイツツーリングカー選手権にABTのアウディR8 LMS GT3 EVO2を駆って参戦するなど活躍している南アフリカ・ヨハネスブルク出身のケルビン・ファン・デル・リンデ。今季はアコーディスASPチームのレクサスRC F GT3でWEC世界耐久選手権にも参戦している。

 彼は先日開催されたDTMのノリスリンク戦を控えた定例記者会見の場で、突如ドイツ国籍を取得したことを口にして話題を呼んだ。

 故郷から遠く離れ、若くして単身ドイツへ移住。現在は、所属するABTスポーツラインのファクトリー近くで暮らす。ドイツへ移住直後から、多忙なレース活動の傍らドイツ語学習を熱心にこなし、いまや記者会見やインタビューにもネイティブレベルの流暢なドイツ語で対応するケルビンに、ドイツ国籍取得への経緯やアウディを離れた今後の活動目標などを聞いた。

 なお、実の弟シェルドンはBMWワークスドライバーとして、WEC世界耐久選手権やスパ24時間、ニュルブルクリンク24時間、そして兄と同じくDTMに参戦するなど活躍しており、兄弟そろって実力派のドライバーとして高く評価されている。

■レクサスでル・マンを走り改めて実感した“夢”

──そもそもなぜドイツ国籍を取得しようと思ったのですか?

ケルビン:ドイツに暮らして早くも8年。ここでの生活がとても心地良く、すっかりもうここが故郷のように感じているので、あえて永住権ではなく、ドイツ国籍を取得し、ドイツ人になる道を選んだ。

──ドイツ国籍を取得するには経済的状況をはじめ、さまざまな審査の他、ドイツ語の口頭および筆記試験があり、その他にも移民テスト(ドイツに関する歴史・政治・地理・文化等の教養テスト)も受験する義務がありますね。外国人にとって移民テストは必ずしも容易ではないと思います。

ケルビン:そのとおりで、移民テストの内容は必ずしも簡単ではなく、自分でも勉強を重ねた他、ABTのドイツ人スタッフに協力してもらいながら、ドイツのことを学んでテストに挑んだ。昨年に移民テストを受けて審査を待っていたのだが、最近やっとその審査が通って無事にドイツ国籍を取得できた。(※審査には最長18ヶ月が要される模様)

──あなたの実弟シェルドンもドイツ国籍取得を希望しているのですか?

ケルビン:弟は僕よりも数年後にドイツへ移住してきたので、彼は恐らく来年にはドイツ国籍取得に向けて申請やテストを受けるのではないかと思っている。

──ところでドイツへ帰化した場合には、南アフリカの国籍やパスポートはドイツのパスポートと並行して保持できるのでしょうか。

ケルビン:幸いなことに、南アフリカ国籍もそのまま持てるので、自国を捨てるわけではない。

──あなたはアコーディスASPチームのレクサスRC F GT3をドライブして、今年6月に開催されたル・マン24時間レースに参戦しましたね。

ケルビン:レクサスは最新のGT3マシンとは違い、少しシステムが古いものの、ル・マンでレクサスをドライブさせてもらえたことは非常に光栄だったし、最新のマシンがそろうLMGT3クラスで少しでも前に出られるように努力をしたつもりだ。なによりもあのル・マンという場はいつも特別で、その素晴らしい経験をさせてくれたチームとレクサスには非常に感謝している。

──あなたの実弟シェルドンがBMWのLMDhマシンを駆ってWECやル・マンに参戦していることもあり、あなたももちろんハイパーカーをドライブすることを望んでいるでしょう。昨年まで所属していたアウディでは、LMDhプロジェクトが継続されていればそれをドライブするはずだったと思います。

ケルビン:もちろん、ハイパーカーへの高い興味と関心を持っているし、多方面で情報を収集しているところだ。

──もう今季も半分以上が過ぎましたので、すでにかなりのところまで話し合いは詰めている、そんな状況を予想しています。来年にはアストンマーティンがハイパーカークラスへ参入することが決まっていますね。あなたがた兄弟のマネジャーのデニス・ロステック氏は、アストンマーティン・ワークスドライバーのニッキー・ティームのマネージャーでもあり、アストンとは非常に強いつながりを持っていますが、アストンとも来年のハイパーカーのシートを巡って交渉しているのでしょうか?

ケルビン:あははは、なんだか見透かされているようだけど、いまの時点では『まだ情報収集中』ということで勘弁して欲しい(苦笑)。今年のル・マンを実際にハイパーカーと一緒に走ってみて、僕にとっては強豪ぞろいの大きく成長したハイパーカークラスに飛び込みたいと改めて実感したし、ル・マンでトップカテゴリーをドライブすることは大きな目標でもあり、夢のひとつであることは間違いない。来年、僕がどこで何をドライブしているか、報告する日を楽しみに待っていて欲しい。