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進化した「OPPO Reno11 A」が4万円台を維持できたワケ Reno9 Aでガッカリした3つのポイントを重点強化

2024年07月11日 16:31  ITmedia Mobile

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シリーズ1年ぶりとなる新モデル「OPPO Reno11 A」

 日本市場に特化した機能や仕様を取り込みつつも、持ち前の高いコストパフォーマンスで人気を博してきたOPPOのReno Aシリーズ。その最新モデルが、「OPPO Reno11 A(以下、Reno11 A)」だ。同モデルも、これまでと同様、FeliCaを搭載し、おサイフケータイに対応。マイナンバーのスマホ用電子証明書搭載サービスの利用も可能だ。防水・防塵(じん)仕様も備えている。


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 前作にあたる「Reno9 A」は、その先代にあたる「Reno7 A」の仕様をそのまま引き継いでいた一方で、Reno11 Aはプロセッサやディスプレイ、カメラを刷新。処理能力を高めつつ、ディスプレイのリフレッシュレートやカメラの画質も向上させた。価格は前モデルより2000円高いものの(メーカー直販で税込み4万8800円)、大きく値上げせずに性能をアップデートしたことにはポジティブな反響も多かった。


 一方で、Reno11 Aは、グローバルモデルとの共通化も進んでいる。もとはベースモデルが存在しない日本専用モデルだったReno Aシリーズだが、そのコンセプトを変えつつあることがうかがえる。では、Reno11 Aはどのような戦略に基づいて開発されたのか。オウガ・ジャパンで専務取締役を務める河野謙三氏と、プロダクト部 プランニングマネージャーの坂井公祐氏に話を聞いた。


●Reno9 Aから一部スペックダウンしたところで価格差を吸収


―― Reno11 Aが発売になりました。まずは改めて、その特徴をお話しいただけますか。


坂井氏 世代のReno9 Aから進化した特徴として、バッテリーやパフォーマンス、カメラがあります。まずバッテリーですが、分かりやすくいえば容量が4500mAhから5000mAhにアップし、急速充電も67Wの「SUPERVOOCフラッシュチャージ」に対応しています。パフォーマンスに関してはチップセットにMediaTekの「Dimensity 7050」を採用し、この価格帯では高いパフォーマンスを出せています。


 カメラに関してはメインカメラの画素数が上がったのはもちろん、4K動画の撮影にも対応しました。ソフトウェアアップデートでの搭載にはなりますが、生成AIを使った「AI消しゴム」も使えるようになります。Reno11 Aはミッドレンジモデルとして初めて生成AIに対応したモデルで、トータルでコストパフォーマンスが高いモデルに仕上がっています。


―― 2000円アップしましたが、値段はほぼ据え置きですね。


坂井氏 同じような値段で5万円を切るところを目指しました。Reno Aシリーズは消費者のニーズを取り入れ、より手ごろな価格で高品質なものにするというのがコンセプトです。そのため、価格はシビアに見ています。


―― とはいえ、上がったスペックが多いので、どういう魔法を使ったらこの価格帯になるのでしょうか。


河野氏 スペックという言い方だと、Reno9 Aに比べて一部ダウンしているところがあります。そういう部分で価格差を吸収しています。また、私が金融出身ということもあり、超大手企業で使っているような金融テクニックも駆使しながら価格を抑えています。超大手企業が何をやっているかというと、今後10年、20年の為替がどうなるのかを予想しながら、銀行と一緒にパッケージを組むといったことをしています。われわれは日本だと中小企業ですが、同じようなことができないかの相談をしています。それもあって、他社よりももっと安い価格で調達ができているといったこともあります。


―― ダウンしたスペックというと防水・防塵のところですね。ここは悩ましかったのではないでしょうか。


坂井氏 Reno9 AはIPX8で浸水に強かったのですが、Reno11 AではIPX5になっています。IPX5が何かというと、噴射に耐えられる性能です。これがIPX4になると、水がかかっても大丈夫というレベルになります。今回はIPX5なので、水圧がかかっても防げるということで、一般的な利用シーンでは特に問題がないという認識です。


 コストでいうと、IPX8にするには防水テープを張る必要も出てくるので歩留まりが下がります。グローバル全体で見ると、防水に対する意識がだんだんと上がってきていますが、その辺を総合的に判断してIPX5を採用しました。こういったところで、グローバルの調達メリットを生かしています。


河野氏 以前、釣りをされている方がReno7 Aを川に落とし、数時間後に気づいて引き上げた問題がなかったという口コミがありました。そういうところには対応できませんが、ほとんどの方は水深1メートルに30分端末をつけるかというと、そういう使い方はしません。撮影で使うというときにも、アクションカムを使うのではないでしょうか。何かしらのオーディオブックをお風呂で聞いたり、シャワーを浴びている最中に音楽を聞いたりというわれわれが想定しているお客さまの利用シーンは今回の防水性能で満たせるという判断です。


●海外にベースモデル「Reno11 F 5G」の存在 共通化によってコスト削減も


―― グローバルの調達メリットというお話でしたが、海外には「Reno11 F 5G」というモデルがあり、Reno11 Aとそっくりです。海外モデルとの共通化が進んだという理解でよろしいでしょうか。


河野氏 あー、お腹が痛くなってきた……何ですか、そのモデルは(笑)。


―― (笑)


河野氏 きちんとお答えすると、全ての海外メーカーがそうだとは思いますが、この形で世に出るまで、コールドモックで100種類以上のデザイン案を作っています。場合によっては200になることもあるでしょう。日本専売で販売し、日本専用のデザインを起こすことはできますが、そうすると100、200におよぶデザイン案を作成しなければなりません。(グローバルモデルとの共通化をすることで)そのコストを削れるのは大きいですね。


 OPPOはもともと中国でいろいろなラインアップを販売しています。その中で、どれをグローバルモデルにするかを決める流れがあります。例えば、Findシリーズの一部は中国限定です。日本専売のものを作るときには、グローバルで出していない中国専用のものを採用したり、そこからスペックを一部採用したりすることでコストメリットを出していました。


―― チップセットがMediaTek製なのも、グローバルモデルと共通化を進める一環でしょうか。


坂井氏 MediaTekのチップをReno Aシリーズに使ったのは確かに初めてですが、OPPO Aシリーズには採用例もあります。これは全体的なバランスを見てですが、価格帯に適したパフォーマンスを出せるということでこのチップを選定しています。


河野氏 少し歴史の話をすると、OPPOはもともとオーディオメーカーで、MediaTekとはそのころからの付き合いがありました。映像系の出力チップや音声のデコードチップなどがそうで、恐らく中国のスマホメーカーという意味だともっと関係が深く、かつ歴史が長いメーカーの1社ではないかと思います。そういった経緯もあり、Snapdragonだからキラキラしていて、MediaTekは廉価版という感覚はありません。Dimensity 7050の世代はかなり評判がよかったというのも、採用基準の1つです。


●4K動画撮影機能が復活 AI消しゴムはクラウド側で処理


―― 今回、動画が4Kに対応しましたが、それもチップの性能が向上したことが大きかったのでしょうか。


坂井氏 その部分は当然ありますが、理由としてはユーザーの声もありました。Reno7 Aや9 Aのときには、「4K動画撮影に対応していない」という声が挙がっており、そこに対応した形です。


河野氏 4K対応できるかどうかは、イメージセンサーとSoCの複合的なバランスです。Reno9 Aで対応したとしても、すぐに熱暴走してしまっては使いものになりません。そこのバランスを見て採用しました。


―― ユーザーからの声があったということですが、そんなに4Kで動画を撮る人は多いのでしょうか。


河野氏 Reno11 Aを使って4K画質で撮って純粋に楽しむ方は、確かに少ないかもしれません。想定しているユーザー層もそうですし、実際のユースケースを見てもそうです。ただし、横で撮っておき、後から縦で切り出す方は特に若い世代で増えています。4Kで撮っておき、縦の1080pで切り出すという使い方ですね。少なくとも、Reno11 Aのお客さまは、主にSNSでの縦動画を期待されています。


―― なるほど。もともと大きく撮っておけば、切り出しても画質がそこまで落ちないですからね。次に、AI消しゴムについてうかがいたいのですが、これはGoogleフォトの消しゴムマジックとどう違うのでしょうか。


坂井氏 消すことだけならAシリーズでもできますし、Googleフォトにも消しゴムマジックが入っています。一方で、OPPOは長い間AIを開発してきました。今年(2024年)の初めにはAIセンターを設立し、AIはグローバルでも重要な戦略の1つに位置付けられています。さらに、そのAIをハイエンドのユーザーだけでなく、幅広い人に普及させたいということで、ミッドレンジのユーザーにも生成AIを体験していただけるよう、Reno11 Aに搭載することになりました。


 仕組みとしては、画像をクラウド側で処理しています。エッジAIではありませんが、そうすることで、端末の処理能力に依存せず、高性能な背景の生成が可能になります。「消しゴム」というと他社と同じような名称ではありますが、より高精度で、自然な消し方ができるようになりました。


河野氏 画像処理という意味だと、OPPOには一日の長があります。かつてフラグシップのFindシリーズには、独自の画像処理チップ「MariSilicon」が搭載されていました。いろいろあって、MariSiliconのチームは解散になってしまいましたが、知的財産自体は残っています。そういったところを生かしつつ、OPPO独自の画像処理エンジンを入れていけるのは大きいですね。他社と比べても、OPPOのAI消しゴムは自然な仕上がりになると思います。


―― AI消しゴム以外でAIを使った機能は、他に何がありますか。


坂井氏 生成AIという意味だとAI消しゴムだけですが、顔を補正するAIビューティーや、AIクリッピングという写真を長押しするだけで切り抜きができる機能にもAIを使っています。


河野氏 他にも、バックグラウンドでのOSやキャッシュデータの最適化、インデックス化にもAIを使っています。アプリケーションの圧縮、復元にもAIの処理を入れています。


●長持ちの訴求からコスパの訴求に原点回帰


―― OSの最適化という意味だと、Reno9 Aまでは長く使えることを打ち出していて、「ナガモッティ」というキャラまでいました。ナガモッティがいなくなってしまいましたが、長持ちしなくなったのでしょうか(笑)。


坂井氏 システムの長持ちやバッテリーの長持ちということ自体は、継続的にやっています。


河野氏 「OPPO=長持ち」というイメージの訴求は2年やってきて、もういいかなということで今回はやっていません。よりビジネス的な答え方をすると、お客さまの認知もある程度得られたのでナガモッティは今回使っていません。


―― そういう意味だと、今回はよりコストパフォーマンスを高めるという原点回帰のようなところはありますね。


河野氏 今回は画面の占有率も上がり、リフレッシュレートも上がっています。分解してお見せしたいのですが、バッテリーも増えつつ、薄くなっているのもポイントです。


―― デザインに関してですが、今回OPPO Glowはグリーンだけなのでしょうか。


坂井氏 ダークグリーンがOPPO Glowで、コーラルパープルは違います。こちらは、磁性インクを使って、見た角度で表情が変わるようにしています。


―― 日本では、Reno7 AでOPPO Glowが採用されました。この際に、日本向けのデザインとして取り入れられた経緯があったかと思いますが、今回のダークグリーンはそれと非常に近いような印象もあります。日本向けの企画が、グローバルに広がっているということでしょうか。


河野氏 文化の逆流というほどではありませんが、Reno7 Aのころから、日本的なスペックの要求やデザイン、カラーリングなどはだいぶ(グローバルに)入るようになりました。Reno5 A以前のモデルだと原色系が強いイメージだったと思いますが、日本にお住まいの方は色に対する要求が厳しい。例えば、JIS規格もそうですが、一言で白と言っても20通り以上のパターンがあります。そのため、どの色がいいかという点で、日本の意見は重要視されています。


●Reno9 Aを買ってガッカリしたポイントに「充電性能」


―― 今回は、67Wの急速充電にも対応しています。やはり、ここはOPPOとして対応してほしいという声は多かったのでしょうか。


坂井氏 急速充電自体、OPPOは10年以上前から取り組んできています。昨年発売した「Reno10 Pro 5G」では、ソフトバンクの神ジューデンに対応しました。また、「A79 5G」もローエンドながら、33Wの急速充電に対応しています。ラインアップ全体で急速充電に対応し、「OPPO=急速充電」という認識になるよう、継続的に力を入れています。


 今回はSUPERVOOCで67Wになるだけでなく、USB PDのPPSでも55Wで充電ができます。既に充電器をお持ちの方であれば、すぐにその効果を得られるようになりました。


河野氏 Reno9 Aユーザーから取ったアンケートで、「買ってガッカリしたポイント」がありました。こうした調査は毎年やっているのですが、今回は主に3つに集約されます。その1つ目が充電性能でした。


―― 他の2つも教えてください。


河野氏 もう1つはカメラで、今回はそこも重点的に底上げしています。3つ目はSoCが何も変わっていないというご意見でした。


―― とはいえ、ユーザーは毎年買うわけではありません。チップが同じでも、そこまで困らないとは思いますが。


河野氏 もう1回同じSoCで出してみようかという話はありましたが(笑)。ただ、OPPOをお使いの方の中には、家族で使われる方が多くいます。1年前に買って、すごくよかったのでお母さんにも同じものを買ってあげようと思い、最新モデルを調べたらチップが同じだった……そこにアンケートの依頼が届くと、「何も変わっていない」と答えるのだと思います。


 現状で何か不満があるわけではなくても、買うとなると調べたり、ソーシャルやネット上の意見を気にしたりする方もいます。もちろん、大多数の方は気にしていないとは思いますが……。


●ガイドライン改正の影響なし ハイエンドは「冬を楽しみに」


―― 価格についてですが、先ほど、5万円以下に抑えるという話がありました。それとは別に、昨年末、割引の上限が4万円(税別)変更になりましたが、その影響は何かありましたか。


河野氏 われわれに対しての影響は、特にありませんでした。OPPOはミッドレンジが強いメーカーで、もともと4万円台半ばの製品を(多く)出していたからです。フラグシップモデルのFindシリーズも、もう3年近く出していません。一方で市場を見ると、20万円の製品もありますが、ここから4万円引いたとしても、あまりインパクトがありません。そこへの最適化という意味ではハイエンドに近いミッドレンジがあり、それが先ほど挙げたReno10 Pro 5Gでした。キャリアは買い替えプログラムに力を入れていますが、そういった動きも今後どうなるのかは注視しています。


―― 今ハイエンドのお話がありましたが、他社もカメラ機能が優れたハイエンドモデルをオープンマーケットに投入し、話題を集めています。技術力やブランドを見せるという意味だと、やはりハイエンドモデルは必要ではないでしょうか。


河野氏 昨年、Reno10 Pro 5Gが発表されたときに、24年度はラインアップの構成を見直すことに力を入れるとお話ししました。その経営方針自体は変わっていません。まだ何を出すかはお話しできませんが、今年の冬ぐらいをぜひ楽しみにしていてください。


●取材を終えて:Reno11 AはOPPOの戦略を転換したモデル


 グローバルモデルとの共通化が進み、防水・防塵仕様はグレードダウンしたReno11 Aだが、その分、5万円以下という価格と処理能力の高さを両立させている。日本向けのカスタマイズもなくなったわけではなく、おサイフケータイにはしっかり対応している。日本市場を攻略する上で、日本に特化した端末の重要性は高かった一方で、グローバルモデルにその考え方が浸透すれば、あえて特別なモデルを開発する必要がなくなる。


 むしろ、コストパフォーマンスの高さを生かすなら、グローバルモデルと共通化されていた方が有利になる。その意味で、Reno11 Aは、単なるReno Aシリーズの後継機ではなく、OPPOとして戦略の転換を図った端末といえそうだ。このモデルがどう評価されるかで、今後の方針も変わってくる可能性がある。その意味では、発売後の動向にも注目しておきたい1台といえそうだ。