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トヨタWRC育成2期生の山本雄紀がERCエストニアで12位完走。小暮ひかるは骨折のため欠場に

2024年07月10日 12:10  AUTOSPORT web

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山本雄紀/マルコ・サルミネン組のトヨタGRヤリス・ラリー2 2024年ERC第4戦エストニア
 TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムの2期生である山本雄紀が、7月5日から7日にかけて、エストニアで開催されたERCヨーロッパ・ラリー選手権第4戦『ラリー・エストニア』にトヨタGRヤリス・ラリー2で参戦し、初出場の高速グラベル(未舗装路)ラリーで全ステージを走破。総合12位でフィニッシュした。

 ラリー・エストニアは近年、WRC世界ラリー選手権のレギュラーイベントとして開催されていたが、2024年はERCの第4戦として開催されることとなった。ERCではGRヤリス・ラリー2を含むラリー2マシンで競うカテゴリーが最高峰に位置づけられており、欧州の非常に速く才能豊かなドライバーたちがステアリングを握り、毎戦激しいトップ争いが繰り広げられている。

 そんなERCの一戦として行われたラリー・エストニアのステージは非常にハイスピードであり、流れるような高速コーナーが続くという点でラリー・フィンランドと多くの共通点がある。しかしフィンランドと比較すると全体的に道幅は狭く、テクニカルなセクションも多く存在するという点が特徴だ。また、路面は比較的軟らかく、砂状のセクションも多いため掘れやすく、同じステージを2回目に走行する時には深く、大きなわだちが刻まれた路面での戦いとなる。

 山本にとってエストニアは、ハイパワーな4WDマシンであるラリー2車両で臨む初めての超高速グラベルラリーだったが、彼と同じくチャレンジプログラムの2期生である小暮ひかるは前戦のWRCサルディニアで骨折した鎖骨の回復過程にあるため、残念ながら今回は競技に出場することが叶わなかった。ただし、小暮もラリー前のレッキには参加しており、まもなくテストや競技へ復帰できる見込みだ。

■多くの経験を得た一戦に

 ラリーは金曜日の夕方に『タルトゥ』でのスーパーSSで競技がスタートし、土曜日は9本のステージが行われた。山本はコドライバーのマルコ・サルミネンとともに20台のラリー2最後方となる20番手で出走。非常にバリエーション豊かなコンディションで、多くの経験を積むこととなった。

 とくに4本のステージを2回目に走行した際には、路面に深いわだちが刻まれ、非常にチャレンジングなコンディションでの走行を経験。それでも山本は数ステージで好タイムを記録し、総合13番手でデイ2を走り切った。

 最終日の日曜日は出走順が逆になり、3番手スタートとなった山本は、前日とは異なるコンディションを経験することに。出走順が早いドライバーたちは路面の表層を覆う、滑りやすい砂利“ルーズグラベル”を掃き飛ばしながら走行することになる。山本もそのひとりとして滑りやすい路面での対処方法を学んだ。また、ステージの一部には泥状の路面もあり、とくに最終のパワーステージでは雨が土砂降りになったことでコンディションは非常に難しいものとなった。それでも山本は問題なく最終ステージを走破し、総合12位で初出場のラリー・エストニアを終えている。

■まだまだ道は遠く、やるべきことは多い

 TGR WRCチャレンジプログラムのインストラクターを務めるユホ・ハンニネンは、山本のラリー・エストニア初挑戦を次のように振り返った。

「このようなステージのキャラクターや地域的な特性が、(山本)雄紀にとってより馴染みのあるものであることは分かっていたが、コンディションは本当にトリッキーで、かなり頻繁に変化していた。このラリーを完走したことで、雄紀はさまざまなコンディションで多くの良い経験を積み、長い距離を走ることができた」

「忍耐強く、充分に制御されたスピードで走れるようになったのは良いことだが、まだ学ぶべき点も多くある。それと同時に、この厳しい戦いの場でもっとも速いドライバーたちのレベルを知り、まだまだ道は遠く、やるべきことが多くあることを実感したと思う」

 山本自身は今回のラリーを走破したことに対して「満足」していると延べ、次戦のラリー・フィンランドに向けて「良い準備ができた」と語った。

「今回はとても良い戦いができたと思います。ここ数戦はあまりうまくいかなかったので、このラリーを良いフィーリングで終えたいと思っていましたが、うまくいったと思います。とくに、日曜日は本当にトリッキーなコンディションでしたが、それでも全ステージを走り切ることができましたし、それこそが自分にとってもっとも重要なことだったので、とても満足しています」

「土曜日は、天候的な面に関しては問題なかったのですが、路面には非常に大きなわだちがありました。つねに目を光らせてラインを追い、即座にアジャストするいい練習になりました。そして、クルマはわだちにうまくマッチし、信頼して走ることができましたし、非常に堅実に一日を戦うことができたと思います」

「日曜日は、普段とはやや異なる状況でした。路面を覆う大量のルースグラベルを掃き飛ばしながら走る必要があったのですが、それもまた良い経験になりました。それほどハードにはプッシュしなかったのですが、それでもペースは悪くなかったですし、安定していました」

「ERCは競争が非常に激しいので、上位選手のオンボード映像のデータを分析して改善につなげることができます。全体的には、ラリー・フィンランドに向けて良い学習の機会になりましたし、良い準備ができたと思います」

 WRCチャレンジプログラムの2期生、山本と小暮の次戦は、8月1~4日にフィンランドで開催されるWRC世界ラリー選手権第9戦『ラリー・フィンランド』だ。彼らがこのWRC屈指の超高速グラベルラリーに出場するのは2023年に続いて二度目となる。昨年は比較的ローパワーなラリー4車両での出場であり、ラリー2車両でのWRC2出場は今回が初めて。

 また、現在フィンランドのユバスキュラを拠点に活動している彼らにとって、同地を中心に開催されるこのラリーは第二の“ホームイベント”ともいえる一戦となる。