2024年07月10日 09:50 弁護士ドットコム
親の遺産をきょうだいで分けたものの、こんなはずでは…という事態におちいることも少なくありません。弁護士ドットコムにも「相続のやり直しをしたい」という相談が寄せられています。
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相談者は2年前に父が亡くなり、相談者の女性と弟2人で相続しました。長男にあたる弟は、すでに父の土地に家を建てていたことから、そのまま土地を相続したそうです。女性と次男にあたる弟は、納得はいかなかったものの、いさかいを避けるため、500万円ずつ受け取り、手続きを終えました。
ところがその後、長男が妻と不仲になり、家から追い出されてしまったというのです。妻は次男が訪ねても家に入れてくれず、そこに住み続けてるとのことです。女性は「このままでは、長男が相続した土地が妻のものになってしまうのではないか」と心配しており、「長男が住んでいないのなら、相続をやり直したい」と考えているそうです。
果たしてきょうだいは、父の残した土地を取り戻せるのでしょうか。相続問題に詳しい野中辰哲弁護士に聞きました。
——このきょうだいのように、相続に後悔が残った場合、あらためてやり直しをすることはできますか。
相続人全員が、すでに行った遺産分割協議を合意解除するのであれば、改めて遺産分割協議をやり直すことはできます。
ただし、全相続人で遺産分割協議を合意解除した場合、当初の遺産分割協議で取得した者から新たに取得した者への贈与として扱われるため、贈与税が発生する可能性があります。
——長男が相続した亡父の土地に、このまま妻が住み続けた場合、妻の所有になるのでしょうか。また、長男と妻が離婚をした場合は、財産分与の対象になりますか。
配偶者が死亡し、かつ、特に遺言書がない場合は、もう一方の配偶者に法定相続分である2分の1の割合で遺産の承継が認められています。
本件でも、長男が、妻と離婚せずに死亡した場合は、法定相続分での承継が認められ、遺産分割協議の結果によっては、亡父の土地を承継する可能性があります。
後半の質問についてですが、婚姻後に、夫婦の一方に相続によって取得した財産がある場合、その財産は特有財産となり、離婚の際の財産分与の対象外となります。
したがって、本件でも、長男が相続によって取得した亡父の土地は、特有財産に該当し、仮に妻と離婚したとしても、財産分与の対象外となります。
——現在、直接の関係者ではない姉弟が亡父の土地を「長男の妻に渡さない」ためには何かできることはありますか。
きょうだいの関係が良好であるならば、長男と相談のうえ、遺言書を作成してもらうという方法が考えられます。
遺言書にて、長男が所有している亡父の土地について、姉または弟に相続させる旨の遺言書を作成してもらうという方法が考えられます。ただし、この方法だと、妻に遺留分が残るので、注意が必要です。
または、長男と姉または弟との間で、亡父の土地について、贈与契約を締結することも考えられます。ただし、この方法の場合、贈与税が発生する可能性があるので、注意する必要があります。
【取材協力弁護士】
野中 辰哲(のなか・たつあき)弁護士
相続問題をメインに取扱っており、年間50~100件ほどの、ご相談、ご依頼を受けております。豊富な経験とノウハウを活かしてクライアント様に最適な解決策を提案いたします。
事務所名:アリアンサ法律事務所
事務所URL:https://souzoku-alianza.com/