2024年より欧州を拠点にFIA F2に挑む宮田莉朋(ロダン・モータースポーツ/TGR WECチャレンジプログラム)にとって、第8戦シルバーストンは前戦に続いて初めてのコースでの一戦となった。
F1発祥の地であるシルバーストンは、イギリスに本拠地を構えるチームや、イギリス出身ドライバーにとってはまさに“庭”のような存在。経験の差が大きく出る状況だけに、宮田にとってシルバーストン戦は厳しいものになると思われた。
さらに、オリバー・ベアマン(プレマ・レーシング/フェラーリ育成)、アイザック・ハジャル(カンポス・レーシング/レッドブル育成)、フランコ・コラピント(MPモータースポーツ/ウイリアムズ育成)といった、3人の現役FIA F2ドライバーに至っては、F1イギリスGPのフリー走行1回目(FP1)にも出走し、ドライ路面のシルバーストンをたっぷりと走り込んでいた。
「僕も日本でスーパーフォーミュラ・ライツに乗りながら、同じ週末に同じサーキットでスーパーフォーミュラに乗った経験があるので、走行する時間が長いことはアドバンテージになることは知っています」と、宮田。
宮田が想像していたとおり、F1のFP1を走った3人ドライバーはいずれも予選をトップ5以内で終えた。また、FP1にレッドブルから出走したハジャルに至っては、このシルバーストンでFIA F2キャリア初となるポールポジションを獲得している。
今年のシルバーストンで行われたFIA F2は、フリー走行から雨が降ったりやんだりする典型的なブリティッシュウェザーに見舞われた。セッションによって路面コンディションがまったく異なる状況では、ドライバーの能力がより問われる。
「シルバーストンでの走行は初めてで、しかもフリー走行は天気が荒れたなかで行われました。予選は、あと少しのところでトップ10を逃してしまいましたが、トラフィックもあるなかでのタイムだったので、少し運がなかったです。ただ、初走行のなかではやりきりました」
宮田は11番手に終わった予選をそう振り返った。10番手のアンドレア・キミ・アントネッリ(プレマ・レーシング/メルセデス育成)とのタイム差は0.007秒差。予選9番手となったチームメートのゼイン・マローニ(ザウバー育成)とも約0.1秒。初コースが続くヨーロッパラウンドで宮田は着実に成長を見せていた。
ただし、それが結果となって見えにくいのが、FIA F2の評価の難しいところでもある。土曜日のスプリントレース(決勝レース1)はその良い例だった。
スプリントレースは予選トップ10のドライバーがリバースグリッドで戦う。つまり、宮田は0.007秒差でリバースポール逃していた。果たして、赤旗も出された荒れたスプリントレースで宮田は10位でフィニッシュしたが、優勝したのはアントネッリで、2位にはマローニがそのまま入った。つまり、宮田は予選で渋滞に巻き込まれていなければ、FIA F2で初優勝を飾っていた可能性が十分あった。
しかし、宮田はそのことには口にすることはなかった。それよりも、スプリントレースで得た経験と課題を整理していた。
「スプリントレースは雨のため、ローリングでスタートが切られました。ローリングスタート自体は日本のスーパーGTで経験していたのですが、FIA F2では初めて。また今回は僕にとって初めてのウエットタイヤを履いてのレースでもありました」
「ピレリのウエットタイヤを履いて初めてレースしたわけですが、クルマのバランスやマネージメントが結構難しかったです。タイヤのデグラデーション(性能劣化)に対して、クルマのセットアップが噛み合わないと難しいなという印象を受けました」
スプリントレースを制したアントネッリと、0.007秒差でリバースポールを逃して10位に終わった宮田。その差は、スプリントレースの結果ほど大きくはなかった。