トップへ

SNSにはびこるフェイク情報 加害者にならないためにはどうすればいい?

2024年07月09日 07:21  ITmediaエンタープライズ

ITmediaエンタープライズ

防衛省・自衛隊による「認知領域を含む情報戦への対応」(出典:防衛省のWebサイト)

 サイバー攻撃の脅威は目前にまで迫っています。もはや情報漏えいは当たり前の時代になり、「国民全員分の情報が漏えいしているから脅迫に値しない」というのもジョークにならないかもしれません。個人でできることは限られているため、今後は利用していないサービスは忘れずに退会し、個人のデータがきちんと削除されていることを天に祈るしかありません。


【画像】あなたも気づかずフェイクニュースの“加害者”になるかも【全1枚】


 昨今、ランサムウェアに関連したニュースが世間を騒がせていますが、これに加えて筆者が最近注目する脅威が“ディープフェイク”です。今回は同時期に幾つか出てきた資料を基に、あなたとあなたの家族、大事な人たちを襲う可能性があるこの脅威について考えていきましょう。


●ディープフェイクはひっそりと浸透している?


 まずは、セキュリティベンダーのトレンドマイクロによるデータを見ていきます。2024年7月3日に公開された「ディープフェイクに関する国内実態調査2024」では、18歳以上の男女2585人を対象に、ディープフェイクをテーマにアンケートを実施し、その結果をまとめています。


 調査によると、“ディープフェイク”というキーワードの認知度は、「よく知っている」(15.7%)、「名前だけ知っている」(31.8%)と約半数近くが「知っている」と答え、この脅威がより浸透していることが分かります。しかし「ディープフェイクの悪用に遭ったことがある」と回答した割合は、アンケート対象者全体の14.6%でした。読者の皆さんはこの「1割強」という数字を「多い」と思いましたか。それとも「少ない」と感じたでしょうか。


 筆者はこの数字に非常に危機感を覚えました。トレンドマイクロも同様の懸念を抱いているのか、項目として「ディープフェイクを、ご自身で本物かどうかを判断し見分けることができると思いますか」という設問も調査しています。


 ここでは「分からない」(36.6%)、「恐らく見分けられないと思う」(31.8%)、「見分けられないと思う」(15.6%)と、回答者の大半が情報の真偽を判断する自信がないと回答しました。


 調査結果をまとめると、多くの回答者は「ディープフェイクは知っているが、自分で判断する自信はなく、そして自分は被害に遭っていないと考えている」ことが分かりました。何となく想像通りの結果ではありますが、現状ではディープフェイクによって特定の主張をひっそりと浸透させることも可能かもしれません。


●国家も懸念するディープフェイクの影響


 特に米国では、2024年に大統領選挙が開催されることから、SNSなどによる“情報戦”の手法に注目が集まっています。この影響は大きく、国家も対策が必要だと考えています。日本においても、防衛省は「認知領域を含む情報戦への対応」という、仰々しいタイトルでディープフェイクやフェイクニュース対策に関する情報を公開しています。もはやこれは戦争の新たな手法の一つなのです。


 何だか大きな話になってきましたが、私たちにできることはないのでしょうか。そのヒントが、日本スマートフォンセキュリティ協会(以下、JSSEC)の利用部会が公開した「スマートフォン利用シーンに潜む脅威Top10」(以下、脅威Top10)にあるかもしれません。


 2024年7月、JSSECが公開した脅威Top10のガイド資料として「フェイクニュース ・ディープフェイク 対策」が公開されました。このガイドでは、スマートフォンの利用者や情報に焦点を当てて、スマートフォン利用で注意すべき“フェイク”にどう対抗するかのポイントをまとめたものです。


 特にこの資料では、フェイクニュースを取り巻く“情報”と“人”をまとめた相関図が掲載されており、その中で私たち「人」の部分で、何を自覚的にアクションしなければならないかがまとめられています。


 フェイクニュース対策は大変困難ですが、まずはそういったものが存在していること、全ての情報に対して「これはフェイクニュースかもしれない」と考え、自らが間違った情報を拡散する側に立つ可能性があることに自覚的でなければなりません。下図は、誰もが“発信者”である時代に、非常に重要なポイントがまとめられていると感じました。この図だけでなくレポート全編を参照することをお勧めします。


 SNSでは、真偽不明の情報が今日もたくさん回ってきます。かつてはITに詳しい人だけが使っていたサービスももはや公の場として考えられ、そこにある1タップの機能利用が誹謗中傷と捉えられる時代です。“フェイク”はすぐ目の前にあり、それに自覚的でなければ、あなたも悪のエコシステムの一部になり得ます。対処は難しく、単純な判別方法もありません。だからこそ、シェアする前にまずはいったん立ち止まり、フェイクを取りまく現状を思い出しながら、情報収集に最大限の注意を払っていくしかありません。


筆者紹介:宮田健(フリーライター)


@IT記者を経て、現在はセキュリティに関するフリーライターとして活動する。エンタープライズ分野におけるセキュリティを追いかけつつ、普通の人にも興味を持ってもらえるためにはどうしたらいいか、日々模索を続けている。