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『呪術廻戦』五条悟や宿儺にも勝てる?  髙羽史彦が“作中最強キャラ”と呼ばれる理由

2024年07月08日 08:00  リアルサウンド

リアルサウンド

©芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会

※本稿は『呪術廻戦』単行本最新刊までの内容を含みます。ネタバレにご注意ください。


  7月4日、芥見下々によるダークファンタジーマンガ『呪術廻戦』の最新刊となる27巻が発売された。同巻には第237話から第245話までのエピソードが収録されており、お笑い芸人・髙羽史彦の華々しい活躍がまとめられている。


(参考:【写真】『呪術廻戦』リアルに再現した五条悟のフィギュアを見る


  髙羽といえば、ファンのあいだで「作中最強クラスの呪術師」とも囁かれてきたキャラクターだ。なぜそこまで高く評価されているのか、最新刊の内容にも触れつつ分析していこう。


 そもそも髙羽は「死滅回游」の影響によって術式を発現させた覚醒タイプの泳者(プレイヤー)。元々は売れないお笑い芸人としてくすぶっていた35歳の男性で、今もその気質は変わっておらず、いつでも人を笑わせることに全身全霊を捧げている。


 術式の「超人」(コメディアン)は、自身が「ウケる」と思ったイメージを現実のものとする能力で、作中のナレーションでは「五条悟にも対抗できうる術式」とそのポテンシャルの高さが仄めかされていた。


  これまでは黄櫨折相手に戦闘を行う場面があったが、途中で幕切れになったこともあり、消化不良だった印象。27巻で描かれた羂索とのタイマン勝負において、初めてその真価が発揮されたと言えるだろう。


  羂索といえば1,000年以上にわたって呪術の研鑽を積んできた実力者で、薨星宮(こうせいぐう)での戦いでは特級術師・九十九由基と呪術界の大物・天元、1級術師相当の脹相が3人がかりで挑んで敗北を喫したほど。ほぼ最強クラスの術師と言えるが、髙羽はそんな相手と対等にやり合ってみせた。


  矢継ぎ早に繰り出される呪霊操術による攻撃をすべて無効化し、とっておきの特級呪霊すらも一撃で撃破してしまう始末。羂索は自分が培ってきた呪術のノウハウが通用しない相手に、驚愕を抑えきれない様子だった。


  たんに現実を面白い方に改変するだけでなく、相手の思考まで乗っ取ることができる強制力が「超人」の強み。髙羽本人が芸人としての自信さえ失わなければ、戦場を完璧に支配できるという、まさに異次元の術式だ。


ギャグマンガとお笑いへの愛が生んだ規格外の能力者


 髙羽の術式は、“面白い方が強い”というルールを強制する能力であり、いわば現実を“ギャグ時空”に塗り替える禁じ手。『ワンパンマン』のサイタマや『とっても! ラッキーマン』のラッキーマンのように、通常のバトルマンガのルールから逸脱する規格外の能力者だ。その支配力が例外なく発揮されるのだとすれば、理論上は両面宿儺や五条悟であっても、髙羽を追い詰めることは難しいだろう。


 唯一の弱点は、「超人」の発動条件が芸人としての自信に基づいていること。「自分は面白くないのかもしれない」と髙羽の気持ちが揺らぐことで能力が弱体化するので、たまたまお笑いに詳しく、即興ギャグのセンスをもつ羂索は天敵だと言える。もし羂索がいる岩手ではなく、新宿で宿儺と戦ったとしたら、まさかの大金星が実現していたかもしれない……。


  ところで、なぜそこまでお笑いを扱う術式が強力なものとして描かれているのだろうか。その理由は、作者の芥見がお笑い好きであることと無関係ではないはず。お笑いが持つ力を心から信じているからこそ、その価値観を写し取った“最強のお笑い芸人”が完成したのだと考えられる。


  髙羽の戦闘描写には、お笑い知識がこれでもかと活用されており、売れない芸人の心理をリアリティたっぷりに描き出すことにもつながっている。ちなみに髙羽は『笑う犬』世代でセンターマンの格好をしているが、芥見自身は『あらびき団』世代であることを『漫道コバヤシ』(CSフジテレビONE)に出演した際に語っていた。


  また芥見は『週刊少年ジャンプ』(集英社)が生んだギャグマンガの金字塔『ボボボーボ・ボーボボ』の大ファンとしても有名で、髙羽と羂索の戦闘を描いた一連のエピソードは、アニメ『ボボボーボ・ボーボボ』の主題歌『バカサバイバー』にちなんだサブタイトルが付けられている。また27巻の表紙でも、髙羽が『ボボボーボ・ボーボボ』の第1巻をオマージュしたポーズをとっており、その影響力の大きさを感じさせる。


  ある意味、髙羽は芥見の作家性がもっとも爆発したキャラクターなのかもしれない。その活躍が今後アニメで描かれる日が来ることも楽しみだ。


(文=キットゥン希美)