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【漫画】最強の少子化対策は“恋の成功率を上げること”? 男子高校生の恋愛観を矯正するラブコメがスゴい

2024年07月06日 17:50  リアルサウンド

リアルサウンド

『恋は忍耐』より ©川西ノブヒロ/集英社

 2023年、東京都の合計特殊出生率が0.99を記録。これは都知事選でも争点のひとつだが、子育て支援よりももっと大事なことがある。それは「恋の成功率を上げること」ーーそう言い切るヒロインが高校生男子の恋愛観を矯正するコメディ(?)漫画が『恋は忍耐』だ。


(参考:漫画『恋は忍耐』を読む


 『ウルトラジャンプ』で連載中の本作、その序盤を切り抜いた『クラスにただひとりの女の子に恋をする話』がXで人気となっている。自身の過去の恋愛をベースにしたというユニークな世界観について作者・川西ノブヒロさん(@nkawani)に話を聞いた。


――現在、約1.5万のいいねが集まっていますが、作者としてはいかがでしょうか。


川西ノブヒロ(以下、川西):トリッキーな漫画で、ちゃんと読んでもらえるか不安だったので嬉しかったです。フラれる男の子に感情移入して読んでくれたのでは。


――本作の着想について教えてください。


川西:男の子がフラれる話を描こうと考えたのが最初でした。というのも最近SNSで流れてくるイチャイチャ系のラブコメを楽しく読みながらも、どこかで「恋愛はこんなに上手くいかないよ」と話に入り込めない自分がいたからです。それをフォローするような漫画を描ければと。


 でもひとりの男の子が毎回フラれる物語だと読むのも描くのも難しいので、毎回違う男の子がフラれていくのはどうかというアイデアが出たんです。また「少子化」や「AI恋愛脳」という設定は当時の『ウルトラジャンプ』編集長が提案してくれたアイデアが基になっています。


――編集長が直々にアイデアを出すのは興味深いです。


川西:ネームを読んで、すっと意見をくださる方でしたね。当初は「少子化」と「AI」という時代感のあるアイデアをどう作品に入れるか迷ってしまったのですが、最終的に作品に足りていなかったピースをこのアイデアが埋めてくれました。SF作品としても筋を通すことができたと思います。


――劇中の男の子達の失恋シーンでヒロインが発する決めゼリフ、「失礼じゃないですか?」から始まる異空間の様な演出描写もそれまでの展開とギャップがありました。


川西:これも悩みました。当初は「普通に印象的なフラれ方をしてショックを受ける」という予定だったのですが、それだと編集部のOKが出なかったんですよ(笑)。それを受けて妄想や幻覚でもいいから『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』や『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』のような派手な演出にしようと。あのシーンのおかげで怖さや色っぽさなどの味が出せるようになりましたね。編集の方々の意見には助けられています。


――フラれていく男子たちの傾向は世の恋愛観を反映しているのでしょうか?


川西:周囲の人を参考にもしていますが、基本的には自分の人生の反省です(笑)。「こういう恋愛をしたな」「こう言えばよかったな」と考えてそれを男の子達に反映していく形。僕は恋愛に揺さぶられてきた人間なので、この作品の主人公・盆踊(ぼんよう)君のような恋で動じない友人が実際に身の回りにいて、羨ましかった。そういう想いも作品に反映しています。


――作画で意識している点は?


川西:私自身、こういった漫画を描くのは初めてです。とはいえその中でもラブコメディとして重要なので、やっぱり女の子を可愛く描きたい、印象的な絵を入れたい、というのはありますね。本作がラブコメかどうか賛否があるとは思いますが(笑)。


 その結果、妙に描き込みが多いコマとかもあったりします。解りやすい例でいうとヒロイン・一渡瀬七日(ひととせなのか)の自己紹介は「ここで彼女の魅力と不穏さをお見せできるよう頑張らないと」と思いながら全力で描きました。


――単行本も発売になっていますが、こちらについては?


川西:1巻が発売されて、色々な人に読んでもらえた実感があります。また、物として手に取れることもシンプルに嬉しいですね。これからは盆踊(ぼんよう)君と一渡瀬(ひととせ)の対決など色々な展開を予定しているので楽しみにしていただけたら。


(小池直也)