アップグレード投入がうまくいかなかったF1第10戦スペインGP。新型と旧型のハイブリッドで臨んだ第11戦オーストリアGP。ともにノーポイントに終わった角田裕毅(RB)は、第12戦イギリスGPではスペインGPとオーストリアGPのハイブリッド版の空力パッケージで挑むことにした。
「スペインGPで失速した原因は、完全にはつかめていませんが、だいたいの理由はわかっています。アップグレードが機能しなかったことは残念な結果ですが、アップグレードを失敗したことで、今後に向けて、もっといろんなことを学ぶことができたという点ではこの状況は決してネガティブなものではなく、いい収穫だったと思います」
角田はそう言って、チームのアップグレード投入失敗に理解を示した。
ただし、スペインGPでのアップグレード失敗で、現時点でライバルとの競争において、大きな後れをとってしまったことは間違いない。アップグレード投入ごと、あるいはグランプリごとに着実にマシンを進化させていく現在のF1で、2戦続けてアップグレードが想定通り機能しなかったことは、開発競争において後退を意味する。
イギリスGPにRBが持ち込んだアップグレードはひとつ。しかも、それはヘイローだった。F1の空力で最も大きなダウンフォースを生むのはフロントウイング、リヤウイング、そしてフロア。ヘイローによる効果は限定的だ。
これに対して、RBとコンストラクターズ選手権6位の座を争っているハースは、今回シルバーストンに全チーム中、最多となる7つものアップグレードを投入してきた。
いまあるパッケージの性能を最大限発揮したかった初日。フリー走行1回目の開始直後に角田はいきなりスピン。貴重な走行時間を失ってしまった。
「FP1の序盤でスピンしてしまい、理想的な1日とはなりませんでしたが、もう終わったこと。振り返っても、仕方がない」
事実上、角田にとって最初のセッションとなったフリー走行2回目は16番手に終わった。
「想像以上にかなり苦戦を強いられてしまいました。クルマからあとコンマ数秒は引き出せるといいんですが……」
これに対して、ハースのニコ・ヒュルケンベルグは初日4番手のタイムをマークした。
「ライバルたち、特にハースが大きくステップアップしてきたので、僕たちはもっとクルマを進化させなければなりません。Q3に進出するためには、もう少しパフォーマンスを見つける必要がありますが、できる限りのことはしたいです。限られた走行のなかでいいデータを得られたので、それを見直して、明日に向けてセットアップを煮詰めていきたい」
F1発祥の地、シルバーストン。そこで吹く風は初日の角田とRBにとっては、明らかに逆風だった。