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子どもが「スマホゲーム」に無断課金、親は取り返せる? 「3年間で600万円」という相談も

2024年07月06日 09:30  弁護士ドットコム

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中学1年生の息子がスマホで70万円以上課金していたことが発覚し悩んでいるという保護者の投稿が、このほどXで話題となった(投稿は現在、非公開)。


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弁護士ドットコムの法律相談にも、「小学生の頃から約3年で610万円ほどスマホゲームの課金で浪費された」「孫が私のスマホでゲーム課金をしてしまい、多額の請求をされた」などの相談が多数寄せられている。



冒頭の投稿者の場合、70万円は投稿者のカードで決済されたが、投稿者は息子のスマホで決済可能なカード情報などを入力した覚えがないため、課金に必要な手続きは「自分でしたと思う」と嘆く。



スマホが広く普及し、小中学生でも所持していることは珍しくない。子どもがいる家庭ではどこでも起こりうる“悲劇”だが、未成年者が勝手に保護者のカード等を使って課金した場合、保護者はそのお金を取り戻すことができないのだろうか。西塚直之弁護士に解説してもらった。



●うっかりログアウトを忘れていませんか?

スマホなどでゲームをすると、強いアイテムが欲しくなり課金することがあると思います。そして一度課金すると、さらに強いアイテムが欲しくなって再び課金するようになります。



脳の発達が成熟しきっていない子どもは特に我慢することが難しく、また、オンラインゲームの課金はお金を実際に払っている感覚が乏しいため、一度課金し始めると途中で止めるのがなかなか難しくなるようです。



ゲームに課金する方法は色々ありますが、特に問題になるのが、親のクレジットカードを使って課金する場合だと思います。親の知らないところで子どもが親のクレジットカードを使ってゲームに課金をし、後日、請求書を見てびっくりするという例も少なくありません。



親御さんのなかには、クレジットカードはちゃんと管理していたのになぜ……という方も多いのですが、子どもが使っている端末にクレジットカード情報が残っていたり、ログアウトを忘れて決済手段が使える状態のままになっていたりと、子どもが課金できてしまう状況を、無意識に親が作ってしまっている場合がままあるということに注意が必要だと思います。



●原則として親はクレカ会社の請求に応じる必要があるが…

多くのクレジットカード会社は、親のクレジットカードを子どもが無断で使用した場合でも、親が責任を負うような規約になっています。親はクレジットカードの管理責任を問われるわけです。



したがって、原則としては、子どもが無断でゲーム課金をした場合、親はクレジットカード会社からの請求に応じなければなりません。



もっとも、親は子どもが無断でしたゲーム課金の責任を常に負わなければいけないかというと、必ずしもそうではなく、交渉により支払いの免除または減額をしてもらえる余地はあります。



たとえば、子どもが18歳以下であれば「未成年者による契約の取消し」を主張して、それを認めてもらうことが考えられます。



子どもが親のクレジットカードを無断で使ってゲームに課金してしまった場合、親がクレジットカードの管理責任を怠っていたという事実がどうしてもあるためうまくいくとは限りませんが、詳細な経緯を書面にして、オンラインゲーム会社とクレジットカード会社に申し出て、支払の免除または減額の交渉をしてみることをお勧めします。



●課金トラブル防止の3カ条「管理」「確認」「話し合い」

繰り返しになりますが、子どもが無断で親のクレジットカードを使った場合、親はその管理責任を問われ、利用代金の支払義務を負うのが原則です。



そのため、ゲーム課金を巡るトラブルが起きないように、事前に子どもが無断で親のクレジットカードを使わないような環境を作ることが重要になってきます。



一般社団法人日本オンラインゲーム協会などは、保護者に向けて課金トラブルを防ぐために「管理」「確認」「話し合い」をすることを説いています。



「管理」は、クレジットカードを子どもが使わないようにすることのほか、たとえば自分のスマホを子どもに使わせるときにログアウト処理をしておくなど、スマホなどの端末の管理や端末の中に保存している情報の管理も含みます。



「確認」は、身に覚えのない請求がないか、毎月カード明細をしっかりと確認することです。身に覚えのない請求がきたらすぐに対処しましょう。また、アプリを購入したりクレジットカードを使用したりするとメールで通知が来るサービスもありますので、あらかじめこれらを活用するのも有効だと思います。



「話し合い」は、子どもとの間でクレジットカードがどういうものか話し合ったり、ゲーム課金をするときのルール(たとえばプリペイド式のカードを利用する、親の目の前で購入するなど)を話し合ったりすることです。特に小中学生には、クレジットカードの利用が代金の後払いであることや、カードの名義人以外は使ってはいけないことを教えることが望ましいと言えます。



子どもが楽しく遊び、親子が課金トラブルに遭わないように、事前にゲーム課金のルールを決めていただければと思います。




【取材協力弁護士】
西塚 直之(にしづか・なおゆき)弁護士
消費者事件を含む民事事件、家事事件、刑事事件、中小企業法務まで幅広く取り扱うほか、消費者教育にも力を入れている。令和6年度大阪弁護士会消費者保護委員会副委員長。近畿大学非常勤講師。家事調停官(非常勤裁判官)の経験もある。
事務所名:西塚法律事務所
事務所URL:http://www.nszk.jp