Text by 生田綾
東京都の首長を決める都知事選が、7月7日に投開票を迎える。CINRAでは、選挙にあわせて、企画記事「都知事選を前に考えたい、芸術文化と政治の関係。アメリカの文化政策をリサーチした橋本裕介に聞く」と、「私が選挙に行く理由。折坂悠太、柚木麻子、SIRUP、曽我部恵一、コムアイ、三宅唱ら11人が寄稿《都知事選》」を掲載した。
前者は芸術文化と政治の関係について、舞台芸術の現場に身を置く橋本裕介さんにインタビューした記事で、後者は芸術文化に関わるさまざまな方々11人に、「私が選挙に行く理由」について寄稿していただいた記事だ。
ISOさん、折坂悠太さん、コムアイさん、近藤銀河さん、SIRUPさん、SYOさん、鈴木みのりさん、曽我部恵一さん、堀由貴子さん、三宅唱さん、柚木麻子さんが、大変貴重なコメントを寄せてくださった。
都知事選の掲示板 / Shutterstock
都知事選の立候補者が出揃う告示日の6月28日、唖然とした人も多かったのではないだろうか。史上最多となる56人が立候補した今回の都知事選は、幕開けから異例づくしだった。
寄付をすればオリジナルポスターを貼ることができる「掲示板ジャック」を打ち出す候補者がいたり、(私は直接見ることはなかったが)ほぼ全裸の女性が映ったポスターが貼られたり、政策について一切触れられない政見放送が放送されたり……見るに耐えないような情報が駆け巡っていた。選挙が「お祭り」のように盛り上がるのは良いことだと思うが、このような盛り上がり方を望む人は少ないのではないだろうか。むしろ選挙というものが多くの人にとって近寄り難い、遠い存在になってしまうのではないかと思い、落胆し、気が滅入ってしまった。
今回の企画でコメントを寄せていただいた方々の言葉は、そんな落胆を軽く吹き飛ばしてくれた。うんざりすることがあれど、投票に行こうとあらためて思ったし、投票することには大きな意味があるのだと、励まされる気持ちになった。
寄稿の依頼を通して、勇気づけられるような優しい言葉もたくさんいただき、参加してくださった方々、また、やりとりをさせていただいた方々に、この場を借りて感謝を伝えたい。
なぜ選挙に行くのか? という理由についてあらためて考えてみたが、私は、投票することは「意思表示」であると思う。
社会にこうあってほしい。自分が今、不安に感じていること、苦しんでいること、疑問に思っていることに、もっと目が向けられてほしい。なんとかしてほしい。
投票とは、そういった自分の意思を再確認するものであり、自分の意思を他者や政治に「託す」ものでもあると思う。そして、たくさんの人が意思表示ができる社会であった方が、息苦しくないし、生きやすくなるのではないかと思う。意思を託したいと思う人がいたらその人に投票してほしいし、もしも意思を託したいと思う人がいないのであれば、消去法で選ぶというのも一つの手だ。
それでもやはり、政治に期待できないという気持ちになってしまう人もいるかもしれないが、期日前投票をした人の数は前回(2020年)を上回るペースで増えているという。前回の投票率は55%だった。一連の企画や寄せられたコメントを通して、読者の方々に何かを感じていただけたら嬉しい。