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選挙ポスター「破られた」「剥がされた」報告相次ぐ…都知事選や都議補選 悪質な場合は刑罰も

2024年07月05日 10:21  弁護士ドットコム

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7月7日に行われる都知事選と都議補選で、候補者たちの選挙戦が熱を帯びる中、各地で候補者の選挙ポスターが剥がされたり、破られたりする事件が相次いでいる。


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今回の都知事選では、センセーショナルな文言や画像をポスターに掲示する候補者が続出し、問題視されている。そうした中、選挙ポスターを無理やり剥がす人も出ており、候補者たちはやめるよう、SNSで呼びかけている。



●「私のポスターは社会的に問題視されているが…」

選挙ポスターが批判を受けている都知事選の候補者の一人はXで、次のように投稿した。



「このようにポスターがボロボロに毀損されているという報告が相次いでいます。今回私のポスターが社会的に問題視されていますが、だからといって、このような行為を行った方は器物損壊罪で逮捕されますので、絶対に行わないようにお願い致します」



また都議補選の候補者の一人も、「大切な選挙ポスターが破られてしまった件について」として、Xで被害を報告している。この候補者は破られている選挙ポスターの写真を見た時に「ショックで言葉を失った」といい、「どうか、こういうことはやめてください」とうったえている。



●選挙妨害で多い「ポスター破り」

選挙ポスターを破る、剥がす、落書きするといった行為は、どのような罪に問われるのだろうか。



「選挙ポスターを剥がしたり、破ったりする行為は選挙の自由妨害罪に該当します(公職選挙法225条)」



元刑事というキャリアを持ち、刑事事件に詳しい澤井康生弁護士はそう指摘する。



「選挙の自由妨害罪とは特定の手段で選挙活動を妨害した場合に成立する犯罪です。例えば候補者に暴行や威力を加えたり、集会や演説を妨害したりする行為がこれに該当します。



その中で『文書図画を毀棄し』という行為もあり(225条2号)、選挙ポスターを破る行為がこれにあたります。選挙の自由妨害罪は4年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金なので、その罪は決して軽くはありません。警察が選挙妨害罪で逮捕するのはこのポスター破りが多いです。



ちなみに選挙ポスターを破る行為は刑法の器物損壊罪(刑法261条)にも該当しますが(3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する)、公職選挙法との関係では刑法は一般法、公職選挙法は特別法なので法定刑の重い公職選挙法の自由妨害罪が成立します」




【取材協力弁護士】
澤井 康生(さわい・やすお)弁護士
警察官僚出身で警視庁刑事としての経験も有する。ファイナンスMBAを取得し、企業法務、一般民事事件、家事事件、刑事事件などを手がける傍ら東京簡易裁判所の非常勤裁判官、東京税理士会のインハウスロイヤー(非常勤)も歴任、公認不正検査士試験や金融コンプライアンスオフィサー1級試験にも合格、企業不祥事が起きた場合の第三者委員会の経験も豊富、その他各新聞での有識者コメント、テレビ・ラジオ等の出演も多く幅広い分野で活躍。陸上自衛隊予備自衛官(3等陸佐、少佐相当官)の資格も有する。現在、早稲田大学法学研究科博士後期課程在学中(刑事法専攻)。朝日新聞社ウェブサイトtelling「HELP ME 弁護士センセイ」連載。楽天証券ウェブサイト「トウシル」連載。毎月ラジオNIKKEIにもゲスト出演中。新宿区西早稲田の秋法律事務所のパートナー弁護士。代表著書「捜査本部というすごい仕組み」(マイナビ新書)など。
事務所名:秋法律事務所
事務所URL:https://www.bengo4.com/tokyo/a_13104/l_127519/