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「東京を金融都市にしたかった」都知事選出馬経験の渡邉美樹氏、当時の敗因を語る

2024年07月05日 08:00  週刊女性PRIME

週刊女性PRIME

渡邉美樹氏 撮影/近藤陽介

 7月7日に投開票が行われる東京都知事選挙2024。現職・小池百合子知事の2期8年にわたる都政運営の評価が大きな争点になると目され、対抗馬として参議院議員の蓮舫氏、広島県安芸高田市の前市長・石丸伸二氏らが出馬。それに伴いなんと50人以上の候補者が。都知事選って一体……。出馬経験者の渡邉美樹さんに話を伺いました。

出馬経験者に直撃「政治家はポピュリズムに走りがち」

 2011年の都知事選に出馬した渡邉美樹さん。経営の世界から離れてまで、なぜ政治の世界を目指そうと思ったのか?

「当時、私はワタミの会長として世界中を飛び回っていたのですが、どこへ行っても投資家から日本の財政を心配された。『日本の国債をいつ売ろうか』といった話をされる。

 気になって日本の財政状況を調べてみると、このまま放置すれば危機的状況になることがわかりました。東京をモデルにして、日本を再生させたかった。会社の経営は軌道に乗っていたので、次は政治を通してお役に立ちたいと思ったんですね」(渡邉さん、以下同)

 培ってきた経営能力を都政でも生かしたい。その一心だったという。

「東京を金融都市にしたかった。当時、シンガポールと香港がアジアの金融立国として存在感を発揮していましたが、まだ東京にもチャンスがあった。

 経済特区を設け、外国企業にとって魅力的な税制をつくれば、両国に負けない。外国企業を誘致できれば、世界中の優秀な人材も東京に来るようになる。そのためのインフラを整え、お金が落ちる仕組みをつくり、その利益を都民に還元する。

 これは実際にシンガポールがやったことです。東京都を会社に見立て、都の職員が社員、都民はお客さま。お客さまの最大利益を得るために何をするべきかという視点で公約を考えました」 

 だが、結果は4選を目指した石原慎太郎知事、前宮崎県知事の東国原英夫氏に次ぐ3位。敗因を問うと──。

「本来であれば、テレビで討論会を何度もするはずでした。その中で、自分の考えを伝えられれば、都民の皆さんも共感してくれると。ですが、選挙前に東日本大震災が発生したことで、それどころではなくなりました。結局、討論会はほとんど行われることなく投票日を迎えた。この点は想定外でした」

 東京都の収入のほとんどは税金だ。渡邉さんは、「日本の資源を使って儲けるという概念がない。税金に頼らずに、東京にお金が集まるようにして、富を再分配するようにしないといけない」と力説する。都知事選後、2013年からは参議院議員を6年務めた。政治を肌で感じて、わかったことがあるという。

「今の日本に必要な政治家は、経営経験者であることが望ましい。少なくとも0円から100億円くらいにした経営者ですね。そして、もう一つがお金に困っていない人です。

 政治家がポピュリズムに走るのは、“また当選したいから”です。お金を持っていない政治家はとても多く、落選すると無職になりますから必死です。

 政治家になるためにはお金がかかるので借金します。その借金をパーティーで返していく──、こうしたビジネスモデルがゆえに、もめているわけです。お金に困っていない人であれば、ポピュリズムに走る必要はない。この2つの条件を満たした人を政治家にするべきだと強く思います」

 そのうえで、有権者である私たちも変わる必要があると説く。今年4月に行われた衆議院東京15区補欠選挙の投票率は、過去最低の26.8%。あまりに関心がなさすぎるだろう。

「参議院議員を辞めたのは、多くの人に『このままでは本当にダメになる』と気がついてほしいからです。現在、私がラジオや出版などを通じて啓発しているのはそのため。東京をどうするという小さな視点だけではなく、日本における東京の役割という大きな視点で、東京の責任者を考えなければいけない。目を覚まさなければいけないんです」

渡邉美樹(わたなべ・みき)●1959年、神奈川県生まれ。ワタミ株式会社代表取締役会長兼社長 CEO。明大商学部卒業後、佐川急便で働き資金を貯めて、居酒屋「つぼ八」のFCに加盟。伝説的なトップ売り上げを記録後、'84年にワタミを創業。居食屋「和民」を中核に多角化事業を推進し、2000年に東証一部上場。外食経営のほか参議院議員1期6年、郁文館夢学園理事長を務めるなど要職多数。

取材・文/我妻弘崇