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すとぷり所属事務所、「ハッシュタグ荒らし」法的措置を表明 弁護士「意図は分かるが…」

2024年07月04日 10:50  弁護士ドットコム

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エンタメユニット「すとぷり」などの所属事務所STPRは6月26日、所属グループらに対する誹謗中傷や迷惑行為の一類型である「荒らし行為」への対応方針として、法的措置を進めていることを公式ホームページで明らかにした。


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主にXなどSNSで、すとぷりと無関係な内容にもかかわらず、「すとぷり」を含むハッシュタグがつけられる投稿が続出するなど、昨今ネットでは話題となっていた。



同発表によると、他人を不快にさせる画像や無関係な画像等に所属グループらに関連する「ハッシュタグ」をつけ、ハッシュタグ検索の利用者に不快感を与えることを目的とした投稿が行われているのを確認したとし、荒らし行為を行っているアカウントに関して法的措置を進めるという。



具体的な対応として、「弁護士や警察当局と連携しながら、画像の削除要求、投稿者個人の特定作業を進めており、特定後は損害賠償請求や刑事告訴等の法的措置を進める所存」としている。仮に荒らし行為をした者が未成年者であっても、同様の措置を講じる予定だという。



不快感を与えようと無関係な内容で特定のハッシュタグをつけて投稿すれば、グループやそのファンにとっては迷惑だろうが、グループの所属事務所が法的措置で制約することは可能なのだろうか。インターネット問題にくわしい中澤佑一弁護士に聞いた。



●同種ケースで「法的措置は珍しいのでは」

──今回のようなケースはこれまでにもあったのでしょうか。



特定のテーマを表すハッシュタグが関係のない投稿にも利用されることで、そのテーマに関する情報が探しにくくなる、検索が汚染されるという荒らし行為はこれまでもしばしばみられたところですが、それに対して法的措置を取るというのは珍しいのではないでしょうか。



──事務所側は「法的措置を進める」としていますが、具体的にはどのような手段・方法が考えられますか。



対応方法としては、不適切にハッシュタグが利用されている投稿などについて、削除の請求や、当該投稿について発信者情報開示請求、投稿者に対する損害賠償請求が考えられます。



●「ハードルは高いが可能性はある」

──事務所の対応は「ハッシュタグ警察」の一面もあるように見受けられます。



事務所側が問題視しているのは「他人を不快にさせる画像や無関係な画像等に当社及び当社所属クリエイターに関連するハッシュタグを付すことで、ハッシュタグ検索を利用するリスナーの方々に不快感を与えることを目的とした投稿」とのことですが、このような投稿がそれ自体で名誉毀損や営業権の侵害といった違法性を有するかと言われるとなかなか難しいと思われます。



ただ、事務所側が保有している商標権との関係であれば、ハードルは高いものの商標権侵害となる可能性はありそうです。



商標としての使用にあたるかが問題になりますが、過去にはメルカリでのハッシュタグの使用について商標権侵害を肯定した大阪地裁の判決(大阪地裁令和3年9月27日)もあり、迷惑行為を繰り返している悪質なアカウントについては、商標権の侵害が認められるかもしれません。



なお、ファンコミュニティへの悪影響を是正したいという事務所側の意図は分かりますが、法的措置でネットユーザーの動向を過度にコントロールしようとすると反発も出てきます。法的措置の対象とするのは、本当に悪質なケースに限定するのが最終的には良い結果になるのではないかと個人的には思います。




【取材協力弁護士】
中澤 佑一(なかざわ・ゆういち)弁護士
発信者情報開示請求や削除請求などインターネット上で発生する権利侵害への対処を多く取り扱う。2013年に『インターネットにおける誹謗中傷法的対策マニュアル(中央経済社)』を出版。弁護士業務の傍らGoogleなどの資格証明書の取得代行を行う「海外法人登記取得代行センター Online」<https://touki.world/web-shop/>も運営。
事務所名:弁護士法人戸田総合法律事務所
事務所URL:http://todasogo.jp