管理職になりたくないという人が増えている。仕事が増え重い責任を負わされるのに、見合った給料がもらえないというのだ。
一方で、千葉県の50代前半の男性(エンジニア/機械・電気・電子・半導体・制御)の場合、少し違う。管理職になりたくない理由を次のように述べた。
「私の職種はフィールドサービスエンジニアです。技術職こそ自分の本懐と思っています。管理職では、新しい技術の習得とそれを発揮する機会を奪われてしまいます」
フィールドサービスエンジニアとは、客先へ出向き、自社製品の設置や保守運用などを行う技術者だ。男性の言葉から、エンジニアであることにやりがいや誇りを感じている様子がひしひしと伝わってくる。(文:天音琴葉)
「それは私のやりたいことか? と、問われれば答えは否です」
男性の勤務先は外資系で、本社のある海外でエンジニア向けにトレーニングが行われるという。ちなみに、これは外資系IT企業ではよくある話で、最先端の技術を学べる機会とあって、男性のようなエンジニアがもっとも楽しみにしているイベントと言っても過言ではない。ところが
「私の勤務する会社は外資ですが(管理職になれば)技術習得のための海外出張の機会がなくなります」
といい、こうしたチャンスが奪われることは何よりも耐えがたいのだろう。一方で、管理職には利点もあり、男性もそれは認めている。
「管理職になれば権力を得て内部の秘密情報にアクセスできて、数年経過すれば年収も大幅にアップするでしょう」
管理職はより大きな仕事ができるため、収入だけでなく達成感も大きい。しかしそれでも男性は、技術者でありたいようで、次のように続けた。
「ですが、それは私のやりたいことか? と、問われれば答えは否です。なお、平社員だから楽をしているか?と、問われれば、それも否です。 技術職ですから勉強は欠かせません。 そして次の世代と共闘できる立ち位置を確保する努力も必要です」
男性の年収は1000万円だという。管理職になればさらなる年収アップが叶うとしても、これくらいあれば、好きな仕事をするほうがいいという男性に共感する人が多いのではないだろうか。