BMWとメルセデスAMGの首脳陣は、2025年6月に3週末連続で24時間レースが開催される見通しに反対し、「実現不可能」かつ「サステナブルでない」と述べた。
来年のIGTCインターコンチネンタルGTチャレンジのカレンダーが発表され、スパ24時間レースの日程が判明したことで表面化したこの問題。2025年6月は14~15日にWEC世界耐久選手権のル・マン24時間レース、その翌週にニュルブルクリンク24時間レース、さらにその翌週の28~29日にスパ24時間と、3週連続で欧州の主要24時間レースが行われることになったのだ。
BMW Mモータースポーツ・ディレクターのアンドレアス・ルースは、今年のように同ブランドが3つのイベントすべてで存在感を維持することは「おそらく不可能」だと述べている。
「これは大きな懸念事項だ。なぜなら、実際には実現不可能だからだ」とルースはSportscar365に語った。
「さまざまなことが関係している。人員が必要だが、(ル・マンのテストデー含め)4週間連続でレーストラックに人員を送ることはできない。また、私の意見では、物理的にも実現不可能だ」
「たとえば、ここ(スパ)で準備を始めなければならないとき、我々はまだニュルブルクリンクでレースをしていることになる。したがって、物理的にも不可能だ」
「BMWのスタッフは、すべてのレースに参加する。チームも関与しており、我々はこれらのレースを複数回行うわけだが、これはロジスティクスと人的側面から見て、不可能だ」
SROモータースポーツ グループの創設者兼CEOであるステファン・ラテルは、来年のスケジュールについて「我々にできることは何もない」と述べているが、ルースはカレンダーに変更が行われない場合の「結論」について警告した。
「解決策が見つかることを願っている」とルース。
「これを可能にするスケジュールを見つけなければいけない。そうでなければ、この状況からどのような結論を引き出さなければならないかを見極める必要がある」
■「過酷なレース。休む時間も必要だ」
ルースのコメントは、メルセデスAMGのカスタマーレーシング責任者であるステファン・ウェンドルにも反映され、ウェンドルはこの状況を「サステナブルでない」と表現した。
メルセデスAMGは現時点ではル・マン24時間レースには参加していないものの、3週連続での主要耐久レース開催がレースに関わるスタッフに与える負担を認めている。
「さまざまな観点から、また競技者のグループにおいて、これは持続可能(サステナブル)ではないと思う」とウェンドルはSportscar365に語った。
「メディアからエンジニア、メカニックなど、そこで働くスタッフ全員にとっての問題だ」
「集中的なサポートシステムを備えたユニークなGT3ビジネスに携わっているブランドにとっては、スタッフの作業負荷と仕事のバランスを管理するのは非常に困難だ。このような取り組みを行っているブランドは、我々以外にもたくさんあるだろう」
「(彼らは)イベントに向け適切に準備し、レース後は分析作業をし、そして全員が休む時間も必要だ。とても過酷なレースなのだ」
「ピットスタンドやメカニックとして24時間レースを戦ったことがある人間なら、身体からどれだけのエネルギーが奪われ、その後どれだけ回復することが必要であるかを、分かっていると思う」
「だからこそ、モータースポーツに関わる多くの人々にとって、非常に厳しい時期になるだろう」
さらに、ウェンドルは、スケジュールの圧縮によって生じるふたつのさらなる欠点を指摘した。それは、ファンとジェントルマン(アマチュア)ドライバーの両方に悪影響を与えるという。
「同じ年にニュルブルクリンク、スパ、ル・マンの3つのイベントすべて、またはそれらのうちふたつのイベントに参加したいファンは確実にいるので、我々はその勢いを失うことになると思う」とウェンドル。
「3週間、4週間連続で休暇を取る余裕がある人、または休暇を取ることができる人はいるだろうか? それは不可能であり、(集客という観点で)3つのイベントすべてが影響を受けると思う」
「もうひとつの非常に重要なトピックは、ジェントルマンドライバーだ。これはカスタマーレースであり、カスタマーレースは顧客(≒ジェントルマンドライバー)の夢を叶えてレースに勝つために作られていることを忘れてはいけない」
「しかし通常、本来の仕事を持ちながら24時間レースを戦うドライバーにとっては、これら3つのレースは通常、準備とレースで1週間を費やすものだし、そしてその後の休息だって必要だ」
「そしてこれらのドライバーにとって、これら3つのイベントに参加するのは非常に困難だ」