「これからは意識をして、部下を褒めていきたいと思います」
といった意見が出る一方で
「褒めすぎると部下が調子に乗るので、厳しくいきたいです」
と正反対の意見が出ることがあります。どちらが必ず正しいというわけではありませんが、今の上司には部下を褒める力が欠かせません。今回は、「褒めたら調子に乗るから」といった思いを抱いてしまう原因を掘り下げ、褒めることの効用についてお伝えして参ります。(文:働きがい創造研究所社長 田岡英明)
なぜ褒められないのか
「褒めすぎると部下が調子に乗るから」といった意見の背景には、どのような上司の思いがあるのでしょうか? 心理学的に見ていくと、無意識的な2つの思いが大きいようです。
(1)褒めるより叱る方が楽
管理職である私たちが育ってきた環境の中では、褒められることより叱られることの方が多かったことでしょう。多くの日本の企業では、ミスなく納期通りに仕事を進めることが求められるあまり、出来ないところを出来るようにする教育がこれまでなされてきました。そのような環境で育ってきた管理職にとっては、褒めることより叱ることの方に馴染みが深く、実施しやすい“楽な行動”になってしまいます。
この教育方法は間違いではないのですが、昨今の長所を活かし組織にイノベーティブな成果を生み出していくマネジメントには、不向きな方法になってしまいます。
(2)管理職の自己優越性確保への思い
さらに深い理由としては、上司が自身の自己優越性を確保したいという思いがあります。自分は他人より優れている、という優越感を持つために、部下を否定するのです。
特に、上司自身の自己重要感が低い状態だと、この自己優越性への欲求が高まり、褒めるよりも叱るようになります。
部下が主体的に動くように上手に褒める
組織にイノベーティブな成果をもたらすために、管理職としては自己重要感を高めて部下を褒める行為が必要です。自己重要感を高めるためには、ところどころで立ち止まり、自身のこれまでの経験値や成長している部分を自身の役割やミッションに焦点を合わせて、振り返りましょう。
管理職の役割は、自己優越性を追求するものではなく、これまでの経験や学びを活かし、組織成果を生み出していくことにあります。その役割の中で、自身の自己重要感を高めていくのです。
そして、褒めることの効用を理解し、褒め上手になってまいりましょう。部下の強みに焦点を合わせて褒めることができれば、部下の目線は自身のできていないところに向かうネガティブ目線から、自身のできているところに向かうポジティブ面線になっていきます。
部下がポジティブな気持ちで働けるようになれば、やがては目標に向かって主体的に動くようになり、より高い成果を出していくことでしょう。
褒め上手になっていくためには、次のことを意識してみてください。
・常に部下の長所に目線を置き、褒める部分を探しておく
人の目線は、どうしても短所に向かうようです
・出来たところを具体的に褒める
抽象的に褒めると部下は何を褒められたのか理解できません
・なるべく早いタイミングで褒める
褒める言葉には鮮度があります。気づいたらすぐ褒めましょう
褒め上手な管理職は、部下にとっては一緒に働きたい憧れの上司になっていきます。心理学的には、叱ると褒めるのウェイトは、1対3がベストであると言われています。褒めることのウェイトを高め、部下のモチベーションを向上させ、高い組織成果を導き出してください。