2024年07月02日 09:40 弁護士ドットコム
天気のすぐれない季節に入ったが、突然、雨が降ってきたときに傘を持ち合わせていなかった場合、みなさんはどうしているだろうか。
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筆者はある大雨の日、どうしてもアイスクリームを食べたくなり、近所の大手スーパーまで買い物に行き、入口の傘立てにビニール傘を差した。ところが、数分後に戻ってきたら傘がなくなっていたのだ。
どこにでもあるビニール傘だから、持ち手にマスキングテープで目印を付けていた。だから、その人は間違えて持ち去ったのではなく、あえて持ち去った、つまり盗んだと思われる。
土砂降りの中、ビニール袋代をケチって、片手にアイスクリームを持ちながら帰宅する中年男性の姿は、他人から見れば異様に映ったかもしれず、思い出すと悔しくて仕方ない。
さらに腹が立つのが、そのスーパーの張り紙に「傘の盗難につき責任は持ちません」という言葉が書かれていたことだ。逆に店の責任を問いたいと思ったが、そのように考える人は意外と少なくないようだ。
弁護士ドットコムには、盗まれた被害者が「管理ミスだ」として店の責任を問いたいという相談や、弁償を求められたスーパー店長からの切実な悩みが寄せられている。
はたして法的にはどうだろうか。青柳剛史弁護士に聞いた。
――店に賠償してもらうことはできますか?
コンビニなどの店舗の店先に置いてある傘立てに傘を差している場合、まず店がそれぞれの傘を「預かった」といえるかどうかが問題となります。
「預かった」といえる場合には、店は傘の現物を来店者に返還する義務がありますから、返還されない場合には、債務不履行として賠償責任を負うことになります。
ただ、軒先に置いてある傘立てに傘を置くことは、店員に「これを預かっていてください」と明確に頼んで「いいですよ」と承諾を得るという「契約」が毎回生じているとは考えがたいでしょう。
また、客の来集を目的とする「場屋営業」の場合には、携行品の賠償義務が商法で定められていますが、客は「コンビニに来る」こと自体が目的なのではなく、「物を買いに来る」ことが目的です。
そのため、商法上の場屋営業とはいえず、店舗に対して賠償を求めることは難しいでしょう。
この点から考えると、店に損害賠償を求めるのは、厳しいと考えざるを得ません。
――傘を持ち去った人についてはどうでしょうか?
ビニール傘の持ち去りとはいえ、刑法上の窃盗に該当しますので、決して軽い罪ではありません。あとで返すつもりだったとしても、立派な犯罪になります。
【取材協力弁護士】
青柳 剛史(あおやぎ・たけし)弁護士
2010年慶應義塾大法学部卒、2015年弁護士登録(第一東京弁護士会)。都内法律事務所を経て、2020年に独立(三鷹市)。「地域の方のお力になれるよう、フットワークの軽い弁護士であることを心がけています」
事務所名:電車庫通り法律事務所
事務所URL:https://denshakodori.tokyo/