サービス業にクレーム対応は付きものだが、勝手過ぎる客はクレーマーとしか思えない。東京都の40代後半の男性(サービス・販売・外食)は以前、都内のコンビニで「雇われ店長」をしていた。
店では、袋に入った「1本売り」と「3本入り」のバナナが売られていた。この袋入りのバナナがトラブルを引き起こすとは、思いもしなかっただろう。(文:長田コウ)
「ある日バイトから呼ばれてレジへ行くと、70代くらいの男性がむき出しのバナナを1本持ってレジにいました」
「1本しかいらないから3本はいらないの一点張り」
1本売りのバナナでも、通常であれば袋に入っているはずだ。異常な状況に驚いた男性が確認したところ、こんな事実が発覚した。
「その日1本売りのバナナが売り切れており、その男性は3本入りの袋を開けて1本むしり取ってレジへ持ってきておりました」
高齢の男性客が持ってきたむき出しのバナナには、当然バーコードがなかった。途方に暮れたバイトが助けを求めるため、店長である男性を呼んだようだ。男性は、客にこんな趣旨の話をしたという。
「これは3本入りのバナナなので1本では販売できない。残りの2本も(売り物にならず)販売できないから3本入りの袋ごと購入してもらわないと困る」
しかし、客も引き下がらなかった。「1本しかいらないから3本はいらない」の一点張りで、挙句の果てには、
「1本売りが売り切れているのが悪い」
と悪態をついてきたという。男性も男性で、「商品を開封してあるので、困る」と引き下がらず、押し問答になってしまった、と多少の後悔を述べている。
一向に埒が明かない状況の中、しばらくすると客は、「じゃもういらない」と帰るそぶりを見せた。これに、「開封、破損された商品を弁償するよう」求めた男性だが、客は聞く耳をもたず、無視して帰ってしまったという。
「結局、むしりとられ、1本と2本になった3本入のバナナをそのまま販売する訳にもいかないので、廃棄処分にしました」
「廃棄処分にするなら、1本分でも売上にした方が良かったのかとも思いますが、その時は開封してバラバラにした商品をどうにか買い取ってもらおうという一心でした」
身勝手な客のせいで商品が一つ無駄になってしまったが、自分にも腹が立っているようだ。
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