2024年06月12日 09:50 弁護士ドットコム
「出産なんて誰でもやれる」。夫からそんな言葉をかけられた女性から、弁護士ドットコムに相談が寄せられています。
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夫と2人の乳幼児と暮らしているという女性。1人目を妊娠した時には「出産なんてみんなしてるんだから平気平気」と言われ、出産後に子どもが夜泣きすると「うるさい」といって、家を何回も追い出されたそうです。
女性によると、「2人目の妊娠中からモラハラがひどくなりました」とのこと。家事は2人で分担しようと決めたはずなのに、夫は義母にLINEで「家事を全部やらされている」と嘘をつき、義母は「最低な嫁」と非難していたそうです。たまたま覗き見てしまったそうですが、女性はショックを受け、落ち込んだといいます。
また、夫は家事をしなくなり、女性の負担が増えて、居眠り運転まで起こしてしまいました。女性は我慢の限界で、夫に別居したいと言ったところ、再び夫は義母にLINEで「嫁が家事をさぼってる」「昼寝してる」「夫を蔑ろにする」と「告げ口」したそうです。
夫と義母はさらに、女性の実家や友人にも嘘をばらまき、いかに最低な人間かを吹聴しているそうで、女性はすっかり疲れてしまい、離婚を考えているとのことでした。
夫と義母の「モラハラ」を理由に、女性は離婚できるでしょうか。離婚問題に詳しい林奈緒子弁護士に聞きました。
——女性が夫から受けている仕打ちは、モラハラとして認定されますか。また、それを理由に離婚はできますか。
モラハラを理由とした離婚は可能です。モラハラは「婚姻を継続しがたい重大な事由」(民法第770条第1項5号)として離婚原因の一つとなります。
また、自宅から追い出す、家事や育児を全くせず妻に押し付けるというのもモラハラの一種と言えますが、これについては悪意の遺棄に当たるともいえ(民法第770条第1項2号)、やはり法定離婚事由となります。
また、義母や周囲に嘘を言いふらし、妻の名誉を棄損するという行為は民事上の不法行為であり(民法709条、民法710条)、また刑法上は名誉毀損罪(刑法230条1項)を構成するといえる場合があります。このような夫の行為についても、「婚姻を継続しがたい重大な事由」(民法第770条第1項5号)に当たるといえ、法定離婚事由となります。 これらの事情からは法定離婚事由があるといえ、夫が離婚を拒んだとしても離婚をすることができます。本件のようなケースでは、上述のような複合的な理由から離婚を求めていくことで離婚をより確実に成立させることができるでしょう。
——事実ではない「嫁の悪口」を周囲の人間に言いふらした夫と義母に対し、女性は法的措置をとることはできるのでしょうか。
先ほど述べた通り、妻の悪口を夫が周囲の人間に言いふらすことは名誉毀損に当たり、民事・刑事の両面で責任を追及することが可能な場合があります。
私の対応したケースでも、配偶者とその親が言いふらした内容や方法が悪質であり、依頼者が周囲の人間から白い目で見られ、精神的に追い詰められたうえ、社会生活にも深刻な影響が出たという事案がありました。
単に民事上の賠償責任を追及するだけではとても見逃すことができないケースであり、依頼者の意向を踏まえ、警察に強く働きかけを行い、結果、刑事告訴をして刑事責任を追及し、配偶者とその親が刑事処分を受けたこともありました。
また、このような行為も「婚姻を継続しがたい重大な事由」(民法第770条1項5号)として離婚原因の一つとなります。「家族のなかのことだから…」と泣き寝入りをする必要はありませんので、毅然とした対応をしていきましょう。
【取材協力弁護士】
林 奈緒子(はやし・なおこ)弁護士
早稲田大学政治経済学部・政治学科卒業。通信会社、損害保険会社勤務を経て早稲田大学法科大学院を卒業し、弁護士登録。大手弁護士法人、法律事務所勤務等を経て、2018年、東京都港区赤坂にて開業。多数の離婚・国際離婚、相続、不動産、交通事故事件を取り扱っている。趣味はキャンプ、スキー(始めたばかり)。2児の母。離婚・男女問題の相談実績1000件以上。初回の相談から解決に至るまで、親身に寄り添い、私が一貫してサポートしています。離婚特設ページ( https://www.hayashinaoko-lawoffice.com/lp-divorce/ )
事務所名:林奈緒子法律事務所
事務所URL:https://www.hayashinaoko-lawoffice.com/