2024年06月12日 09:40 弁護士ドットコム
配偶者に不倫された、いわゆる「サレ妻」「サレ夫」がSNS上で不倫相手の情報を「さらす」行為が目立つようになった。
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さらし行為の経験について弁護士ドットコムが一般会員にアンケートをしたところ、夫に不倫をされた妻、妻のある男性と不倫をした女性の双方から「さらし行為をしたことがある」という情報が寄せられた。
なぜ、そんな事態になったのか。弁護士ドットコムニュースの取材に応じた30代女性は、不倫がバレたことがきっかけに、不倫相手の妻に対して嫌がらせをしたいと考え、ネット掲示板に妻の職場トラブルを書き込んだという。
「とんでもないことをしていたし、刺されてもおかしくなかった」と反省するが、不倫のただなかにあっては、冷静になれずに「訴えられるなら訴えてこい」という心持ちになっていたと振り返る。
弁護士ドットコムのアンケートでは、回答した717人のうち、5.2%(37人)が「さらし行為をした経験がある」と答えた。「被害にあったことがある」と回答したのは19.1%(137人)だった。
さらし行為の加害者37人の動機は、「報復心(怒りや復讐心)」(44.6%)と「社会的制裁(正義感含む)」(32.1%)と「嫌がらせ」(8.9%)が8割を占めた。
不倫をされた、不倫をした当事者の女性がそれぞれアンケートに回答している。
配偶者に不倫をされた女性、いわゆる「サレ妻」の30代女性Aさんも「報復心(怒りや復讐心)」から、さらし行為に及んだと回答した。
〈元夫の不倫相手で同じ会社(販売店)での社内不倫だったため、不倫相手が働いてる店舗のFacebookアカウントに不倫相手の本名、年齢、顔写真をコメントした〉(Aさんの回答 ※一部編集済み)
一方で、配偶者のある男性と不倫をした女性も、男性の妻を対象にさらし行為をしたという。関東在住の佐賀すみれさん(仮名・30代後半)が今回、弁護士ドットコムニュースのインタビューに応じた。
佐賀さんは、職場の上司にあたる男性と数年前に不倫の関係に至った。相手に妻子がいることは知っていたという。
関係が始まって2~3年ほどして、佐賀さんのインスタグラムに、男性の妻から『うちの主人と不倫していますよね。主人が迷惑かけてごめんなさい。私たちは別れません』という内容のDMが届いた。投稿写真に男性の持ち物が写り込んでいたことから発覚したとみられる。
「奥さんは決して怒っている感じではありませんでしたが、不倫は事実だったので、認めないといけないと思って謝り、アカウントを消しました。ただ、別れてくださいとは言われていなかったので、別れませんでした」
妻にバレたことで、佐賀さんの行動は理不尽さに拍車がかかっていった。
「人に言えない関係ですし、友人に話したところで『離婚しない男と30代前半で付き合うのはバカだ』と怒られるのはわかってました」
佐賀さんは不倫関係の悩みについてネットに救いを求めた。不倫がバレた際にも、ネット検索で情報を集めた。
「『不倫バレた どうなる』と検索すると、サジェストに『不倫 奥さんと別れさせる方法』なんかも出てくるわけですよ。心の奥底では悪いことをしている意識はあるけど、自分に有利な情報ばかり探してしまうんです。
本当かどうかはわかりませんが、『不倫がバレても、離婚さえしなければ、慰謝料は数十万で済む』と書かれたネット記事を見つけて、すごく安心したんですよ。不倫している女性に共感を得られる記事を読んだり、自分を正当化するためにネットを使ったりしていました」
安心した気持ちになったところで、妻の「別れない」という言葉を思い起こして頭に血が上った佐賀さんは、ネット掲示板「爆サイ」に、妻の勤務先の店の悪評や過去のトラブルを書き込んでいた。
「店名は一部伏せ字で、奥さんのイニシャルも書き込んだので、見る人が見ればわかる内容です」
相手からは何の反応もなく、そのうちスレッドが削除されて、書き込みは閲覧できなくなった。
コロナの流行により会う時間が減ったことから、不倫関係は自然と解消され、佐賀さんは最近、別の男性と結婚した。
落ち着いて考えてみると、訴えられてもおかしくないことをしていたと肝を冷やすという。
「私たちのLINEも奥さんに見られていたようです。出張先でホテルの互いの部屋を行き来したり、裸で抱き合っているようなことがわかるやりとりもLINEしていたので、自宅に乗り込まれて刺されたり、訴えられたりしなくてよかったと思います。
ただ、不倫当時は、絶対に訴えて来ないだろうという変な過信があって、バレても数十万でさえ慰謝料請求されても払えないしと開き直っていました」
不倫相手から妻の問題行為について聞いていたこともあり、「奥さんだって悪い人という気持ちもありました」と自分に都合の良い考え方をしていた。
「サレ妻のさらしや、不倫女性のさらしが前からSNSを賑わせることがあります。リアルの関係性の相手に言えない悩みを抱えていると、ネットやSNSにしか向き合える場所がなくなるので危険です。男女トラブルとネットの親和性が強い原因だと思うし、さらし行為をする人って、他の人に言えない悩みを抱え続けてしまった人だと思います」
もしDMで「別れろ」と言われていたら、別れていたという。
数多くの離婚相談や男女トラブルの相談に応じてきた原口未緒弁護士は、「さらし行為」は刑事・民事で責任を問われる可能性が高いと指摘する。
「不特定多数の人が閲覧できるインターネットの掲示板やXなどのSNSに、配偶者の不倫相手の情報や不倫相手の配偶者の情報を書き込むと、場合によっては名誉毀損罪を問われる可能性があります。民事でも、名誉毀損行為による損害賠償請求のほか、実名や顔写真をさらしている場合はプライバシー侵害や肖像権侵害による賠償請求も考えられます」
いわゆるサレ妻から「相手を社会的に抹殺したい」という相談もよく受けるが、その場合は相手に正々堂々と慰謝料を請求するなど、法的に許される行為を最大限におこなうことを助言している。
「ネットに書き込む。会社に乗り込む。そういった動きをしようとされる場合は、法的な問題になりうるからやめるように弁護士として伝えています」
※インターネットやSNS上での「さらし行為」による被害が、あとを絶ちません。その実態について、弁護士ドットコムの一般会員を対象にアンケートを実施しました。(実施期間:5月22日~5月28日、有効回答数717人)
【アンケート結果はこちら】 SNSの"さらし行為"、約2割が「被害経験あり」 事件関係者と疑われ「勤め先・実名・写真晒された」人も〈アンケート結果〉
【取材協力弁護士】
原口 未緒(はらぐち・みお)弁護士
東京弁護士会所属。心理カウンセリング・アカシックリーディングも併用しながら、こじらせない円満離婚の実現を目指します。著書『こじらせない離婚―「この結婚もうムリと思ったら読む本」(ダイヤモンド社)
事務所名:弁護士法人C-ens法律事務所
事務所URL:https://c-ens.jp/