2024年06月11日 09:40 弁護士ドットコム
度々、義母から「モラハラ」を受けていたという女性。頼りにしていた夫は、女性が妊娠中に浮気していたとのことで、女性は義母や夫に慰謝料を請求したいと考えていると、弁護士ドットコムに相談が寄せられました。
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女性によると、義母は「本当に息子の子どもなのか」「(夫婦が)新しく家を建てたら、私たちの老後はどうなるのか」など言ってきたほか、女性の親族にも電話して同じような不満を述べていたとのことです。
女性は度重なる義母からの「モラハラ」に耐えかね、夫を頼ろうとしましたが、夫は関わろうとはせず、女性の妊娠中に浮気をする始末。その後、夫も義母も子どもの誕生日を忘れて、義実家の近所であった葬式に参列したため、女性が電話をかけて怒ったところ、夫が帰ってこなくなったそうです。
「モラハラ義母」や「浮気夫」から慰謝料をもらうことはできるのでしょうか。柳原桑子弁護士に聞きました。
——義母による行為は、女性に対する「モラハラ」になるのでしょうか。
「モラハラ」とは、モラルハラスメントの略で、言葉や態度による精神的暴力のことを言います。人間関係性を利用するなどして、相手を支配しようと、嫌がらせや心を傷つける言動をすることがこれに当たります。
本件の義母の行為ですが、「本当に息子の子どもなのか」「(夫婦が)新しく家を建てたら、わたし達の老後はどうなるのか」などの発言それ自体だけでは、モラハラか否かを直ちに判断することはできません。
態様は多岐にわたりますのと、嫌な気持ちにさせられたもの全てがモラハラに当たるというものではないので、状況を踏まえたケース判断になります。
——では、義母に対して慰謝料を請求することは難しいのでしょうか。
精神的暴力も不法行為を構成しますので、仮に「モラハラ」として立証できるようであれば、慰謝料請求できる可能性があります。
義母のこういった発言が離婚理由になるかという点ですが、協議や調停など話し合いでもって離婚を合意する場合には、合意が成立すれば離婚となるので、理由を問いません。
しかし、裁判離婚においては、民法で規定されている裁判上の離婚理由に該当する必要があり、これらは夫婦間の問題に限られています。そのため、義母の言動が主な離婚理由という場合、「婚姻を継続しがたい重大な事由」(民法770条1項5号)に該当するかについて、問題となるのはそれまでの夫の姿勢であると思います。
——夫とは離婚できるのでしょうか。
夫が、妻からの相談を受けて、義母を度々注意してきたとか、妻に寄り添った対応をしていたならば、夫婦関係は破綻していないと判断される可能性があります。
本件では、義母の度重なる言動に耐えかねて、夫に伝えたのに、関わろうとしない、ましてや浮気をし、その後も子どもの誕生日を忘れて、指摘されるや帰ってこなくなるといった姿勢は、夫が妻の気持ちに理解を示すことなく、向き合うどころか好き勝手な振る舞いをしているものであり、「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当する可能性があります。
その場合でも、離婚訴訟において、義母のモラハラが離婚原因だとして、これを主な理由として夫に対する慰謝料請求が認められる可能性は低いと思われます。夫も一緒になってモラハラを行っていたなどが認定されれば、夫に対し慰謝料請求が認められる可能性はあります。
—— 妊娠中の夫に不貞行為があった場合、数年後の離婚時に慰謝料請求することは可能でしょうか。
不貞行為は、不法行為に当たります。したがって、配偶者が不貞行為をした場合、慰謝料請求をすることができます。
不法行為の慰謝料請求の消滅時効期間は、不貞を知ったときから3年ですが、不貞により離婚をすることになったことに対する慰謝料は、離婚が成立することで初めて評価できるものとして、離婚時から3年と考えられています。よって、不貞発覚から数年後に離婚することになった場合、それが不貞発覚から3年経っていたとしても、慰謝料を請求することができます。
【取材協力弁護士】
柳原 桑子(やなぎはら・くわこ)弁護士
1998年弁護士登録 第二東京弁護士会所属
離婚事件・遺産相続事件などの家事事件、破産事件、不動産関係事件等を中心に、民事事件を扱っている。「離婚手続きがよくわかる本」、「よくわかる離婚相談」、「相続・贈与・遺言」、「離婚の準備・手続・ライフプラン」監修(いずれも池田書店)。
事務所名:柳原法律事務所
事務所URL:http://www.yanagihara-law.com/