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「これAIなの?」「かわいい」しまむら、生成AIモデル・瑠菜に反響 スキャンダルがないメリットも?

2024年06月08日 09:20  リアルサウンド

リアルサウンド

「ファッションセンターしまむら」のAIモデル「瑠菜(るな)」

■生成AIを使ったモデルの活用は進むのか


  筆者もよく利用する日本屈指のファッションチェーン、「ファッションセンターしまむら」は、タキヒヨー株式会社とAI model株式会社との共同で、AIモデル「瑠菜(るな)」を使ったプロモーションプロジェクトを開始したと発表した。AIモデルは生成AIの技術で生成したファッションモデルのことである。


(参考:【写真】AIモデル・瑠菜(るな)の全身やポーズを決めたカットなど


6月5日付の流通ニュースの報道によると、AIモデルは人間のモデルとは異なり、スケジュール調整や撮影に時間がかからない点がメリットとして挙げられている。AIモデルを扱うAI model株式会社のホームページを見ると、モデル撮影のコストを最大70%削減できるとあり、メリットが強調されている。


  ネット上では賛否両論様々な意見が飛び交っている。2023年、集英社が生成AIを使って創り出したグラビアアイドル「さつきあい」の写真集『生まれたて。』を発売した際は、ネットで大炎上し、発売中止に追い込まれたのは記憶に新しい。


  しかし、ある広告代理店の関係者は、現在の日本社会に漂う雰囲気から推察すると、「生成AIを使ったモデルの需要はあるし、一定のレベルで広まるのではないか」「同様のサービスを行う企業は増えそうだ」とみている。


 「実在のアイドルや芸能人と比べて、生成AIを使ったモデルの最大のメリットはスキャンダルがない点。最近はとにかく瑣末なことでも芸能人のスキャンダルが報じられると、長年準備してきた企画が一瞬でパーになる。企業は謝罪に追われ、損失も大きい。そのリスクを回避できる点が最大のメリットで、魅惑的に映ると思いますよ」


■企業側にメリットの大きい生成AI


  最近では、スキャンダルとは無縁と言われたVTuberまでもが謝罪に追い込まれる例が目立つ。いわゆる「文春砲」だけでなく、XなどSNS上での失言など、広告依頼主の不安は多いのだという。ところが、生成AIを使えば、実在しない、完全にヴァーチャルな存在のモデルを生み出すことができてしまうのだ。もちろん、企業が危惧する問題は起こり得ない。


 「生成AIを使ったモデルは企業側にとって都合が良いことしかない。撮影代のコストカットにもつながるし、利便性が高いから、使わないわけがないでしょう。SNSの発達によって、従来とは比較にならないほど広告が炎上しやすくなっている。モンスタークレーマーやカスハラなどの対策のために、活用する企業は増えるのではないか」


  こうした話を聞くと複雑な気持ちになる。今まで以上にモデルは徹底した自己管理が求められるようになりそうだし、モデルを支えるマネージャーの仕事が一層重要になってくることは間違いない。


  消費者側のモラルも求められるのではないか。企業に過度なクレームを入れすぎるのも問題だ。芸能人のスキャンダルが露呈したり、SNSで過去の発言が掘り起こされたりすると、企業側に「なぜこの人物を使い続けるんだ」と“電凸”する例も多いと聞く。犯罪であれば論外だが、一方で、なぜこの程度でモデルや企業が責められなければいけないのか、という事例も少なくない。


  クレームに企業側も委縮している。X上の1件のポストが企業の業績を左右する、そんな事態も起こっているためだ。もう少し社会が、モデルや企業に対し寛容になってもいいと思うのだが、難しいのだろうか。


(文=山内貴範)